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冒険の始まり
ハバー大陸一周の旅 18
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トガレーの山脈地帯で、依頼が出ていた薬草採取をしながら、山道を登っていると、少し開けた岩場に出たので、一休み。
採取したものの中から何種類か取り出し、お茶にして、手渡したのだが、リョウの様子がおかしい。
「リョウ、どうした?飲まないのか?」
「う、うん…」
器を持ったまま、皆の様子を見ている。
「どう?」
お茶を飲みながら、一度茹でてから干したこけももを摘まんでいるクラリーちゃんに問いかけた。
「どう、とは?このお茶の味ですか?」
「そう、美味しい?」
「はい、流石ディル様です。薬草の効能を最大限にいかしつつ、酸味と甘味のバランスが良いお茶になっています。疲れが取れていきますよ」
ちょっとテレるが、クラリーちゃんの感想を聞いたリョウが、やっとお茶に口をつけた。
「あっ、本当だ。もっと青臭くて、飲みにくいと思ったのに…」
「何気に、酷いこと言うね」
「あっ、ごめん。だって、作り方見てたら、ニホンで雑草として捨ててたものを入れてたから…」
「薬草として、使ってなかったのか?」
「うん、今日、教えてもらったのは、ほとんど雑草として捨ててたよ。薬草だなんて知らなかった」
「捨てる程とは…ニホンはそんなに豊富にあるのだな」
「い、いや、そうじゃなくて、多分、皆知らないのだと思う…じいちゃんは、オオバコとかせき止めだからとか言ってお茶にして飲んだりしてたし、ばあちゃんも、いろいろ使えるからって取って、干したりしてたけど、お店で薬買った方が楽なのになぁ。って、思ってた…」
「薬を買うにしても、材料を持ち込んだ方が安く手にはいるだろ?違うのか?」
「うん。材料とか知らないよ。お店に行けば沢山並んでるし、病院行けば、症状に合ったもの出してくれるから…あっ、でも、こっちみたいな鑑定はないから、アレルギー反応が出たりする人もいたよ」
「?」
「症状に合った薬なのに、アレルギーが出る?どうしてだ?」
リョウの言葉にクラリーちゃんと一緒に首を傾げると、リョウが、唸りだした。
「えーとね。お腹が痛いから、薬を買いに行くでしょ。そして、その痛みには、この薬が聞きますって言われて、それを飲むんだけど、その薬の中に、自分に合わない物があるかどうかは、飲んでみないと分からないから」
「痛み止めの効能がある薬草の中でも、自分に合う物を探すのに、鑑定ではなく、試さないとダメということか?」
「うん、一応、アレルギー検査とかあるけど、ここみたいに、はっきり出る訳じゃないし、体調によって、出たりもするって言ってたよ」
「体調?体質ではなく?」
「うん、めんえき力っていうのが、下がると身体の中で悪さするモノをおさえられなくなるんだって、言ってた」
「何やら、難しいなぁ」
「うん。ここみたいに鑑定して、これは、ダメですよって、ハッキリ出てくれれば楽なのにね。そうすれば、実験動物もいなくていいのに…」
確か、リョウの両親は実験動物の飼育員と言っていなかったか?薬の効能を調べるために使われるとかなんとか…ああ、そうか、鑑定がないから、実験して調べていくのか、一つ一つ?うわっ、根気のいる作業だな…
「魔族が魔術開発するときに用いられる動物も、実験動物と言われていますが、リョウ様が居た世界では、魔術は無かったのですよね?リョウ様の居た世界では、どんな役割が合ったのですか?」
「えっ、この世界にも、実験動物がいるの?」
「クラリーちゃん、リョウが居た世界では、魔術がないから、薬草とかの効能を観るために使われていたようだよ。それから、リョウには、残念かもしれないけど、効能を観るという点では、魔術も同じで、生物に関してどういう影響があるか調べるために、魔術があっても、実験動物はいるよ」
「やはり、生き物に対して行うものは、なにかしら犠牲が出てしまうのですね…」
「…そうなんだ」
昨日に引き続き、少し重い空気になってしまった。
『そう言えば、シス様がリョウ様が使っていた『クリーン』の魔術を不思議に思っておいででした』
『それは、どうして?』
『何でも、転異者の中で、身体の汚れを落とす為に、水魔法ではなく、同じ『クリーン』という魔術を創り使った結果、体調を崩してしまい、中には命の危険な者まで居たそうです』
