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番外編
ある日の妖精さんの朝活
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とあるマンションの一室、ベランダに続く窓辺に、大きく育ったアカシヤシとゴムの樹の間、若草色のカバーを掛けたクッションの上で、茶と赤と緑色の服を着た妖精さん達が、固まって寝ている。
「ふわぁ~」
日の出にはまだ早く、暗い部屋の中、パチッと目を開けた緑の妖精さんが上半身を起こし大きく伸びをする。すると、茶の妖精さんも、赤の妖精さん起き出して、同じように伸びをする。驚くほど、寝起きが良いようだ。
「お腹空きました」
赤の妖精さんが、ポツリと呟くと、他の二人も頷いて、クッションからおりて、トテトテとキッチンに向かう。
昨日、寝る前に光輝という人間が『ここに入っている物から食べてね』と素焼きの入れ物を自分達用にと、用意してくれた棚の上に置いていってくれたので、その蓋を開けてみる。
「うわぁー、クッキーですぅ」
「たくさんありますね」
「そうですね。まず、一枚ずつ食べてから、朝の掃除をしましょうか」
「うん、そうしましょう」
「そして、掃除の後、お茶も入れてゆっくり、残りをいただきましょ」
「いいですねぇ」
そう言って、クッキーを一枚ずつ食べ、朝の掃除に取りかかる。
小さい身体だけど、驚くほど作業ペースが早い。テッテッと床に雑巾をかけているのだが、水の入ったバケツなんかは見当たらない、だけど、少し湿った雑巾で拭いている。更に、溜まった埃や毛が、妖精さん達が何か呟くと、跡形もなく消えてしまっている。なんとなく、近くのゴミ箱を見ると、そこには、埃や毛が溜まっている…なかなか、便利な魔法を使えるようだ。
「さて、お茶を入れますか」
茶の妖精さんがそう言って、手を叩くと、妖精さんが持っていた掃除用具が消え、更に、妖精さん達をキラキラとした光の粒子が包み込んだ。その粒子が消えると、妖精さん達は、ウンと頷いた。
「そうですね」
「では、ワタシは、クッキーを出してきますね」
茶と赤の妖精さんが、茶器を出してお茶の準備をする。茶葉を入れた急須の上で、茶と赤の妖精さんが手をかざし呪文を唱えると、湯気を立てたお湯が急須を満たす。
葉が開いたのを確認し、カップに注いでいると、緑の妖精さんが、大きなお皿に綺麗に並べたクッキーを危なげなく運んできた。
「んー、いい香りです」
「ダージリンでしたっけ」
「発酵茶というもの考えつくなんて、人間は本当に凄いですよねぇ」
「本当です。ローズマリーが一番だと思っていましたが、飲み物としては、茶葉の方がいいですね」
「そうですか?お茶も良いですが、ワタシは、ローズヒップが一番好きですよ」
「ワタシは、ココアかな」
「「!」」
「ココア…確かに、飲み物でしたね」
「確かに…でも、あれは少し違うような…」
「そうですか?ああ、そういえば、光輝が昔は薬だったとか言ってましたね」
「それは、ハーブやお茶だって薬だと聞きましたよ。そうではなくて、あれは、お菓子に入るのではないかと思うのだけど?」
「そうですね。あの甘い香りといい、濃厚なミルクの感じといい。お菓子のような味わいですね」
「そうですか、それならワタシは、カフェオレで」
「「もう、ミルクが入ったのは、お菓子!」」
「えー、何よそれ、じゃぁ、ミルクティーも?」
「「そう」」
「もう、なんなのよ。好みの問題でしょ」
「だから、ミルクが入らない、飲み物で好きなのは?」
「はぁー、はいはい、そういうことね。そういうことなら…昔から飲んでるローズヒップ、ローズマリー…ラベンダーも良いわね。でも、紅茶、緑茶、麦茶もおいしいわ。あら、決められないわね」
………そんなことを話ながらも、食べることにも、しっかり口を使い、皿の上はいつの間にか綺麗になっている。
「あら、もう終わってしまったわ」
「では、そろそろ、光輝が起き出して来ますね」
「今朝は、何を作ってくれるでしょうかね?」
「卵焼きは、必須ですね」
