【完結】あなたの愛を知ってしまった【R18】

凛蓮月

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39.恋人たちの戯れ★

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 ルーチェの本心を知ったシュトラールは、今後どうすべきか思考の渦に陥っていた。
 公務以外ではルーチェと顔を合わせる事も無く、無為な時間が過ぎて行く。
 結局ルフトが生まれてから一度も共寝をしないまま二年が経過した。

 大臣たちは後継のスペアの矢の催促。
 ルーチェから送られてくる側室候補の姿絵を見る事も無くただ黙々と執務をこなす日々。
 自分が王太子である意味も見い出せず、シュトラールの心は常に渇いたままだった。

「そろそろ側室を決めてほしいと妃殿下から催促がありました」

 トラウから言われチラリと見て、再び書類に目を移す。

「見ての通り、私は忙しい。女の相手をしている暇など無い」
「執務は調整致しますのでご検討を」

 トラウから姿絵を差し出され、ペンを置いて溜め息を吐いた。

「トラウ、私はまるで種馬のようだな」

 ぽつりとつぶやいた言葉にトラウは無表情で続きを促した。

「大臣たちから次子をと催促をされ、しかし妃は愛人に夢中。挙句他の女性と子作りをしろと言われる始末。時折何故ここにいるのか分からなくなる」

 無味乾燥した日々はシュトラールの心を蝕んでいく。
 こんなはずではなかった。
 結婚してからルーチェと向き合い、幸せな夫婦となり愛し合い子を授かり、お互いに一途に思い合い手を取り合う事がシュトラールの中で描かれた未来だった。
 それがいつしかルーチェ一人だけに縛られる事を煩わしく思い、リリィに溺れてしまった。
 結婚してから向き合う事だけが頭に残り、ルーチェを蔑ろにしてしまった。
 それでも結婚前にリリィとは別れ、ルーチェだけを妻として軌道修正したはずが、リリィと再会すれば気持ちは簡単に揺らぎ結局ルーチェから見切りをつけられてしまった。

 公務で仲良し夫婦を演じているが、人の目を避ければ触れ合う事すらできない仮面夫婦となり、側室を迎えると言ってもむしろ推奨されてしまう始末。
 もうどうすればルーチェの愛を得られるのか分からず、シュトラールは悶々とした日々を過ごしている。

「過去があり今があるのです。もう諦めて側室を迎えてはいかがですか。妃殿下も愛する人とようやく結ばれて今が一番幸せな時でしょう?」

 トラウの言葉が容赦なく剣となってシュトラールにぐさりと刺さる。
 ルーチェの愛する人が自分ではないという現実が頭では分かっていても受け入れられない。
 魔女から聞いた話で、ルーチェは無理矢理思いを変えられたのではなく、真にシアンに思いを寄せている事が分かり、それが希望すらも打ち砕いた。

「もう……いやだ。ルフトがいるからいいではないか……」

 夫婦なのに通じ合えない思いはシュトラールを苦しめる。それでもそばにいたいと願ったのはシュトラールだが、持ち前の独占欲の強さが自身を苛んでしまう。
 ルーチェの幸せを願えない狭量さ、割り切って他の女性ではだめな自分が滑稽で笑えてきさえする。
 愛しているなら相手を思いやり幸せを願えばいいのに。シアンはそれができるのに、と器の違いを見せつけられたようで悔しかった。

「ちょっと気分転換してくる」

 落ち込んだ主の後ろ姿を見送ったトラウは盛大な溜め息を吐いた。
 ルーチェからの言葉がなければ今頃退職していたとボヤきながら。


 王城の廊下を歩きながらシュトラールは重苦しい空気を背負っていた。
 何度も過去を振り返っては後悔ばかりが押し寄せる。
 リリィに心を奪われなければ、いや、奪われてもルーチェを大切にしていれば今以上仲良くなれていただろうか、と。
 一番はルーチェを愛していると伝えていれば、と考えて頭を振る。

「一番とか二番とか、順番がある方がおかしいじゃないか」

 ルーチェだけを唯一の妻として慈しめばきっと今でも仲睦まじい夫婦となれただろう。
 そろそろルフトに兄弟姉妹を、今度は女の子がいい、いや、また男の子でなければならない、女の子なら三人目を、と他愛もない話をしていただろうか。
 ありえたかもしれない妄想をしては泡沫のように消えていく。
 全ては愛していると言いながら他の女性にもいい顔をしていた自分が悪いのだと分かっているのに。

「ルーチェはいるかな」

 ルーチェの執務室に来て所在を尋ねると答えは否だった。

「王太子妃殿下は王妃殿下の温室へ行かれました」
「母上の?」

 王妃の温室は許可無き者は入れない。例え国王であっても、実の息子であってもだ。
 その場所にルーチェが行ったという事は王妃の許可を得たから。いつでも使用して良いと許可を得た為ルーチェのお気に入りの場所になっていた。
 ちなみにシュトラールは幼い頃王妃に招待されて行ったきりだ。
 ルーチェがそこにいるのに、自分は誘われていない事に胸が痛んだ。

 その後ルフトの様子を見に行くがちょうど昼寝をしたところで起こすのも憚られ、仕方なく退室した。
 そのまま戻る気にもなれずに足は温室へと向かう。

 温室の出入り口には騎士が立っていて、訪問してきたシュトラールを見てギョッとした。

「王太子殿下!? どうされたのですか?」
「ルーチェがここにいると聞いた。一緒に茶でも、と思ってな。ここにいるんだろう?」
「はぁ……。いらっしゃいますが……その」

