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18.繋がりを求む※
しおりを挟むルーチェの月のものが終わり、夫妻は再び寝室を共にしていた。
けれどシュトラールはルーチェを抱き締めて眠るだけで手を出さない。それがまた、ルーチェを義務さえ果たさせてくれないのか、と悩ませる。
寝室に来る時間も以前と比べて遅くなった。
閨をするのが苦痛になったのか、と思案するが、どんなに遅くなっても寝室に来るし抱き締めて眠るのは変わらない。朝、ルーチェが目覚めた時シュトラールの整った顔が視界に入るから。
リリィの中に入って初めて目覚めた時も見たその顔。当時の彼は眉間に皺を寄せ少し身動ぎすれば目を覚ましていた。
今はちょっと動いただけでは目を覚まさない。どれだけ油断しているのか、と無意識にその首に手が伸びるのをルーチェはぐっと堪えるようにして手を握った。
ルーチェが今愛しているのはシアンのはずだ。
シュトラールを見ても以前のようなときめきは無い。
苦しむ事も頭を悩ませる事も無い。
けれど、夫婦となった。
いずれ国を代表する二人になる。表面だけでも仲良くしなければならない。まるで愛し合う夫婦のように振る舞っていると本当にそうなんじゃないかと錯覚さえしてくる。
愛さなければ愛を望むことはない。
だがシュトラールを愛する気持ちは無くならないのか彼に対して何とも形容し難い思いが湧いてくる。それが何なのか、ルーチェ自身も分からない。
ルーチェは掛布の中に手を伸ばした。
シュトラールのモノが硬くそそり勃っている。寝衣の上から手を滑らせ、手のひらで弄ぶ。
眠っているシュトラールの眉が寄せられ小さな吐息が漏れた。
ルーチェはもっと、とそれを形取るように握った。先端部分から滲み出ているのか指先が少し濡れた気がした。
どのようになっているのか好奇心が湧き、寝衣の中に手を入れようとしたところで掴まれる。
「私の奥さんはイタズラ好きだったのかな」
「……っ、すみません」
手を引こうとしたが取られたまま形勢逆転し寝台に縫い止められた。
軽く口付けられ、すぐに舌を割入れられる。
掛布がはらりと寝台から落とされ、ルーチェの寝衣に擦り付けるように腰が動かされた。
「んっ……んぅ、ぅうん」
初夜から半年経過した今、何度もシュトラールに抱かれて慣らされた身体はすぐに蜜を帯びる。
相変わらずリリィの時のように頭が空っぽになるまでの激しさは無いが、丁寧に何度もルーチェを高みに導き、全てを愛し尽くすようにじっくりと時間をかけて交わる。
ルーチェはそれが物足りなく、更にシュトラールから抱かれない日々が続くと漠然とした不安も湧いてくる。それゆえシュトラールにちょっとしたイタズラを仕掛けたつもりだったが成功したようでホッとした。
しばらく口付けに集中し、軽く二度唇に触れる。薄く目を開くと瞳に情欲を宿したシュトラールと目が合い思わず反らした。その先に寝衣がはだけているのが見え、素肌に触れたくてそこから覗く尖りに指で触れるとシュトラールは肩を跳ねさせた。
「っぁっ」
慌てて身体を起こしルーチェから離れるとハッとしたように我にかえり「すまない」と寝台を降りようとしたところを寝衣の裾を掴まれた。
「ルーチェ、離してくれ。このままでは」
「貴方は義務も果たさないつもりですか?」
「なっ……」
腕を引っ張られ寝台に倒れ込んだところでルーチェが馬乗りになる。
白銀の髪がシュトラールの上半身をくすぐり思わず身じろいだ。
「以前は何も言わずとも鬱陶しいくらいに求めていたのに、ちょっと他人とセックスしていたのを見られたくらいで怖気づくのですか?」
ルーチェの言葉にぎょっとして、顔が熱くなる。
「そんな言葉、きみらしくないっ」
「私らしいって何ですか? 私の事無視して何も知らない癖に、知ったように言わないで」
ルーチェは自身のあわいに手を添え粒を刺激しながら蜜壺に指を入れ中を掻き混ぜる。
シュトラールの目の前で拡がる痴態に痛いくらいに主張しだしたものを後ろに感じ、妖艶に微笑った。
「ル……チェッ」
「ああっ! あっやぁっ」
堪らずルーチェの愛粒に指を伸ばして刺激する。
既に潤わせていたものをコーティングするように動かせばルーチェは身体を痙攣させた。
