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第五章 貯め活開始…
百二話
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クローゼットの棚から、ダンボール箱を一つと、チャック付きのビニール袋を下ろす。ダンボールは、キルさんが持ってくれたので、俺は袋の方を持ってリビングに戻る。
「ばあちゃんが、使ってたものは、全部、ココに入ってると思うよ」
母さんは、早速、箱に飛び付き、中を確認している。
「あっ、母さんの裁縫箱も、ちゃんととってあるのね。この箱、好きだったのよねぇ」
ああ、その箱は、俺も瑞樹も気に入ってる。特別な装飾があるわけではない、ただの四角い箱だけど、上の蓋は半分の跳ね上げ式で、開けると、裁縫道具がキッチリ収まっている。それを、引き出すとボタンや、留め具なんかの小物が入っている。道具一つ一つが、それぞれのサイズに合った場所に収まっていて、針山が入っている所は取り出す事も出来て、その下には、指貫が入っている。
箱の下半分は引き出しになっていて、色とりどりの糸が納められている。
ばあちゃんは、それを使い、色々なものを作ってくれた。小学生この頃使っていた巾着袋や、手提げバッグ、農作業用のツナギやベストなんかもだし、今でも使っているのは、ベットカバーだ、それぞれの好みに合わせた色のシンプルなパッチワークのキルトだ。
「編み針は、母さんのと一緒になってるのね。これは、初めて見るわね。私のと一緒に仕舞うために作ったのかしら?」
「ああ、そうだよ。姉さんの形見だからって、母さんが新しく作った編み針入れだ。で、残っていた毛糸…ウールとかは、母さんが殆ど使ったんじゃなかったかな?」
「あっ、この中にあるよ」
俺は、持ってきた袋を開ける。
「ああ、本当ね。毛糸は母さん使ったんだ。殆どレース糸と、綿や麻糸しか残ってないわね。でも、夏だしちょうど、良かったかな」
母さんが袋を覗いていると、妖精さん達が、テトテトと近づいてきて、一緒に覗きこむ。
『綺麗な糸です』
『それに、均等に巻かれています。スゴいです』
『本当です』
「これは、機械で巻いてるからね。妖精さん達は、手巻きしかやったことないのかしら?」
『機械ですか?鉄でしたっけ』
「え?いいえ、機械というのは、歯車とか使って小さい力で大きな物を動かしたり、同じ動作をしたりする仕組みの事で、素材は何でも良いのよ」
『そうなのですか?』
「そうなの?」
「瑞樹、お前か、教えたのは…」
「だって、機械って聞くと、鉄とかの金属で出来てるイメージだったから…」
ヤバッ、俺も、そういうイメージ持ってた…
「妖精達の時代にも、風車か水車はあったんじゃないか?あれだって、機械だし。糸車は?使ってなかったのか、機織りとかは?」
『水車はありました。魔女達が、粉引きや、薬草をすりつぶすのに使ってました。糸車は、なかったです。使ってみたかったですけど、機織りも…魔女達は、そういうモノに関心がなかったです』
「じゃぁ、糸巻きも棒に巻きつけるやり方しかやってないのかしら?」
『そうです』
『石の婦人に、教えてもらいました。レースも少し習いました』
『でも、人間みたいに、綺麗な布を織ってみたかったです』
「そうなの?ちょうど、良かった。私と一緒に色々、作りましょうよ。楽しいわよ」
「ちょっ、ちょっと、姉さん、流石に機織りは、用意できないよ」
「正也、大袈裟に考え過ぎよ。先ずは、二十センチ位の木枠だけで良いのよ」
「は?どういうこと?」
母さんが言うには、二センチ程の角材で作った木枠の上下に、細い釘か、太めのピンを一センチ感覚で打ち付け、更に、半分程ずらしてもう一列打ち付けて、そこに、糸を渡していく、すると、五ミリ感覚の縦糸が張られ、そこに好きな糸を使って織り込んでいけば良いということだった。
「えっ?そんなんで、出来るのか?」
「出来るわよ。最大十五、六センチ四方位のモノは、織れるハズよ。私がやったのは、もっと小さい木枠のだったから、十センチ位が最高だったけど、ちょっと、物足りなかったのよね」
「う、それなら、入門編で、その小さいのからで良くないか?妖精達も、姉さんも、小さいんだし」
