異世界人拾っちゃいました…

kaoru

文字の大きさ
39 / 149
冒険者

ふわふわパンケーキ

しおりを挟む
 二人を連れて役所に行くと、メリロットが凄い勢いで近づいて来た。
 驚いてしまったせいか、ミンテが低く唸っている。

「あっ、ごめんなさい。この子がウプアートね」

「ああ、おはよう。証明書見たんだね」

「あっ、おはよう。リョウ君もおはよう。ごめんね。驚かせてしまったみたいね」

「おはよう。ちょっとだけだから、いいよ。それより、どうしたの?ミンテに何か問題あるの?」

 リョウの質問に、困ったようにため息をついてから、メリロットは、俺たちを、いつもの個室に案内した。

「あなた達、昨日、リノ牧場で何したのよ」

「「ん?」」

 俺とリョウは、そろって、首をかしげる。

「ウプアートについてもだけど、タリクが朝イチで、ディルに婚約者がいるか聞いてきたわよ。それで、クラリーちゃんを婚約者にして、パーティーメンバーに加えてもらえるか、確認したいそうよ。それから、商業ギルドから、リョウ君の名で、レシピ登録したいと連絡があったから、リョウ君にギルド登録してほしいそうだし、何より、リノ牧場が、セルヴァンの加護持ちということを公にして、商品登録してきたわよ!下の市場は、大混乱よ。どうしてくれるのよ!」

 一気に捲し立てたメリロットに、俺とリョウは、目が点に…えーと、どういうこと?

「ごめん、メリロット、一つずつお願い」

 リョウも隣で、コクコク頷いている。
 メリロットは、大きなため息をついた。

「クラリーちゃんの件は、タリクから、聞いてね。じゃぁ、まず、リョウ君の商業ギルド登録の件ね。昨日、リノ牧場で、リョウ君が、新しいパンケーキを考案したそうじゃない?それと、それを使った新しい食べ方も、それを、全てリョウ君の名で、レシピ登録したいそうよ」

「はぅ?」

 思わずといった感じで、リョウが変な声をだした。

「レシピ登録って、僕、ニホンで食べたことのあるパンケーキを、教えただけだよ。生クリームやアイスのせたり。甘くないのを作って、パン代わりにするってだけで、それだけで、登録?えー?」

「パンケーキに、生クリームやアイスね。かなり贅沢なトッピングなのね。それに、お菓子を、パン代わり?食事になるの?クレープみたいになるのかしら?食べてみたいわね。そんなに変わっているなら、レシピ登録するのに十分だと思うけど?何が問題なの?」

「えーと、そうなの?」

「そうよ。異世界で料理人だった人達は、次々に、レシピ登録して、収入を得てるわよ。早い者勝ちだから、似たような物は審査が入るけど、それぞれが、それなりに稼いで、こちらの世界でもお店を出しているわよ」

「そうなんだ…それで、今回の食べ方のレシピは、まだなかったんだね」

「そうなのよ。だから、商業ギルドに行って、登録してきてちょうだい。その間に、従魔登録書と登録証明札を用意しておくし、タリクも落ち着かせておくわ…あと、リノ牧場の事も、詳しく知りたいから、よろしくね」

 と、笑顔で商業ギルドに追いたてられた…

「メ、メリロットさんの、笑顔が怖かった…」

 リョウの呟きに、ミンテが同意するように、腕の中で、コクコク頷いている…
 ごめんミンテ、可愛すぎる…

 冒険者ギルドの上にある商業ギルドに行くと、待ってましたとばかりに、書類の束を持って、職員さんが対応してくれた。
 リョウと二人驚いたのは、リョウの曖昧な記憶から、リノ牧場が、再現した物を既に届けていた。(さすがに、アイスは図面での説明だったけど)

「ふわぁー、もう、出来てる」

「これが、昨日言っていた物か、本当に、ふわふわで、美味しそうだな」

「はい!それはもう。この街に新たな名物が登場しますよ。牧畜が盛んなこの街に、ピッタリですからね。ありがとうございます」

 もう、職員さんが、テンション高く、リョウの手を両手で掴んでお礼をいっている。
 リョウは戸惑い、顔がひきつったまま、職員さんに、したがって書類を書いた。

☆ふわふわパンケーキ☆
 卵白を泡立てたものを、生地に混ぜ、ふんわり仕上げたパンケーキ。

☆食事用パンケーキ☆ふわふわパンケーキ使用
 甘みを入れずに作ったふわふわパンケーキに、ハムやチーズをトッピング。

☆贅沢パンケーキ☆
 パンケーキ(全種類OK)に、生クリームやアイス、フルーツを贅沢に使いトッピングしたもの。

 というのが、リョウの名前で登録された。
 今まであったパンケーキでも、甘くないのがあって、食事として食べている地域があり、メリロットが驚いた程、珍しいものではないそうだ。(俺も、知らなかったけど…)なので、ふわふわパンケーキ限定で登録しておけば、リョウの収入アップになると言われたので「ちょっと、ズルいかなぁ」と呟きつつ、リョウが登録していた。

 登録の後「この世界に来てから、まだ、食べてないのですよねぇ?」と、リョウと俺に、パンケーキの試食をさせてくれた。
 俺は、ミンテと分けあって食べたのだが、本当に、ふわふわで美味しいパンケーキだった。

 



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...