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冒険者
美人姉妹
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クラリーちゃんにミンテを預けていたので、モン族の訓練場に迎えに行くと、ドアを開けた瞬間に、ミンテとココが俺に飛びついてきた。
左手にミンテ、右手でココを抱き抱え。
「もう少し、優しく出迎えてくれた方が、嬉しいんだが…」
『ミンテが、ディルの従魔です。ココには、クラリーがいるでしょ』
『確かに、主はクラリーだけど、主以外に甘えてはダメだという、決まりはないわ』
何やら、剣呑な空気が流れる。
『グググ…離れろ』
二十センチの小さい身体で、一メートルのココを押し退けようと両前足を伸ばすが…
『ここに居る時ぐらい、良いでしょ。シャッ』
軽く威嚇されて、ミンテの尻尾は三倍にも膨れ上がるも『ウェーン』と泣き始めてしまった。
「はいはい、人が抱いてる時に、ケンカしない」
ミンテを慰めつつ、周りを見ると、リョウは左隣で「一匹ぐらい、こっちに来てもよくない?てか、何で、ココちゃん片手で受け止められるの?ディルおかしくない?」と、口を尖らせ、ブツブツ呟いてる。
右では、クラリーちゃんと、妹のクミンちゃんが「「ココ、抜け駆けはよくないですよ」」と、俺から引き剥がせようとしている。
はぁー、クラリーちゃんには、二歳違いの姉と、双子の妹、クミンちゃんがいるのだが、クミンちゃんが、何故か、俺を見るなり「自分も冒険者になりたい」と言い出した。でも、今まで、剣術をしていた姉とは違い、本が好きで、運動もあまりしていなかったので、流石に皆から止められた。
違いと言えば、この二人、外見も全く違っていた。
クラリーちゃんは、母親のカトリーナさん似で、クミンちゃんは、父親のタリクさん似で、銀髪に青い目をしている。そして、クミンちゃんの方が、身長が二十センチも高く、双子には見えない。まぁ、二人とも、美少女では、あるんだけど…
「ディルだけ、モテて、ズルい」
最近のリョウの口癖が聞こえてくる。
モテて、と言われても…未成年者にモテてもなぁ…
「はいはい」
俺は、少し屈んで、ココをリョウの前に下ろす。
『うっ、ディル様、ヒドイですぅ』
「ココちゃん、たまには、僕の方にも来てよ」
と、いいながら、リョウが一生懸命、撫でるけど「ナーォ」と鳴いて、離れていってしまった。
「絶対、ディルより、いい男になってやるぅ!」
うん、これも、口癖になりつつあるな。
「早く冒険者になって、ディルを追い抜くからね。はい、訓練、訓練!」
ん?いや、訓練に来たわけじゃなくて、ミンテを迎えに来ただけのはずだったのに、と思い出した時には、既に、両手に短剣を持つリョウの相手をしていた。
教官のゼグートさんも言っていたが、下半身というか、脚力があって、関節も柔らかく、反射神経も良いから、子供にしてはかなりいい動きをしてる。
実戦を経験してみないとハッキリとは言えないが…子供扱いし過ぎないよう気を付けた方がいいかな?
とはいえ、今の段階では、まだまだ、未熟。軽くいなして、地に転がす。
「はぁ…大分慣れてきたけど、勝てる気がしない…」
「おいおい、初めて武器を持って十日の奴に、追い抜かれるようなら、俺は、冒険者辞めて、生産職に就くぞ」
「えー、まぁ、そうだよね。修行しないと無理だよね。チートスキルで無双とかならないかなぁー」
「何、寝ぼけたことを…さっ、帰るぞ」
「お待ちください。ディル様、私とも、手合わせしてくださいまし」
「えっ、あっ、はい…」
弱視が治ったクラリーちゃんが、すみれ色の瞳を真っ直ぐに向けてきた。
魔力操作はまだ身に付けてないが、火炎操作を覚えたので、無意識に炎を発することがなくなった。
もともと、かなりの腕前だったけれど、今では、Eランクの成人男性冒険者の平均より強いのでは?と思う時がある。
タリクさんが言うように、冒険者試験は簡単に通ってしまうんだろうなぁ…
「ディル様、訓練とは言え気がそぞろですと、怪我をしますよ」
「あっ、はい…」
凶戦士の職が消えたはずなのに、スピードが上がってないかな?気のせい?
未成年で、こんなことしてたら、身体に無理がかかるかな?セーブさせた方が良いのか?