くたりとしなだれかかるようにもたれてきたルーチェの尻を持ち上げ、そそり勃つものを侵入させていく。
その刺激に気付いたルーチェが、シュトラールの耳元で囁くように喘ぎ声を漏らした。
「ふ……ぅあ……はぁ……んっんふっ」
「ルーチェ、身体を起こせる?」
角度が悪いのか上手く入らず、くちくちと音だけが響く。ルーチェはふるふると顔を振り、けれど快楽を得られないのか無意識に手探りでイイトコロを探すように腰を揺らした。
もどかしくなったシュトラールはルーチェを片手で抱き寄せながら上体を起こした。
「あぁああんっ!」
入口だけを攻めていたモノが一気に突き刺さりルーチェは悲鳴を上げた。と同時に視界が明滅しきゅうっと収縮させる。
「ごめっ! 痛かっただろう? ……っ」
労りながら、ルーチェから与えられる刺激に吐精しそうになったのを耐えた。ぎゅうっとルーチェを抱き締め、刺激を逃がすように息を長く吐く。
そんなシュトラールの葛藤を知らずにか、ルーチェは口付けた。
「ルーチェっ、ちょっと、待っ……」
「私では……ダメなのですか?」
か細く呟くような声にシュトラールはぴくりとした。
「私では、何度も求められませんか?
私では、すぐに萎えてしまいますか……?」
あけすけな言葉に驚き、ハッとなる。
ルーチェはあの時の事を言っているのだろうと容易に想像できた。
何度も貪るように交わっていた。
一度出しただけでは飽き足らず、出し尽くすまで何度でも交わった。
リリィの身体に無数の痕を付け、それでも満たされず呆れるくらい溺れていた。
そんな肉欲に支配された行為を愛と呼べなかった。
だからルーチェには優しく接し一度の吐精で終わっていた。
「ルーチェ、私はそなたを愛している」
「でしたらっ! どうして一度で終わるのですか。あの時は一度だけでは足りないと言っていました。あの後も特別室で何度も……」
「ルーチェ!」
「んああっ」
言葉を遮るように突き上げられ、腹の奥がきゅんと収縮する。もっとして欲しい。リリィにするように激しく突いて欲しい。溜まった熱を解放してほしい。
「ルーチェは大事にしたい」
「んっんぅっ」
「もっと求めてもいいなら何度でもする」
「はあっああっんっふぅうあぁっ」
下から突き上げ、ルーチェもそれに合わせて腰を揺らす。突かれる度奥を圧迫して苦しいのにもっとほしくなる。
揺れる乳房にむしゃぶりつきながら尻を持ち上げては落とし自重で奥を蹂躙する。
「ルーチェ、どうしたら伝わる……っ」
「いやぁっ! ああっ、はぁっやっ、ふぅんんぅっ」
「教えてくれ、ルーチェ……」
「ひぁっああっ! あぁっはぁっふぅうっ」
ガクガクと揺れ、足はがっちりとホールドし足の爪先が開いていく。涙が零れ切ない疼きが満たしていく。けれどまだ足りない。リリィのときはこんなものじゃなかった。
愛されていたリリィのときは。
「貴方は私を愛していない。あの時は散々愛していると言いながら何度だって奥にくれたのに」
「あの時……?」
「違うもの。私とリリィ様の時と、貴方の求め方が違うもの……」
こんなに乱されても心が渇く。
何度されても虚しくなる。
「貴方はいつか、私だけでは満たされなくなる」
「ルーチェ……」
「貴方は私以外で愛を知ってしまった。また裏切られるのはもう沢山なのよ」
シュトラールはルーチェに口付け押し倒した。
もう二度と裏切るような真似はしないと誓っているのに信じてもらえず歯痒い気持ちをルーチェにぶつける。
ただ性欲だけを満たすものが愛だと言うならルーチェの身体を蹂躙する。
それだけでルーチェが喜ぶなら何度でも注いでやる。
その日シュトラールはルーチェを思う存分に貪った。
今までのような優しさも労りも無い、ただ蹂躙するだけの獣のような行為。
それで伝わるならば手酷く抱いてやる。
啼かせて狂わせてもう無理だと言われても収まりつくまで堪能した。
途中トラウが執務だと呼びに来たが全て無視した。
疲れて寝ては起きて貫き、逃げようとするルーチェを抱き締めては無数の痕を付け。
全てが終わった時には翌日の昼頃になっていた。
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