『鑑定では?』
『先程、リョウ様が言っていた『めんえきりょく低下や消化不良』と出ていたということです。数年前に転異者の中に医療関連の仕事をしていた者が現れて、イメージの仕方を指導した結果、最近では出なくなりましたが、リョウ様は、指導を受けてないですよね?』
そう言えば、食事前にリョウが、土汚れを消してくれた時に、シスが何やら呟いていたな。
「リョウ、バレンから質問なんだが、リョウが使う『クリーン』の魔術は体調不良が出ないのはどうしてなんだ?」
「え?クリーンで、体調不良?どういうこと?」
「転異者の中で、リョウと同じ『クリーン』の魔術を創り使った人がいたそうなんだが、体調不良が出て大変だったらしい。それで、鑑定した結果、さっき、リョウが言っていた『めんえきりょく』低下や、消化不良と出たらしいんだ」
「ああ、何となくは分かるけど…ちゃんと、説明出来るかな?えーとね、魔術はイメージが大事って言っていたでしょ」
「そうだな。ちゃんとイメージしないと、精霊達がどう動いて良いのか分からないからな」
「そう、だから、僕の場合は『身体の表面に新たに付いた汚れなんかを取る』って、いう感じで魔術を創ったの、着ているもの込みでね。でも、その体調不良になった人は、制限なしで使って、身体に必要な菌までなくしてしまったんだと思う」
「『きん』って、前にも言っていたよな。それがあるから、ペットが飼えなかったと言っていたな」
「そう、えーと、菌っていうは…ごめんなさい、ちゃんと説明できないけど、こっちの精霊みたいに周りにいるもので、身体の中にもいるんだ。それでその菌がなくなると消化機能がおかしくなって、下したりするって、母さんが話してた」
「ああ、何となく分かる。精霊と一緒に俺達を助けてくれてるモース族の仲間だろ。成る程、クリーンで、その者達も排除してしまって体調不良になったのか」
『成る程、その様な理由だったのですね。その者の存在を、リョウ様は、すでに知っていたので、身体に負担をかけない『クリーン』が使えたのですね』
「ん?モース族…きのこ!そう、そうだよ。え?ってことは、ディルは、菌も見えてるの?」
「いや、見ることは出来ないが、精霊達と仲が良いんだ。パンやチーズ作りも手伝ってくれるのだろ?保存食作りにも手を貸してくれて助かっている…ああ、本当に精霊みたいだな」
「うん…」
採取したものの中から何種類か取り出し、お茶にして、手渡したのだが、リョウの様子がおかしい。
「リョウ、どうした?飲まないのか?」
「う、うん…」
器を持ったまま、皆の様子を見ている。
「どう?」
お茶を飲みながら、一度茹でてから干したこけももを摘まんでいるクラリーちゃんに問いかけた。
「どう、とは?このお茶の味ですか?」
「そう、美味しい?」
「はい、流石ディル様です。薬草の効能を最大限にいかしつつ、酸味と甘味のバランスが良いお茶になっています。疲れが取れていきますよ」
ちょっとテレるが、クラリーちゃんの感想を聞いたリョウが、やっとお茶に口をつけた。
「あっ、本当だ。もっと青臭くて、飲みにくいと思ったのに…」
「何気に、酷いこと言うね」
「あっ、ごめん。だって、作り方見てたら、ニホンで雑草として捨ててたものを入れてたから…」
「薬草として、使ってなかったのか?」
「うん、今日、教えてもらったのは、ほとんど雑草として捨ててたよ。薬草だなんて知らなかった」
「捨てる程とは…ニホンはそんなに豊富にあるのだな」
「い、いや、そうじゃなくて、多分、皆知らないのだと思う…じいちゃんは、オオバコとかせき止めだからとか言ってお茶にして飲んだりしてたし、ばあちゃんも、いろいろ使えるからって取って、干したりしてたけど、お店で薬買った方が楽なのになぁ。って、思ってた…」
「薬を買うにしても、材料を持ち込んだ方が安く手にはいるだろ?違うのか?」
「うん。材料とか知らないよ。お店に行けば沢山並んでるし、病院行けば、症状に合ったもの出してくれるから…あっ、でも、こっちみたいな鑑定はないから、アレルギー反応が出たりする人もいたよ」
「?」
「症状に合った薬なのに、アレルギーが出る?どうしてだ?」
リョウの言葉にクラリーちゃんと一緒に首を傾げると、リョウが、唸りだした。
「えーとね。お腹が痛いから、薬を買いに行くでしょ。そして、その痛みには、この薬が聞きますって言われて、それを飲むんだけど、その薬の中に、自分に合わない物があるかどうかは、飲んでみないと分からないから」
