エレメント

kaoru

文字の大きさ
8 / 125
番外編

命名式

しおりを挟む
 とある休日の朝、今日は、妖精達の部屋を作る予定で、朝食前から準備をし、食べ終わったら、皆で取りかかるはずだったのだが、その朝食時に、光輝からの提案で、ももんぐさんや、妖精達に、名前を付けることになったが…アイツ、俺に丸投げしやがった。
 だが、そんな事は、断固拒否する構えをとる。
 お前達が生まれる時に、姉さんに付き合わされて、漢和辞典やら名前辞典、調べまくったことは、まだ、ハッキリ、クッキリと、記憶に残っているんだ、あの再現はしたくないぞ。

 『双子だから、似た名前にしたいけど、同じ漢字を使いたくない』だとか、『一人は、父さんと同じ、ノームと仲良くなりそうだから、植物関係が良いわねぇ』とか、『もう一人は、あらヤダ、火だわ、サラマンドラなんか呼び出すのかしら…激しい性格だと嫌だわね、でも、辺りを照らす火なら良いかしらね?』なんて事を言いながら、俺に調べさせて、瑞樹と光輝の名前は決まった。
 まぁ、今思えば、なかなか、良い名前がつけられたんじゃないかと思っている…まぁ、瑞瑞しい樹と、輝く光、姉さんが言った言葉そのままだけどな…

「光輝、俺に全部決めさせるなよ」

 そう言って、光輝の前に、漢和辞典と名前辞典を置いてやる。

「えー」

「えー、じゃないよ。お前も考えろよ、四人もいるんだから、一人ぐらいつけろ」

「分かったよ。じゃぁ、瑞樹も一人つけろよ」

「えー」

「「えー、じゃない!」」

「はい」

 まずは、誰が誰の名前をつけるかだけど、光輝が、精霊繋がりで良いんじゃないなんて言い出した。
 そうすると、赤い妖精は光輝が、茶の妖精は瑞樹が、緑の妖精が俺か…

「瑞樹、緑の妖精もつけるか?」

「え、俺、二人になるじゃん、ダメだよ。ここは、平等に一人づつ」

「そうかって、ももんぐさんもいるから、俺が二人になるんだが、どこが、平等だ」

「それは、年の功ってヤツで…」

「お前、それちゃんと意味分かって使ってるか?」

「年とって、経験豊富なんだから、任せても良いでしょって意味で使ったんだけど?」

「ん?あれ、合ってるのか?」

「はい、正兄も瑞樹も、そこまで。本題に戻そう、妖精さん達は、同族だから、何か共通する意味とか持たせた方が良いかな?」

「そうだね。服の色で良いんじゃない?」

「色?アカって事か?なんか変じゃないか」

「もう、光輝は、単純すぎ、赤い色を連想させる女の子の名前とかあるでしょ」

「例えば?」

「例えば…スカーレットとか」

「他には?」

「他に?えっとー、えっとー」

「スカーレットだけ思い付いたんだろ。茶色はどうする?ブラウンじゃ、男ぽいよなぁ」

「うっ、確かに…」

「まぁ、単純な発想だけど、悪くない、茶色だって、ブラウンだけじゃなく、ココアとか、ショコラ、雀色、何て言う茶系の色があるし、茶色を連想させる名前で良いんじゃないか?」

「ココア、ショコラねぇ、可愛いかも、じゃぁ、妖精さん達、食べることも好きだし、服の色を連想させる、可愛い食べ物で、統一しよう」

「分かった。赤い食べ物ねー」

「ココア、ショコラもいいけど…なんか、もっと呼びやすい名前ないかなぁ…光輝、料理本借りるよ」

「ああ、俺も見たいから、こっち持ってこいよ。部屋にあるのも、持ってこよう」

 双子がそれぞれ本を探しに行ったけど、緑色の食べ物って?
 いや、あるのは分かってる。グリーンサラダに、グリーンカレーって、緑色のなんてつく料理があるんだから、緑色の食材もある、植物なんてほとんど緑色に関係してるからな、しかし、可愛いって…可愛い名前になるような緑の食べ物…て、なんだ?
 いや、可愛いにこだわりすぎか、普通に、緑色を連想する女性らしい名前を考えれば良いんだよ……ライムとか、メロンとか、梅?いや、これは実よりも、花の白とか、赤の方が連想するか?後はなんだ、葉っぱかぁ、ミントとか、アニス、ローズマリー、リコリス、ユーカリ、アルテミシア、アンゼリカなんかは、女性ぽいかな…

