異世界人拾っちゃいました…

kaoru

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冒険の始まり

ハバー大陸一周の旅 52

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 じぃーと、ユキと見つめ合う。すると、ピクンと、ユキが背筋を伸ばした。

「女王様も食べたいそうです。ディル、作って下さい!」

 突然ユキが、元に戻った。

「え?それって、お城に行って調理するということ?」

「ハイです。スープもケーキも食べたいそうです。あと、ディルを使った串焼きに、疲れがとれるお茶も飲みたいそうです。食べ終わったら、ユキが案内するので、お城まで行くです!」

 暴走してるところにどうやって乗り込もうかと、考えていたが…すんなり、招待されてしまった。

「な、なんと…雪の女王の暴走が止まった…だと、しかも、女王自ら、お前を招待?」

 俺も驚いたが、じいちゃんは尚更だ。
 そうか、ユキの不安定な状態は、雪の女王の気持ちとリンクしていたからだ。
 だから、ユキを落ち着かせ、今の俺の状態を見せたわけか…リョウ達の方が一枚上手だな。

「あのう、ディル様に、私達が付いていってはいけないのでしょうか?」

「ん?お主達も行きたいのか?」

「ええ、パーティー仲間として、お手伝いしますので」

「ふーむ」

「ディルだって、一人で作るより、助手がいた方が良いでしょ?」

「ま、まぁな…」

 素直に同意しても良いのか?

「あれ?なんか、警戒してない?」

「い、いや、助手というのは、聞こえがいいが、何か、他の目的を隠してないか?」

「なぬ?そうなのか?な、なんじゃ、何を企んでおる」

 おい、最高神が、それでいいのか?

「たくらむなんて、ヒドイなぁ…」

「そうですわね…ただ…」

 ほら、やっぱり!

「ただ?」

「モンディール様が言ってたじゃん。今なら、雪ん子がわちゃわちゃ居るって」

「ユキちゃんもかわいいですし、妹のハナちゃんも可愛かったので…」

 リョウとクラリーちゃんが、目線で話ながら、俺を見上げてきた。

「はぁ…なんだ。そういう事か…焦らせるなよ」

「ん?ん?何がだ?女王が創った新種の魔獣がどうかしたのか?」

 じいちゃんは、どうやら分からないらしい。

「どうやら、大勢の雪ん子達と遊びたいようです。リョウ達への依頼は、その後でも良いですか?」

「はぁ?遊ぶ?雪の女王の城に遊びに行きたいと言うのか?」

「そうだよ。お城も雪や氷で出来ているんでしょう。きっと、メチャクチャ綺麗だよね」

「ユキちゃんが、雪の女王様のお母様がシス様の様に綺麗だと話していたので、雪の女王も、お綺麗な方ですよね?会ってみたいです」

「それで、雪ん子に囲まれたいと、いうことだな」

「「そういうこと(です)」」

 笑顔で、声を揃えて言うリョウとクラリーちゃんを驚きの表情で見ていたじいちゃんが、俺に詰め寄って来た。

「なんだ?この子らは、遊びに行くなど正気か?雪の女王の城だぞ。人嫌いで有名で、近づく者を凍らせて命を奪うという…」

 ちょっと待て!

「おい、最高神!そんな事、初めて聞いたぞ。しかも、暴走して、危険度マックスだったんじゃないのか?そんなところに、俺を送り出そうとしたのか?」

「い、いや、だからだろう。ユキは元々、雪の女王の眷族だし、バレンは、まだ肉体を持っておらぬ。お前は、まぁ…モンディールと仲が良いし…殺しても死なんじゃろう?」

「何故、疑問系なんだ?」

「ワシらでも、お前は計れんのじゃ。だから、まぁ、賭けだった訳だ。まさか、エンプ大陸に行かず暴走を止める手があったとは驚きじゃ」

 このじいさん、本当に、知識の神なのか?こういう時に、知識をいかせないでどうするんだよ。

「はいはい、リョウ達の機転のお陰で、女王自ら招待してくれたんだから、大丈夫だよな。ユキ、俺達パーティーが全員行っていいか、聞いてくれないか?」

「喜んで招待するそうです。雪ん子も楽しみに待ってるそうです!」

 うわ、即答かい。

「だそうだよ。食べ終わったら、皆で向かうって事でいいね」

「うむ、そうじゃな。そうしてくれ、その間に、リョウ達への頼み事の用意をしておくでな」

「それなら、じいちゃんも、座って食べなよ」

「ワ、ワシもか?」

「そうだよ。はい、リョウが作ったサンド旨いよ」

「そうか、では、相伴にあずかろうかのう」

 じいちゃんは、俺の向かい側に、いそいそと腰掛け、サンドにかぶりつく。

「ほっほっ、優しい甘味で旨いのう」

「ユピロー様がくれたスイカズラで作ったジャムだよ。こんなにも、美味しいもの、沢山ありがとうございました」

「いや、ワシこそ、美味しい食事に招待してもらったのだから、礼を言わねばな。ありがとうよ」

 おお、元気に料理説明したリョウにつられ、じいちゃんが畏まって、リョウに頭を下げた。

「そういえば、じいちゃんと、こうやって食事するのって、初めてだね」

「「え?」」

 二人とも、そんな大袈裟な反応はいいから、烈震親子を見習いな。親子揃って、お椀に顔を突っ込みもくもく食べている。
 我関せずを、貫いてるな。さっきの空気感といい、逃げるのが上手そうだ。

「何でって、聞いてもいい?」

「そんな不安そうにしなくても、単にじいちゃんが天上に居るからだし、神は食事の必要ないしね」

「そうじゃな。それに、天上では時間の感覚も地上とは違うのだ。だから、ちと、目を離しただけで、孫が生まれて、成人して冒険者になっていたなんて事もあるんじゃよ」

「それ、リッジの事か?」

「う、ま、まぁ…そうかな?」

「だから、なんで、疑問系で俺達の事を話すんだよ!」

「仕方なかろう。お前達は、他の子と違い直接見ることが出来んのだ。しかも、お前の力が、仲間にも作用してしまったらしく、土砂崩れがあったところから、全く見えんようになってしまった」

「そうなのか?え?見えない?今まで、ずっと監視してたんじゃないのか?」
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