こっち見てよ旦那様

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「じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃぁい」

「行ってらっしゃい」

玄関の外までお見送りしてくれた潤也さんと湧に手を振り、迎えの車に乗り込む。
バスかタクシーで行こうかな、と思っていたら行きは自宅ワークで行けないからと自分の運転手を用意してくれた。

「仕事外なのにすみません」

車に乗りこみ、顔見知りの運転手に声をかけると穏やかな初老の運転手は「いえいえ、おまかせください」と返してくれた。

「わがままなんですけれど、正面じゃなくて脇に降ろしてくれると嬉しいです」

「承知しました」

会場はホテル。
学校が学校だったので、アルファや自分含めどこかしらのお坊ちゃんが多かったからか、会場は華やかだ。

仲の良かったり、大学が同じだったりと今でも連絡をとっているのは極小数だが、久しぶりにクラス写真を見返すと鮮明に思い出せる。

みんな結婚してたりするのか、子供もいたりするのか、はたまた独身を謳歌して楽しく生きているのか。

ドレスコードがスーツやフォーマルな服装だったので、スーツにした。
髪型も片方だけ耳にかけてかっこよく。
シンプルなヒールブーツで少し背も盛った。

招待状を見返していると着いたようで、ホテルの少し手前の道に降ろしてもらった。





「三ツ橋透です」

「はーい…え、とおる…?」

「そう。久しぶりだね…えー、あ、後藤でしょ」

「そうそう、よく分かったな」

ほい、首かけ式の名札を渡される。
後藤は確か医者になったんだっけ、とかつての同級生の若かりし頃を思い出す。

「あ、五十嵐!…と、今は三ツ橋様だったか?」

よ!と背中を叩いたきたのは天宮。
天宮は昔からクラスのムードメーカーだった。

「様なんて、そんな大層なもんじゃないよ」

思わず笑いながら小突き返すと「悪ぃ悪ぃ!」とあの頃のままの笑顔が振りまかれる。
天宮につられて他の子らも集まり始めた。

アルファの人らは自分と同じように指輪をつけている子がほとんどで、互いに気を使って一定の距離を開けつつ久しぶりの再会を楽しんだ。
とは言っても、自分と同じクラスの人はベータがほとんどなのであまり気にせず話すことができた。

「天宮は息子?君いるんだっけ」

「そうそう!娘もいるぜ。これがまぁた可愛いんだな」

「やっぱり娘可愛い?」

「息子ももちろん可愛いんだけどさ、娘はもう…知らん男に取られるって思うともう…今からでも泣けてくる」

「写真とかないの?」

「腐るほどある」

ほらほら、と携帯の「娘3」というフォルダを見せてくれる。
凄く撮ってるんだな、と思うがそれはこっちも負けてない。

「かわいいね」

「だろ??…あ、お前も子供いたよな。見せろよ~」

「いいよ。うちの子も可愛いんだから」

湧の写真がまとめられているフォルダをドヤ顔で見せてやる。

「うわ、かわいいな。…どうする?俺らの子供同士結婚したら」

「知り合ってもないのに。…やだな、湧が天宮に『お前が俺の娘の彼氏か??』って詰められんの」

2人で笑い合いながら互いの家族の話をしていると、他の子も自分の家族の自慢をしに混じってくる。

みんな大切な家族やパートナーがいるんだな、となんだか感慨深くなりながらも学生に戻った気分で楽しんでいるとあっという間に時間になってしまった。
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