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番外編

あふたぬーんてぃ(竜神様の正月休み)中編

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 一日は、おせちとお雑煮の朝食後、善光寺に初詣に行くか行かないかで、意見が別れた。

「俺は、商売繁盛を願って、ちょっと行ってくるか」

「俺は、どうしよう…ダリルくんとアルフさんと、マイケルくん、妖精さん達がいれば、植物の状態メチャクチャ良好なんだよなぁー」

「三人じゃない、三柱の神様が常にいるんだから、豊穣は間違いないよな」

「でしょ。だから、初詣でいくのやめようかな」

「でも、昨年、願い事したのなら、そのお礼はしないといけないんじゃなかった?」

「えっ、そうなの?うーん、でも、人混みやだしなぁー、お礼だけなら、後でもよくないかな?」

「まぁ、そうか…去年も、五日ぐらいに行ってたしな。光輝は…いつも通り、ウチの店で良いのか?」

「そうだね。キルさんやファラムがいるけど、火の神様には、安全祈願しておこうかな。明日の初売りに行くついでに、秋葉さんにお参りするよ」

「いやいや、お参りのついでの買い物だろ…」

「あっ、そうか…」

「じゃぁ、俺だけ行ってくるか」

「あっ、私も行くわ。お正月を満喫したいから」

『ワシも、ちと見学に行きたいのう』

「「え?」」

『ん?ダメなのか?』

「…いえ、善光寺周辺には、いろいろなお社ありますけど…その方々と面識は?」

『まぁ、それなりに…な、でも、皆忙しいだろうから、ワシのことなど気にしないと思うぞ…ちと、寂しいが…』

「えーと、まぁ、そういうことでしたら、一緒に行きますか」

『いや、ありがたい、では、行ってくるぞ』

 て、いうやり取りがあって、正兄と母さん竜神様は、善光寺さんにお参りに…

「光輝様、秋葉さんとは?」

「ああ、えーと、秋葉信仰の神社でカグツチ神を祀っているんだったかな?まぁ、鎮火、火難除けや郷土守護の神様で、いろんな所に社があって、正兄の勤めている会社の近くにも社があるんだ。そこで、火事にならないように、毎年お願いしてるんだよ」

「炎の神ということですか」

「うん、そうだね。まぁ、キルさんやファラムがいれば、火事になる心配はしなくて良さそうだけど、一応ね」

「いえ、大事です。私は、炎の制御は不得手ですので、まぁ、もしもの時は、ファラムに消してもらえばいいのですが」

 という会話の後は…皆で、ダルダルとテレビを見たり、ゲームをしたりしていたんだけど、途中から、妖精さん達と烏天狗の二人が、スポーツのゲームに熱中してしまった。妖精さん達は、とにかく動くことが好きみたいで、しかも、運動神経が良い…俺達は、観戦に回ってお茶をしながら、いい加減な声援をおくって、楽しんだ。
 妖精達がお腹を空かせたところで終了。
 優勝は、はやてさん、皆は、おせちを広げると飛び付いてきた。