「えっ、ワタシは、目玉焼きの気分ですよ」
「ワタシは、温泉卵が良いですねぇ」
「「「……」」」
それぞれの顔を見合わせてから、三人は無言でお茶の片付けし、光輝がいつも現れるドアの前に並び、互いに牽制しながら、光輝に自分の希望を伝える準備をする。
「ふわぁ~」
日の出にはまだ早く、暗い部屋の中、パチッと目を開けた緑の妖精さんが上半身を起こし大きく伸びをする。すると、茶の妖精さんも、赤の妖精さん起き出して、同じように伸びをする。驚くほど、寝起きが良いようだ。
「お腹空きました」
赤の妖精さんが、ポツリと呟くと、他の二人も頷いて、クッションからおりて、トテトテとキッチンに向かう。
昨日、寝る前に光輝という人間が『ここに入っている物から食べてね』と素焼きの入れ物を自分達用にと、用意してくれた棚の上に置いていってくれたので、その蓋を開けてみる。
「うわぁー、クッキーですぅ」
「たくさんありますね」
「そうですね。まず、一枚ずつ食べてから、朝の掃除をしましょうか」
「うん、そうしましょう」
「そして、掃除の後、お茶も入れてゆっくり、残りをいただきましょ」
「いいですねぇ」
そう言って、クッキーを一枚ずつ食べ、朝の掃除に取りかかる。
小さい身体だけど、驚くほど作業ペースが早い。テッテッと床に雑巾をかけているのだが、水の入ったバケツなんかは見当たらない、だけど、少し湿った雑巾で拭いている。更に、溜まった埃や毛が、妖精さん達が何か呟くと、跡形もなく消えてしまっている。なんとなく、近くのゴミ箱を見ると、そこには、埃や毛が溜まっている…なかなか、便利な魔法を使えるようだ。
「さて、お茶を入れますか」
茶の妖精さんがそう言って、手を叩くと、妖精さんが持っていた掃除用具が消え、更に、妖精さん達をキラキラとした光の粒子が包み込んだ。その粒子が消えると、妖精さん達は、ウンと頷いた。
「そうですね」
「では、ワタシは、クッキーを出してきますね」
茶と赤の妖精さんが、茶器を出してお茶の準備をする。茶葉を入れた急須の上で、茶と赤の妖精さんが手をかざし呪文を唱えると、湯気を立てたお湯が急須を満たす。
葉が開いたのを確認し、カップに注いでいると、緑の妖精さんが、大きなお皿に綺麗に並べたクッキーを危なげなく運んできた。
「んー、いい香りです」
「ダージリンでしたっけ」
「発酵茶というもの考えつくなんて、人間は本当に凄いですよねぇ」
「本当です。ローズマリーが一番だと思っていましたが、飲み物としては、茶葉の方がいいですね」
「そうですか?お茶も良いですが、ワタシは、ローズヒップが一番好きですよ」
「ワタシは、ココアかな」
「「!」」
「ココア…確かに、飲み物でしたね」
「確かに…でも、あれは少し違うような…」
「そうですか?ああ、そういえば、光輝が昔は薬だったとか言ってましたね」
「それは、ハーブやお茶だって薬だと聞きましたよ。そうではなくて、あれは、お菓子に入るのではないかと思うのだけど?」
「そうですね。あの甘い香りといい、濃厚なミルクの感じといい。お菓子のような味わいですね」
「そうですか、それならワタシは、カフェオレで」
「「もう、ミルクが入ったのは、お菓子!」」
「えー、何よそれ、じゃぁ、ミルクティーも?」
「「そう」」
「もう、なんなのよ。好みの問題でしょ」
「だから、ミルクが入らない、飲み物で好きなのは?」
「はぁー、はいはい、そういうことね。そういうことなら…昔から飲んでるローズヒップ、ローズマリー…ラベンダーも良いわね。でも、紅茶、緑茶、麦茶もおいしいわ。あら、決められないわね」
………そんなことを話ながらも、食べることにも、しっかり口を使い、皿の上はいつの間にか綺麗になっている。
「あら、もう終わってしまったわ」
「では、そろそろ、光輝が起き出して来ますね」
「今朝は、何を作ってくれるでしょうかね?」
「卵焼きは、必須ですね」
「えっ、ワタシは、目玉焼きの気分ですよ」
「ワタシは、温泉卵が良いですねぇ」
「「「……」」」
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