先輩、クリスマス空いてます?〜可愛い後輩に聞かれてこれはフラグかと答えたら〜

金魚屋萌萌@素人作家お嬢様

文字の大きさ
3 / 9
センパイ、クリぼっちなんすか?

3話 くそデカケーキが余った件

しおりを挟む

 クリスマス。バイト後。

「いや~でかいなぁ……このサイズのケーキが余るなんて……」ほくほく顔で琴音はケーキの箱を腕に抱えていた。首にはマフラーを巻いていて、それがよく似合っている。

 唯一売れ残ったのは販売している中で最大のサイズで、ファミリー用と書いてある。

「よかったね。途中、売り切れそうで半べそになってたもんね」

「それは言わない約束っス。あとセンパイの分のケーキなくてすみません」

「それはいいよ。僕はもし余ればって感じだったから。それに……その量は一人で食べ切れる自信ないし」

「めっちゃわかるっス。これしかなかったからもらったっスけど……流石の私でも食べ切れるか………」ぐぬぬ、とケーキの箱とにらめっこしている。

「2日にわければいいんじゃない? でも日持ちしないか……だから貰えるんだし」

「フルーツ使ってるんで厳しいッスね……あ! いい案思いついたッス!」自信満々のドヤ顔で琴音は僕を見る。あ、これはめんどくさいこと思いついた表情だ。

「センパイ、ケーキ好きッスよね。それにクリぼっちっすよね?」

「だからクリぼっちいうな! まあ、余ればほしい程度だけど」

「じゃ、これ一緒に食べません?」

「えっ」急な提案に戸惑う。

「ほらこれ持ってくださいっス! 落とさないでくださいね」そう言って琴音はケーキの箱を腕に押し付けてくる。

「いやまだ食べるとは何も」

「いーからいーから。後輩を助けると思って」そう言って僕の背中をぐいぐいと押してくる。

「転ぶって! わかったわかった、一緒に食べるから!! 押すなって!」

「分かればいいんスよ。いやー後輩のためにひと肌脱いでくれるセンパイかっこいいなー。ほれちゃうなー」あからさまな棒読みで彼女は言う。ムカつく。

 しばらく琴音に連れられて歩く。

「……ところでこれどこで食べるの?」

「そりゃもう決まってるじゃないッスか。私の家っス」彼女はなんとなしにいう。

「えっ」それを聞いて足が止まる。

「どしたんすか?」

「女の子の家に行くってあんまり……それにクリスマスだし」

「……女の子として見てくれてたんスね。ちょっと嬉しいっす。まあまあ、ケーキを一緒に突っつくだけの関係ですから」

「たしかに? いやでもな……」

「あ、センパイもしかして私の部屋まで来るつもりっスか? いやらし~」にやつきながら彼女はからかってくる。

「ち、違う! そういうつもりでいったんじゃ」

「ま、居間までならいいじゃないっすか。今日は誰もいませんし」

「それならなおさら…」

「気にしなくていいですって。あ、あっちの公園にめっちゃきれいなイルミあるんで寄ってきましょ」琴音はグイグイと僕の腕を引っ張る。

「わかった! わかったから引っ張るな! ケーキが落ちる!!」

 ……本人がいいと言ってるし、まあいいか。ちょっと緊張するけど。

「ほら、めっちゃきれいっしょ」公園の広場についた琴音はドヤる。

「……おお」僕は思わず感動してしまった。

 その公園にはこの街の象徴と呼べる巨木があった江戸時代からあるとか聞いた気がする。
 高さも相当なもので、自分の学校からでも先端が見える。
 その木全体にイルミネーションが飾ってあった。クリスマスツリーと同じ見た目になるように緑色のイルミネーションで彩られている。頂点には金色の星が飾られている。

「いいっスよね~! 昨日見つけたんすよ」彼女はそう言いながらスマホでぱしゃぱしゃと写真を取りまくっている。楽しそうだ。

 そんな彼女を横目に僕もその輝きを堪能する。

 ふと、気づく。木の周りにはたくさんの人がいるのが分かる。そして見渡す限り……身を寄せ合っている男女の二人組だ。

「……はぁ」つい、ため息をついてしまう。
 
「あれ? どしたんすか? 私のイルミ楽しめなかったスか?」

「君のじゃないでしょ……。いや、イルミはとてもきれいだよ。でもカップルがたくさんいるからさ……はぁ」

「クリスマスですし、ここ街一番のデートスポットらしいッスからね。辛いっス?」

「うん……」そう答えて、クリスマスまでに告白できなかった自分を呪う。

「しょうがないっすねぇ……じゃあ手でもつなぐっス?」

「は?」突飛な提案に僕はまた混乱する。

「色々わがままきいてもらってるし、ちょっとだけ恋人の代わりしてあげるっスよ。ほら」彼女は僕の方に手を差し出す。

「なんスか? 私じゃ不満スか?」彼女は少し頬を膨らませる。その表情が可愛くて少しどきっとしかける。

「そ、そうは言ってないけれど。それにケーキで手が塞がってるから」僕は目をそらしながら言う。

「たしかに? なら腕組みッスね」伸ばした腕をそのまま僕の右手に絡ませる。

「ほらこれで周りと同じ恋人っぽくなったじゃないッスか」軽く頭を寄りかからせてくる。

「……うん」何言っても無駄な気がしたので諦める。
男子の性か、どきりとしてしまう。

「いやーキレイっすね~」

「……そうだね」

(ほらここで『君のほうがキレイだね』っスよ)小声で彼女は耳打ちしてくる。

「……キミノホウガキレイダネ」言われるままに僕は台詞を口にする。棒読みで。

「えへへ……好き……」と甘えたような声で言う。そんな声出せるのか、とちょっと驚く。

 すっ、と琴音は絡めていた腕を解いた。

「自分でやってて恥ずかしくなったっス……」マフラーで口元を覆い、照れを隠そうとしている。そんな可愛い反応されるとやられたこっちまで恥ずかしくなってくる。

 お互いそっぽを向き、沈黙が流れる。

「……ケーキ食べに行くか」沈黙を破り、僕は言う。それに、ちょっと腕が疲れてきた。

「そっすね……」琴音は歩きだす。僕もそれに着いていく。

 ……あれ、なぜ僕は琴音の家に行くことを自ら言っているのだろう?さっきまで躊躇していたのに……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...