ヤバい。その辺の事、考えてなかったな…
「ディル様!」
「あっ…」
とっさの事で、力加減を間違えた。
クラリーちゃんの体勢を崩して飛ばしてしまったが、猫のようにクルンと回転し無事着地した。
リョウが慌てて駆け寄り声をかける。そして、ジト目でこちらを見て…
「ディル、大人気ない」
ですね…反省。
「ごめんなさい」
俺は、二人に近づいて頭を下げる。
「ディル様、手合わせしているのに、考え事をするなんて、ヒドイです。何を考えていたのですか?」
クラリーちゃんが、頬を膨らまして怒りだす。
「えーと、クラリーちゃんのスピードが、また、上がったように感じたから、身体に負担にならないのかな?と…成人するまで、セーブした方が良いのかどうかと…」
「まぁ~、私の事を心配してくださっていたのですね。嬉しいです」
そして、俺に抱きついてきた。
「クラリーズルい」
駆け寄ってきたクミンちゃんも、何故か抱きついてくる。
その後ろで『クミンは、関係ないでしょ』とクミンちゃんの服の裾を咥えて引っ張るミンテとココ。
「ズルい」
リョウがまた呟いてる。
なんだかなぁ…
左手にミンテ、右手でココを抱き抱え。
「もう少し、優しく出迎えてくれた方が、嬉しいんだが…」
『ミンテが、ディルの従魔です。ココには、クラリーがいるでしょ』
『確かに、主はクラリーだけど、主以外に甘えてはダメだという、決まりはないわ』
何やら、剣呑な空気が流れる。
『グググ…離れろ』
二十センチの小さい身体で、一メートルのココを押し退けようと両前足を伸ばすが…
『ここに居る時ぐらい、良いでしょ。シャッ』
軽く威嚇されて、ミンテの尻尾は三倍にも膨れ上がるも『ウェーン』と泣き始めてしまった。
「はいはい、人が抱いてる時に、ケンカしない」
ミンテを慰めつつ、周りを見ると、リョウは左隣で「一匹ぐらい、こっちに来てもよくない?てか、何で、ココちゃん片手で受け止められるの?ディルおかしくない?」と、口を尖らせ、ブツブツ呟いてる。
右では、クラリーちゃんと、妹のクミンちゃんが「「ココ、抜け駆けはよくないですよ」」と、俺から引き剥がせようとしている。
はぁー、クラリーちゃんには、二歳違いの姉と、双子の妹、クミンちゃんがいるのだが、クミンちゃんが、何故か、俺を見るなり「自分も冒険者になりたい」と言い出した。でも、今まで、剣術をしていた姉とは違い、本が好きで、運動もあまりしていなかったので、流石に皆から止められた。
違いと言えば、この二人、外見も全く違っていた。
クラリーちゃんは、母親のカトリーナさん似で、クミンちゃんは、父親のタリクさん似で、銀髪に青い目をしている。そして、クミンちゃんの方が、身長が二十センチも高く、双子には見えない。まぁ、二人とも、美少女では、あるんだけど…
「ディルだけ、モテて、ズルい」
最近のリョウの口癖が聞こえてくる。
モテて、と言われても…未成年者にモテてもなぁ…
「はいはい」
俺は、少し屈んで、ココをリョウの前に下ろす。
『うっ、ディル様、ヒドイですぅ』
「ココちゃん、たまには、僕の方にも来てよ」
と、いいながら、リョウが一生懸命、撫でるけど「ナーォ」と鳴いて、離れていってしまった。
「絶対、ディルより、いい男になってやるぅ!」
うん、これも、口癖になりつつあるな。
「早く冒険者になって、ディルを追い抜くからね。はい、訓練、訓練!」
ん?いや、訓練に来たわけじゃなくて、ミンテを迎えに来ただけのはずだったのに、と思い出した時には、既に、両手に短剣を持つリョウの相手をしていた。
教官のゼグートさんも言っていたが、下半身というか、脚力があって、関節も柔らかく、反射神経も良いから、子供にしてはかなりいい動きをしてる。
実戦を経験してみないとハッキリとは言えないが…子供扱いし過ぎないよう気を付けた方がいいかな?
とはいえ、今の段階では、まだまだ、未熟。軽くいなして、地に転がす。
「はぁ…大分慣れてきたけど、勝てる気がしない…」
「おいおい、初めて武器を持って十日の奴に、追い抜かれるようなら、俺は、冒険者辞めて、生産職に就くぞ」
「えー、まぁ、そうだよね。修行しないと無理だよね。チートスキルで無双とかならないかなぁー」
「何、寝ぼけたことを…さっ、帰るぞ」
「お待ちください。ディル様、私とも、手合わせしてくださいまし」
「えっ、あっ、はい…」
弱視が治ったクラリーちゃんが、すみれ色の瞳を真っ直ぐに向けてきた。
魔力操作はまだ身に付けてないが、火炎操作を覚えたので、無意識に炎を発することがなくなった。
もともと、かなりの腕前だったけれど、今では、Eランクの成人男性冒険者の平均より強いのでは?と思う時がある。
タリクさんが言うように、冒険者試験は簡単に通ってしまうんだろうなぁ…
「ディル様、訓練とは言え気がそぞろですと、怪我をしますよ」
「あっ、はい…」
凶戦士の職が消えたはずなのに、スピードが上がってないかな?気のせい?
未成年で、こんなことしてたら、身体に無理がかかるかな?セーブさせた方が良いのか?
ヤバい。その辺の事、考えてなかったな…
「ディル様!」
「あっ…」
とっさの事で、力加減を間違えた。
クラリーちゃんの体勢を崩して飛ばしてしまったが、猫のようにクルンと回転し無事着地した。
リョウが慌てて駆け寄り声をかける。そして、ジト目でこちらを見て…
「ディル、大人気ない」
ですね…反省。
「ごめんなさい」
俺は、二人に近づいて頭を下げる。
「ディル様、手合わせしているのに、考え事をするなんて、ヒドイです。何を考えていたのですか?」
クラリーちゃんが、頬を膨らまして怒りだす。
「えーと、クラリーちゃんのスピードが、また、上がったように感じたから、身体に負担にならないのかな?と…成人するまで、セーブした方が良いのかどうかと…」
「まぁ~、私の事を心配してくださっていたのですね。嬉しいです」
そして、俺に抱きついてきた。
「クラリーズルい」
駆け寄ってきたクミンちゃんも、何故か抱きついてくる。
その後ろで『クミンは、関係ないでしょ』とクミンちゃんの服の裾を咥えて引っ張るミンテとココ。
「ズルい」
リョウがまた呟いてる。
なんだかなぁ…
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