「痛み止めの効能がある薬草の中でも、自分に合う物を探すのに、鑑定ではなく、試さないとダメということか?」
「うん、一応、アレルギー検査とかあるけど、ここみたいに、はっきり出る訳じゃないし、体調によって、出たりもするって言ってたよ」
「体調?体質ではなく?」
「うん、めんえき力っていうのが、下がると身体の中で悪さするモノをおさえられなくなるんだって、言ってた」
「何やら、難しいなぁ」
「うん。ここみたいに鑑定して、これは、ダメですよって、ハッキリ出てくれれば楽なのにね。そうすれば、実験動物もいなくていいのに…」
確か、リョウの両親は実験動物の飼育員と言っていなかったか?薬の効能を調べるために使われるとかなんとか…ああ、そうか、鑑定がないから、実験して調べていくのか、一つ一つ?うわっ、根気のいる作業だな…
「魔族が魔術開発するときに用いられる動物も、実験動物と言われていますが、リョウ様が居た世界では、魔術は無かったのですよね?リョウ様の居た世界では、どんな役割が合ったのですか?」
「えっ、この世界にも、実験動物がいるの?」
「クラリーちゃん、リョウが居た世界では、魔術がないから、薬草とかの効能を観るために使われていたようだよ。それから、リョウには、残念かもしれないけど、効能を観るという点では、魔術も同じで、生物に関してどういう影響があるか調べるために、魔術があっても、実験動物はいるよ」
「やはり、生き物に対して行うものは、なにかしら犠牲が出てしまうのですね…」
「…そうなんだ」
昨日に引き続き、少し重い空気になってしまった。
『そう言えば、シス様がリョウ様が使っていた『クリーン』の魔術を不思議に思っておいででした』
『それは、どうして?』
『何でも、転異者の中で、身体の汚れを落とす為に、水魔法ではなく、同じ『クリーン』という魔術を創り使った結果、体調を崩してしまい、中には命の危険な者まで居たそうです』
『鑑定では?』
『先程、リョウ様が言っていた『めんえきりょく低下や消化不良』と出ていたということです。数年前に転異者の中に医療関連の仕事をしていた者が現れて、イメージの仕方を指導した結果、最近では出なくなりましたが、リョウ様は、指導を受けてないですよね?』
そう言えば、食事前にリョウが、土汚れを消してくれた時に、シスが何やら呟いていたな。
「リョウ、バレンから質問なんだが、リョウが使う『クリーン』の魔術は体調不良が出ないのはどうしてなんだ?」
「え?クリーンで、体調不良?どういうこと?」
「転異者の中で、リョウと同じ『クリーン』の魔術を創り使った人がいたそうなんだが、体調不良が出て大変だったらしい。それで、鑑定した結果、さっき、リョウが言っていた『めんえきりょく』低下や、消化不良と出たらしいんだ」
「ああ、何となくは分かるけど…ちゃんと、説明出来るかな?えーとね、魔術はイメージが大事って言っていたでしょ」
「そうだな。ちゃんとイメージしないと、精霊達がどう動いて良いのか分からないからな」
「そう、だから、僕の場合は『身体の表面に新たに付いた汚れなんかを取る』って、いう感じで魔術を創ったの、着ているもの込みでね。でも、その体調不良になった人は、制限なしで使って、身体に必要な菌までなくしてしまったんだと思う」
「『きん』って、前にも言っていたよな。それがあるから、ペットが飼えなかったと言っていたな」
「そう、えーと、菌っていうは…ごめんなさい、ちゃんと説明できないけど、こっちの精霊みたいに周りにいるもので、身体の中にもいるんだ。それでその菌がなくなると消化機能がおかしくなって、下したりするって、母さんが話してた」
「ああ、何となく分かる。精霊と一緒に俺達を助けてくれてるモース族の仲間だろ。成る程、クリーンで、その者達も排除してしまって体調不良になったのか」
『成る程、その様な理由だったのですね。その者の存在を、リョウ様は、すでに知っていたので、身体に負担をかけない『クリーン』が使えたのですね』
「ん?モース族…きのこ!そう、そうだよ。え?ってことは、ディルは、菌も見えてるの?」
「いや、見ることは出来ないが、精霊達と仲が良いんだ。パンやチーズ作りも手伝ってくれるのだろ?保存食作りにも手を貸してくれて助かっている…ああ、本当に精霊みたいだな」
「うん…」
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