こっち見てよ旦那様

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「透は二次会行くか?」

「ううん。僕はいいや、旦那が迎えに来てるだろうし」

「え、見たい見たい。あの噂の社長だろ」

「あんま近寄ってると社会的に消されちゃうかもよ、天宮」

後ろからクラスメイトの1人が野次を飛ばす。
そうやってガヤガヤしながら会場を出ると他の人の迎えもいくつか来ていた。
潤也さんは、とキョロキョロしていると名前を呼びれる。


「透、こっちだ」

ぉう、と思わず口を結ぶ。
潤也さん、すごく張り切ってる…。

ビシッと決めた格好に、髪はオールバック。
完璧に外面モード。

「皆さん、透がお世話になりました。彼も楽しみにしていたようなので…では、失礼致します」

手を取り、彼に引き寄せられそんなことをにこやかに同級生たちに話す彼。
みんなポカンとしている。

「潤也さん、みんな驚いてるから」

「す、すまない」

少しだけいつもの彼に戻る。

「じゃあ、今日はありがとう。また会お」

「お、おう。またな」

みんなに挨拶をして彼が乗ってきた自家用車に乗り込む。

「ちょっとやりすぎたか…?」

しゅん、とこちらの機嫌を伺うように尋ねてくる彼の頭を撫でる。

「はい」

「ぅ…すまん」

「でもかっこよかったですよ。仕事以外で久しぶりにあの潤也さんが見れて惚れ直しました」

「そうか…!それならよかった。…でも帰ったら匂い付け直す」

「そんな匂いますか?…アルファの子は全員番持ちでしたけど」

「いや、色んな匂いがするからな」

「ですかね。じゃ、帰ったら思う存分」

「湧は?」と尋ねるともう寝てるらしい。一応、咲夜君もついているというので安心だ。

「咲夜君にお礼の何か買って帰りましょうか」

このお土産でもいいけど、と同窓会の参加記念品であるカタログギフトを見る。
けれど現役高校生が欲しがるようなものはあるか疑問である。

「じゃあ空いてるケーキ屋かカフェ寄って何か買ってくか」

「はい」

「ドライブデートだ」

るんるんでエンジンをかける彼をかわいいな、と思いつつ頷いた。
でも僕は思った。こんな時間まで空いてるケーキ屋はあるのだろうかと。






「義兄さんが?」

「はい。…訳ありの子を拾ったみたいで、その子はオメガらしいんですけど、家政夫として住まわせているらしいです」

「なかなか思い切ったことをするな」

「僕もびっくりで」

極力、アルファがオメガに与える恐怖感を与えないように気をつけているらしいが、いずれはその子も発情期を迎える。
兄さんの行動はいいと思うしその子も助かっていると思う。
けれどその時どうするのか、分からない。

「…湧のことも、咲夜のことも考えないとだな」

「ですね。大事なものが増えましたから」

「俺たちが別荘の方に行けばいいと思っていたが…どうするか」

「また兄さんと咲夜君とも話してみます」

いっその事、兄さんと家政夫君ごとうちにこればいいのでは、と思ったが、兄さんはともかく、家政夫君はあまり他人の家で過ごしたくはないだろうし。
咲夜君も他人が入ってくるのは嫌だろう。

湧もその家政夫君とは初対面だし。

今回はお義母さんたちに頼むか…自分が薬を飲むか。それが1番平和だろう。


久しぶりに彼と発情期を過ごせると思ったが仕方ない。




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