「おし、決めた。茶色の妖精さんは、『ココ』でどう?」

『ココですか?ココアではなく?』

「ココア限定でも良いけど、ココナッツとか、ココットとか、美味しいものあるし、二文字の方が呼びやすいし、なんか可愛いじゃん」

『ココナッツって、なんですか?ココットは?』

 美味しいものと聞いて凄い勢いで、茶の妖精が瑞樹に飛びかかってる。それを、さりげなく、ダリルくんが止めて、本を指差し、ココナッツの写真を見せて説明している。

 んー、そうか、二文字の方が、呼びやすいし、可愛いか…なるほどね。

「それなら、赤色の妖精さんは、『ルル』でいい?」

『ルルですか?それはどんなものですか?』

「パリのケーキ屋さんの、ぺルル エ  リュビっていう、ケーキの名前からで、ぺルルにしようかと思ったけど、二文字の方が可愛いっていうから…」

『うわっ、美味しそうです。光輝、作って』

 ケーキの写真を見せながら、名前の説明したら、赤い妖精もテンション上がって光輝に飛びついて、キルさんに止められてるよ。

 しかし…

「さっ、流石にこれは無理かな…でも、ほら、ホワイトチョコのムースにバラの風味を添えて、ベリーで酸味をプラスってあるから、似たようなのは、作れるかもしれない、手伝ってくれるよね」

『はい、美味しいの作りますぅ』

「おいおい、ぺルルって、真珠の事だぞ、良いのか?リュビの方が、ルビーって事だから、赤色に合ってるんだが?」

「えっ、そうなの?真珠だと、白だよね。あっ、じゃぁ、ルビーのルを繋げたということで、ルルでどう?」

「うわっ、スッゴいこじつけ」

「でも、まぁ、ココの後に、ルルだからバランスはいいか…そうなると、緑の妖精は…うっ」

 ヤバい、一番最後になったからなんか期待度が上がってるっぽいぞ、そんなキラキラした目で見ないでほしい…

「お前達の流れでいくと、『茶々』とかか?」

『チャチャですか?それは?』

「あっ、抹茶からでしょ、確かに、美味しいもの沢山あるし、良いかも」

『マッチャ?緑色のお茶なんですか?…緑茶じゃなくて?』

「見て、こういうお茶の葉を挽いた粉で、お茶として飲んでもいいけど、ほら、この粉を混ぜて、ケーキとかクッキー、ムースにゼリー、アイスなんかもあって、美味しいんだよ」

『ふわぁ、良いですねー、作りましょう』

「作りましょうって、今は、名前なんだけど…」

『あっ、そうでした。茶々でよいです』

 ふー、意外とすんなり決まったな。瑞樹のファイン  プレーだ。

 さて、後は、ももんぐさんだけど…この流れでいってしまおうか?

『可愛いではなく、格好いい名前を頼むぞ』

……いやいやいや、どうみても、可愛いでしょう。声には出せないけれど…

「うっうん、そうですね。では、お茶繋がりで、ルフナなんてどうですか?」

『るふなとな?そんなお茶あったかいのう?』

「俺も知らない、光輝は?」

「知らない。正兄、それって、どんなお茶なの?」

「紅茶だよ。スリランカのルフナ地方で採れる濃いお茶で、ミルクティーに合うんだ」

『ミルクティーですか?』

『ミルクティーは、美味しいです』

『はい。ももんぐは、ルフナにしましょう』

 『まぁ、それなら良いかのう。よし、ワシは、今日から、ルフナと名乗ろう』

  よし、上手く乗り切れたな。良かった。良かった。
 って、キルさんと、ダリルくんが、何か企んでいるっぽいぞ、気のせいか?









 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

四人の令嬢と公爵と

オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」  ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。  人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが…… 「おはよう。よく眠れたかな」 「お前すごく可愛いな!!」 「花がよく似合うね」 「どうか今日も共に過ごしてほしい」  彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。  一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。 ※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...