「えー、ちょっと、大きい位の方が良いじゃない、縦糸の本数減らせば小さく出来るんだし、慣れてくれば、ちょっと、大きいものも作りたくなるでしょ」
「…それも、そうか。分かった。用意するよ」
「ばあちゃんが、使ってたものは、全部、ココに入ってると思うよ」
母さんは、早速、箱に飛び付き、中を確認している。
「あっ、母さんの裁縫箱も、ちゃんととってあるのね。この箱、好きだったのよねぇ」
ああ、その箱は、俺も瑞樹も気に入ってる。特別な装飾があるわけではない、ただの四角い箱だけど、上の蓋は半分の跳ね上げ式で、開けると、裁縫道具がキッチリ収まっている。それを、引き出すとボタンや、留め具なんかの小物が入っている。道具一つ一つが、それぞれのサイズに合った場所に収まっていて、針山が入っている所は取り出す事も出来て、その下には、指貫が入っている。
箱の下半分は引き出しになっていて、色とりどりの糸が納められている。
ばあちゃんは、それを使い、色々なものを作ってくれた。小学生この頃使っていた巾着袋や、手提げバッグ、農作業用のツナギやベストなんかもだし、今でも使っているのは、ベットカバーだ、それぞれの好みに合わせた色のシンプルなパッチワークのキルトだ。
「編み針は、母さんのと一緒になってるのね。これは、初めて見るわね。私のと一緒に仕舞うために作ったのかしら?」
「ああ、そうだよ。姉さんの形見だからって、母さんが新しく作った編み針入れだ。で、残っていた毛糸…ウールとかは、母さんが殆ど使ったんじゃなかったかな?」
「あっ、この中にあるよ」
俺は、持ってきた袋を開ける。
「ああ、本当ね。毛糸は母さん使ったんだ。殆どレース糸と、綿や麻糸しか残ってないわね。でも、夏だしちょうど、良かったかな」
母さんが袋を覗いていると、妖精さん達が、テトテトと近づいてきて、一緒に覗きこむ。
『綺麗な糸です』
『それに、均等に巻かれています。スゴいです』
『本当です』
「これは、機械で巻いてるからね。妖精さん達は、手巻きしかやったことないのかしら?」
『機械ですか?鉄でしたっけ』
「え?いいえ、機械というのは、歯車とか使って小さい力で大きな物を動かしたり、同じ動作をしたりする仕組みの事で、素材は何でも良いのよ」
『そうなのですか?』
「そうなの?」
「瑞樹、お前か、教えたのは…」
「だって、機械って聞くと、鉄とかの金属で出来てるイメージだったから…」
ヤバッ、俺も、そういうイメージ持ってた…
「妖精達の時代にも、風車か水車はあったんじゃないか?あれだって、機械だし。糸車は?使ってなかったのか、機織りとかは?」
『水車はありました。魔女達が、粉引きや、薬草をすりつぶすのに使ってました。糸車は、なかったです。使ってみたかったですけど、機織りも…魔女達は、そういうモノに関心がなかったです』
「じゃぁ、糸巻きも棒に巻きつけるやり方しかやってないのかしら?」
『そうです』
『石の婦人に、教えてもらいました。レースも少し習いました』
『でも、人間みたいに、綺麗な布を織ってみたかったです』
「そうなの?ちょうど、良かった。私と一緒に色々、作りましょうよ。楽しいわよ」
「ちょっ、ちょっと、姉さん、流石に機織りは、用意できないよ」
「正也、大袈裟に考え過ぎよ。先ずは、二十センチ位の木枠だけで良いのよ」
「は?どういうこと?」
母さんが言うには、二センチ程の角材で作った木枠の上下に、細い釘か、太めのピンを一センチ感覚で打ち付け、更に、半分程ずらしてもう一列打ち付けて、そこに、糸を渡していく、すると、五ミリ感覚の縦糸が張られ、そこに好きな糸を使って織り込んでいけば良いということだった。
「えっ?そんなんで、出来るのか?」
「出来るわよ。最大十五、六センチ四方位のモノは、織れるハズよ。私がやったのは、もっと小さい木枠のだったから、十センチ位が最高だったけど、ちょっと、物足りなかったのよね」
「う、それなら、入門編で、その小さいのからで良くないか?妖精達も、姉さんも、小さいんだし」
「えー、ちょっと、大きい位の方が良いじゃない、縦糸の本数減らせば小さく出来るんだし、慣れてくれば、ちょっと、大きいものも作りたくなるでしょ」
「…それも、そうか。分かった。用意するよ」
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