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Chapter.2 ラットヴィル編
Episode.13 善か悪か
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あの後、俺達はウォレスさんをバレない様に追跡して森の中にある洞穴へ入って行くのを目撃した。
「あんたももう気付いていると思うけど、あそこに入ったらゴーレムを動かしているものが何なのか分かるはずよ」
フィオのその発言に一旦進むのを止め、横にいる彼女に視線を向ける。
「ああ、分かってる」
ゴーレムを動かす動力、つまり何によって魔力が生み出されているのかが判明するという訳だ。
本音を言ってしまえば大方もう予想はついている、ただ俺はそれを自分の目で見て確かめないといけない。
何故なら、俺はコニーを励ます為に無責任な事を言ってしまったからである。
彼女に伝えるか否かは決められないが自分だけは事件の真相について知っておこう、そう思ったのだ。
「本当に行くのね?」
「ああ、覚悟は出来ている」
その俺の言葉を合図に、俺達はウォレスさんが入って行った洞穴へ足を踏み入れた。
Episode.13 善か悪か
洞穴の中は、やはり人がいるので松明で明るく照らされていた。
洞穴なので話すと声が響く都合上、俺達は気付かれない様に無言で奥へ進む。
そして、奥の開けた広間の様な場所へ辿り着くと通路から中を確認する。
中にはウォレスさんとゴーレムがおり、奥には意識のない成人男性が横たわっていた。
死体にしか見えない男性の姿を目撃し、思わず叫びたくなるが必死に堪えて中の観察を続ける。
気付いていないウォレスさんはゴーレムから胸の鉱石を取り外し、今度は横たわっている男性の元へそれを近付けた。
すると、男性の体から赤い炎の様なものが発せられ、鉱石にそれが吸収されていく光景を目の当たりにする。
そこで俺は今日フィオが言っていた事を思い出していた。
魔力は休息をとれば一日で僅かだが回復する、ただその量では巨大なゴーレムを動かす事は出来ない。
なら、どうするか? 簡単だ。
人一人の生命力を全て魔力に変換してしまえば良い。
人の寿命が生命力という事なら、それを全て消費して魔力にすれば膨大な量が得られるはずである。
それこそ巨大なゴーレムを動かして村の守護者に据える事も容易だろう。
選ばれた人が死ぬという前提での話だが……
「うっ」
予想していた事とは言え、救いのない事実に俺はショックを受けて呻く様な声をあげる。
「おや、誰かいるんですか?」
その声にウォレスさんが気付き、俺達が隠れているのがバレてしまう。
「悪いわね、尾けさせてもらったわ」
バレた原因である俺を手で小突いた後、フィオは先に通路から広間へと姿を見せる。
「貴方はフィオさん?」
「すみません、俺もいます」
少し驚いているウォレスさんの前へ俺も覚悟を決めて飛び出す。
「ロストさんもですか、あまり知られたくはなかったんですが……」
複雑な表情を浮かべるウォレスさんに俺達は謝罪し、失踪事件の真相について聞く事になった。
ウォレスさんは十年前まで王都でゴーレムを研究していた人間で研究成果が出ず、王都を追放されたらしい。
その後、ラットヴィルに辿り着いて子供達に読み書きを教える教師を始めたんだそうだ。
だが、村人が瘴魔に襲われて亡くなる事件が多発した。
元々ラットヴィルは他の村に比べて瘴魔の出現が多い村で毎年犠牲者が絶えなかったんだそうだ。
そんな事件が続き、ウォレスさんは次第に自分の研究が村の為になるんじゃないかと考え始めた。
しかし、魔力の問題で躓き、諦めようとしたが村長や村人達が彼の研究を理解して村を守る為ならと全面的に協力してくれる様になったんだとか。
初めは年老いた老人が犠牲になり、次は息子や村の為ならと自ら買って出た優しい女性が選ばれた。
そして、三度目の犠牲者がコニーの父親であるブレットさんだったという訳だ。
ちなみに三年に一度犠牲者が選ばれるのは、ウォレスさんの研究が完成しておらず、人から魔力を上手く吸収する事が出来ないからである。
「ロストさん、私は間違っていたんでしょうか?」
一頻りの経緯と説明を終え、ウォレスさんは真剣な表情で尋ねてきた。
「…………」
でも、それは俺如きが簡単に答えていい問題とは思えなかった。
「初めは私も葛藤しました、人の命を奪ってまでする必要があるのかと」
それはそうだろう、俺が今感じている事をウォレスさんは何年も前から感じていたはずだ。
「でも、ゴーレムを完成させてから村内の瘴魔からの被害が減ったのは事実なんです」
自分達の命は自分達で守るしかない、ウォレスさんが昼間に言っていた言葉を思い出す。
「だから、私は……」
「…………」
言葉が出てこない、確かに見方によってはウォレスさんのやった行為は許されない事だろう。