 夕飯も、吸い物と、作りおきの惣菜やお餅焼いて簡単にすませ。

 二日目は、予想外に忙しい始まりだった。
 皆の希望を聞き、お餅を焼いたり、味噌汁を作りしている所に正兄のケータイが鳴った。

「はぁ?嘘だろ。あー、じゃぁ、今並んでる人で、希望者がいれば渡していいよ。いなかったら、一枚とっておいて、うん、お願い」

 正兄は、新年の挨拶もそこそこにそんな事を言って電話を切った。

「光輝、福袋買えないかも」

「えっ?どうしたの?」

「それが、もう店の前に並んでる人がいるんだって」

「はぁ?だってまだ、開店、一時間以上前だよね?」

「うん、初売りでも早めたりしないからな」

「皆、アフタヌーンティーセット狙いなの?」

「いや、それは、まだ分からないけど、食器セットの福袋狙いらしい。今、十人ぐらい並んでいるって、連絡があった」

「そんな人気なの?」

「いやぁ、これは想定外だ。去年、かなり出たから、今年は、食器類を中心に置いて、福袋作ったけど、ここまでとは考えてなかった」

「まぁ、しょうがないね。買えなかったら、正兄のところで、注文しても良いんだよね?」

「ああ、それは出来るけど、社員価格でも、福袋に負けるぞ」

「まぁ、それは、あったら楽しめるなぁって、いう程度だから、是非にじゃないよ」

「そうなのか?」

「えー、私は、楽しみにしてるのに…」

『アフタヌーンティー、出来ないですか?』

『お菓子、食べれないですか?』

『お菓子作りもなしですか?』

「いやいや、お皿が段に置けないだけで、アフタヌーンティーは出来るから。そんな、心配要らないよ」

「えー、でも、あの段になったところに、小さいお菓子やパンが並んでるの見るのも楽しみの一つなのにー」

「段になってなくても、綺麗に並んでいれば良いんじゃないの?」

「もう、夢がないわね。ちょっと、非日常が演出できるから、テンションが上がるんじゃない、もう、そんな考えだからモテないのよ」

 いや、そんな事、言われても…

 ちょっと、理不尽じゃないかと思っていたら、ファラムがつつつぅと寄ってきて、抱っこをせがんで来た。



「なに?ファラムどうしたの?」

「あっ、そうか、ごめんなさいね。ファラムちゃんがいるから、ヘタにモテなくて良いのよね。もう、甲斐性なくても好かれるなんて奇跡よ。大切にしなさいね」

 えーと、お皿が段に置けないだけで、ここまで言われるの?

「えっと、まぁ、なんだ、まだ、買えないって決まったわけじゃないから…今から、希望を聞いて、引換券渡すらしいから」

「引換券?」

「こんなになるとは思ってなかったから、慌てて作ったらしい。割れ物だから、混雑して、もしもの事があれば危険だし、折角、良いもの選んだのに、使えなくなれば勿体ないからな」

「ああ、成る程。じゃぁ、残っているのを期待しつつ出掛けようか」

「正也様、宜しければ私が行って引換券とやらを貰ってきましょうか?」

「あっ、いや、今並んでいる人で、余るようならとっておいてもらってあるから大丈夫だよ」

「しかし、正也様は、ちょっと後ろめたく感じていますよね」

「えっ?ああ、分かっちゃうんだ…まぁ、ちょっと、ズルしてる気分にはなるかなぁ」

「では、行って来ます。正規でもらってきた方が良いでしょう。情報提供の事は、おいておくとしてですけど」

 そう言って、キルさんが消えて、五分位でまた正兄のケータイが鳴った。

「え?ああ、うん、ちょっとした知り合いで…そう、訳話したら…そうなんだよ。後で、皆で行くから、えっ?それは、分からないけど…ああ、じゃぁ、またね」

 どういうこと?

 俺達が今日、行く予定の本店は、ここから、徒歩三十分…キルさんだから、もう着いたんだよね。たぶん…

「ただいま戻りました」

「流石、早いなぁ…」

 ちょっと、呆れたように呟いてしまう。

「アフタヌーンティーセットは、残ってました。一番人気は、大皿が入ったパーティーセットらしいです。既に完売ということです」

「え?大皿セットは十袋の筈なのに、もう?」

「はい、そう仰ってました」

「そうか、凄いな」

「正兄、今のケータイは、その事じゃなかったの?」

「あー、今のは、こちらへの問合せだ」

「問合せ?」

「キルさんが、ウチの連中のストライクゾーンに入ったらしぃ」

「は?どういうこと?」

「この容姿だろ、更に、声も良いとか言って、是非、紹介してくれだって…どうする?」

 キルさんが、困り顔で俺を見るけど…さて、こういう時はどうしよう…

『なんだ?朝から何を騒いでおるのだ?』

うねうねと宙を泳いで竜神様が起き出してきた。竜神様方は、こたつ布団が気に入ってそこで寝ている。

『ほほ、人のおなごに好かれておるのか?良いのぉ、ワシも昔は…どれ、久々に、人形に…ん?おや?んー…』

 正兄の話を聞いて羨ましくなったのか、竜神様が、変化しようとしたけど…

「どうしました?」

『いや、そのな、余りに久々で、忘れてしもうた。どうやったかいのう?』

 えっと、神様の威厳がもう無くなりつつあるんですけど…





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