 歯切れの悪い言葉に嫌な予感がして制止も聞かずに奥へ進む。
 シュトラールはルーチェの夫である。
 その夫を誘わず無言でここにいる。
 誰かを伴い人に言えないような事をしているのではないのか、と逸る心臓を押さえながら奥へと近付いた。

 辺りには王妃お気に入りの花が咲き乱れ陽光に照らされていた。
 静謐な空間に足を止め、シュトラールはらしくない事をしている、とルーチェを探す。
 視界の端に映る背の高い花の向こうで影が動いた気がして立ち止まる。
 その影は二つに重なり、くぐもった声を届けてきた。
 霞む視界を凝らしてみれば、立ったままルーチェは背中を向け片足を支えられながら腰を揺らしている。

「ああっ、ダメ、シアン、もう……もう、イク……」
「ルーチェ今日は早いな。誰か見てるかもしれないから?」
「ああっ! はあっ……や……ぅ、うぅ……」
「ほら、ここをこうすると……」
「ひ……きゃああああっ! ああっ! だめっ、だめっ……ぇっ……」

 ぷしゃっと音がしてルーチェの足元を濡らす。
 ガクガクと震える足を何とか支えられながらルーチェは羞恥で泣き出した。涙を口付けで吸い取りながら、シアンはルーチェへの愛撫を止めない。

「シアン、まっ、てイッたの、イッたばかりで……ああっ」
「イクの好きだよな。もう一回イッとこうか」
「ひああっ! シアンの意地悪!」
「好きだろう?」

 耳元で囁かれ、顔を赤らめながら悶えるルーチェは涙目を堪えながらシアンを睨み付けた。
 そんな仕草に煽られて、我慢の限界にきたのか、そのまま一気に貫いた。

「いっ……ああああああん!」

 再びぷしっぷしっと飛び散るが、快楽に支配されたルーチェは頭の中が真っ白になってガクガクと震えるだけ。

「ルーチェは気持ちいいの好きだね」
「あ……あ……」
「夫がいるのにね?」

 瞬間、きゅっとシアンを締め付ける。

「いくら王妃殿下からここを逢瀬の場所にしていいと言われても、こんなところでされて感じる変態だね」
「や……ひっ……」

 中を掻き出すようにゆっくりと引いては奥を掠めるくらいに優しく挿れられ、否定したいのに言葉にならない。
 激しく突いて欲しいのに中を擦るだけで物足りない。欲しくて堪らずドロドロと期待する液だけが溢れてくる。

「だっ、て……殿下は誘いもしないわ。側室を娶るならそっちでいいじゃない。私も抱かれるならシアンがいい。殿下より気持ちいいの」

 だからお願い、と上目遣いに見れば余裕の顔のシアンは色気を纏いルーチェの背中を支えて壁に押し付けた。

「ルーチェ、それはだめだ。きみは殿下と子を作らなければならない。その地位を確立しなければ離ればなれになってしまうかもしれない」
「いや……シアンと離れるなんて嫌よ……」

 ルーチェの中ではもうシュトラールへのものよりもシアンに思いが傾いてしまった。
 政略結婚をしたのだから夫と子を為すのは当然なのだが感情は拒絶する。
 二度と抜け出せない泥濘に溺れるようにルーチェは快楽を追い求めた。

 温室の壁はガラス張りで、立ち尽くしたままのシュトラールからは二人がよく見えた。
 ルーチェ越しにシアンと目が合い嘲笑された気がしたが縫い止められたように動けない。

 するとシアンはルーチェの身体をひっくり返し、片手で目を覆った。

「えっ? あっ……」
「ルーチェ、ガラス張りの向こうで誰か見てるかも」

 ゾクゾク、として再び蜜壺がきゅっと締まる。

「王太子妃殿下が昼間から淫らな行為をしてるって噂になるかも」
「や……だめ……」

 顔色を変えながら不安になってきたルーチェだが、シアンを締め付けるのは変わらない。

「誰も知らないルーチェの裏の顔を知ってしまった誰かはどうするだろうね」
「あ……あ……」
「なんてね。ここは許可無しでは入れない。今は二人きりだよ」

 ちゅ、と安心させるように口付けると、シアンはルーチェの腰を掴み激しく突き始めた。
 視界を塞がれたままのルーチェは何をされているのか分からないまま壁に手を突き喘ぐだけ。
 揺れる乳房を壁に押し付け、こすれる度乳首からも感じて頭の中が真っ白になる。掴まれる物が無いから壁に付けた手も何度もずり落ちて力が入らない。

「シアン……だめっ、も、もたない、気持ちいいのやっ……」
「大丈夫」
「シアン、お願い顔見たいの」

 シアンはチラリと目をずらす。
 そこには未だ立ち尽くしたまま呆然とただ涙を流す男がいた。
 妻を寝取られ惨めな姿で、股間だけははちきれんばかりにトラウザーズを押し上げている。
 押し入る事も逃げる事もできない男にこれ以上ルーチェの姿を見せるのはしのびないと、シアンはルーチェをひっくり返した。

 ルーチェはすぐにシアンの首に腕を回し胸を口元に押し付ける。
 片足は逃すまいとして腰に巻き付け次をねだっているようだった。

「愛しているよ、ルーチェ」
「私も……私も、愛しているわ、シアン」

 愛を確かめ合い深く口付ける。
 ルーチェの全てを愛撫しながら二人は高みに昇り詰めた。

「シアン、まだ、足りない……」
「まだするのか?」
「一回じゃ足りない。もっとしたい。貴方を感じたいの」

 口付けをねだりながらルーチェは抱擁を解かない。シアンはそれに応えるように揺すり始める。
 甘い恋人たちの睦言を聞きながら、シュトラールは抜け殻になったかのようにただ呆然としていた。
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