異世界人拾っちゃいました…

kaoru

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牧場見学

リノ牧場

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「うわぁー、スゴいよ。クラリーちゃん、分かる?」

 リノ牧場に一番近い停車場で馬車を降りて、なだらかな坂道を北東に進む。
 十分ほどで、大きなログハウスが見え、その回りに、牧舎や加工場、こじんまりとしたログハウスが数件建っていて、その奥の柵で囲まれた牧草地に、真っ白で巨大な綿花のような動物がはむはむと草を食べている。

「ん、なんか、ほわほわした感じ。おっとりしてて、優しい」

 距離があっても、大きな羊は、感知できたようだ。クラリーちゃんが、タリクさんに抱っこされながら笑顔で、リョウに答えてる。

「向こうのは?ピョンピヨン跳ねて、楽しそう」
 
 クラリーちゃんが、そう言って指を指した方を見ると草原の中にある小さい岩場で、子山羊達が、登ったり降りたりして遊んでいた。

「えー、わっ、可愛いー。あれが、山羊?」

「ああ、子山羊だな。大人はもう少し大きいぞ」

「山羊は、同じぐらいかな。あっ、でも、毛糸用の山羊は、僕見たことなかった…どんな、手触りなんだろ?楽しみぃー」

 リョウは、走っていきたそうだが、クラリーちゃんがいるせいか、俺達の歩調に合わせ、横歩きのような感じで、ステップを踏みながら進んでる。

 牧場の入り口には、エルフ族のわりには、背が低く、少し小太りな年配の男性が立っていて、リョウの様子を見て、笑顔で会釈をしてきた。

「おはようございます。見学を予約したディル・ハバー・ウィル・リュートです。よろしくお願いします」

「ようこそリノ牧場へ。主のアルバン・ハバー・シーズ・リノです。今日は、楽しんでいってください」

 俺が、握手をしたあとに、タリクさん、クラリーちゃん、リョウの順で挨拶した。セルバンさんは、それぞれに握手し、リョウのところで、牧場内に目をやり、ヒューィと、高い口笛を吹いた。
  すると、アルバンさんの視線の先から、青みの強い灰色の魔獣が駆けてきた。

「うわっ、えっ、もしかして、あれが、ウプアート?カッコイイけど、かわいい」

 リョウが、大興奮で俺の腕を掴んで跳び跳ねる。そんなことして、警戒心を抱かせるのでは?と思ったが、駆けてきたウプアートは、セルバンさんの隣に来ると、ストンとお座りをし、俺達を見上げてきた。
 話には聞いて知っていたが、実際に見るのは初めてなウプアートは、思っていたより小さかった。
 座った感じがココと同じぐらいだから、体長一メートル弱という感じで、耳が大きく、ジャッカルというより、狐に近い顔立ちで、リョウの言う通りかわいい感じがした。
 そのウプアートが、俺達を一人一人見る感じで、首を動かしたあと、セルバンさんを見上げ『ケケッケッケッケ』と面白い鳴き方をした。

「おや、おや、そうかい、分かったよ。後で、案内しよう」 

 セルバンさんは、そう言って、ウプアートの頭を撫でると「こちらに、どうぞ」と言って、歩き出した。
 ウプアートも一緒に歩きだし、長いフサフサの尻尾を振っている。その尻尾に釘付けのリョウが、直ぐに後につき、俺とタリクさんは、そんなリョウをクスリと笑い後につく。

 セルバンさんが、先ず案内してくれたのは、小さなログハウスで、中には、ハバーラビットが、元気に走り回ったり、日向で伸びていた。
 ハバーラビットは、体長五十センチ程で、耳が少し短い。ハバー大陸の固有種で、とても柔らかく、肌触りの良い毛糸が採れるので有名だ。

「ふわー、ホコホコしてる」

「あったかい。もこもこ」

 セルバンさんは、リョウとクラリーちゃんに、日向ぼっこをしていた一羽を抱き上げて触らせてくれた。
 二人は長い毛を優しく撫でてる。
 アルバンさんは、そんな二人を見つめ。

「次は、どうしようか?子山羊を見に行くかい?それとも、羊に乗りたいかい?」

 と、聞いてきてくれた。

 リョウが、クラリーちゃんを見ながら…

「えーと、山羊を見て、触りたいです。その後に、羊に乗ってみたいです。後、出来れば、乳絞りもしたいです」

「それだけで、良いのかい?」

「えーと、あっ、チーズ、バター」

「糸紡ぎ、フェルト、絨毯」

「おやおや、一気に忙しくなったねぇ」

 ハッハッハッ、と笑いながら、外に出て、誰かに声をかけてる様だった。
 戻ってきたセルバンさんに、促されて外に出ると四人掛けの引き車が用意されていた。普通、街中では、ロバやラマが車を引いているのだが、ここでは…

「えっ…ウプアート?」

 リョウが、引綱に繋がれている動物を見て驚きの声を上げる。
 さっきまで、体長一メートル位だったウプアートが、二メートル位になって、車に繋がれている。

 セルバンさんは、イタズラが成功した子供みたいに、笑っている。

 俺の、魔力感知や熱感知にも、引っ掛からなかった…どういう事だ?
 

 
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