ブレットさんや他二人の村人が犠牲になった、この事実は変えられないからだ。
でも、その行為を間違いであると単純に糾弾するのも違うと思ってしまう。
結局、俺一人が決めていい問題じゃないのだ。
「ロスト、あんたどうするの?」
黙っていたフィオが俺に尋ねてくる、村人を犠牲にしたウォレスさんの処遇についてだろう。
「俺は……」
即答出来ずに悶々とする時間が続く、不甲斐ない自分を呪いたくなった。
「ロストさん、貴方が決めて下さい」
「え?」
答えを出せずにいた俺にウォレスさんもまた結論を出す様に求めてくる。
「貴方が間違いだと言うのなら、私は王都に行き罪を償います」
「貴方が正しいと言うのなら、私はここで研究を続けます」
思えばこの村に来てから俺は、目の前の事象に結論を出す事を避けていた気がする。
そのツケが今ここで回ってきたのかもしれない。
俺は真剣に悩んだ後、そのウォレスさんの問いに結論を出した。
「あんたももう気付いていると思うけど、あそこに入ったらゴーレムを動かしているものが何なのか分かるはずよ」
フィオのその発言に一旦進むのを止め、横にいる彼女に視線を向ける。
「ああ、分かってる」
ゴーレムを動かす動力、つまり何によって魔力が生み出されているのかが判明するという訳だ。
本音を言ってしまえば大方もう予想はついている、ただ俺はそれを自分の目で見て確かめないといけない。
何故なら、俺はコニーを励ます為に無責任な事を言ってしまったからである。
彼女に伝えるか否かは決められないが自分だけは事件の真相について知っておこう、そう思ったのだ。
「本当に行くのね?」
「ああ、覚悟は出来ている」
その俺の言葉を合図に、俺達はウォレスさんが入って行った洞穴へ足を踏み入れた。
Episode.13 善か悪か
洞穴の中は、やはり人がいるので松明で明るく照らされていた。
洞穴なので話すと声が響く都合上、俺達は気付かれない様に無言で奥へ進む。
そして、奥の開けた広間の様な場所へ辿り着くと通路から中を確認する。
中にはウォレスさんとゴーレムがおり、奥には意識のない成人男性が横たわっていた。
死体にしか見えない男性の姿を目撃し、思わず叫びたくなるが必死に堪えて中の観察を続ける。
気付いていないウォレスさんはゴーレムから胸の鉱石を取り外し、今度は横たわっている男性の元へそれを近付けた。
すると、男性の体から赤い炎の様なものが発せられ、鉱石にそれが吸収されていく光景を目の当たりにする。
そこで俺は今日フィオが言っていた事を思い出していた。
魔力は休息をとれば一日で僅かだが回復する、ただその量では巨大なゴーレムを動かす事は出来ない。
なら、どうするか? 簡単だ。
人一人の生命力を全て魔力に変換してしまえば良い。
人の寿命が生命力という事なら、それを全て消費して魔力にすれば膨大な量が得られるはずである。
それこそ巨大なゴーレムを動かして村の守護者に据える事も容易だろう。
選ばれた人が死ぬという前提での話だが……
「うっ」
予想していた事とは言え、救いのない事実に俺はショックを受けて呻く様な声をあげる。
「おや、誰かいるんですか?」
その声にウォレスさんが気付き、俺達が隠れているのがバレてしまう。
「悪いわね、尾けさせてもらったわ」
バレた原因である俺を手で小突いた後、フィオは先に通路から広間へと姿を見せる。
「貴方はフィオさん?」
「すみません、俺もいます」
少し驚いているウォレスさんの前へ俺も覚悟を決めて飛び出す。
「ロストさんもですか、あまり知られたくはなかったんですが……」
複雑な表情を浮かべるウォレスさんに俺達は謝罪し、失踪事件の真相について聞く事になった。
ウォレスさんは十年前まで王都でゴーレムを研究していた人間で研究成果が出ず、王都を追放されたらしい。
その後、ラットヴィルに辿り着いて子供達に読み書きを教える教師を始めたんだそうだ。
だが、村人が瘴魔に襲われて亡くなる事件が多発した。
元々ラットヴィルは他の村に比べて瘴魔の出現が多い村で毎年犠牲者が絶えなかったんだそうだ。
そんな事件が続き、ウォレスさんは次第に自分の研究が村の為になるんじゃないかと考え始めた。
しかし、魔力の問題で躓き、諦めようとしたが村長や村人達が彼の研究を理解して村を守る為ならと全面的に協力してくれる様になったんだとか。
初めは年老いた老人が犠牲になり、次は息子や村の為ならと自ら買って出た優しい女性が選ばれた。
そして、三度目の犠牲者がコニーの父親であるブレットさんだったという訳だ。
ちなみに三年に一度犠牲者が選ばれるのは、ウォレスさんの研究が完成しておらず、人から魔力を上手く吸収する事が出来ないからである。
「ロストさん、私は間違っていたんでしょうか?」
一頻りの経緯と説明を終え、ウォレスさんは真剣な表情で尋ねてきた。
「…………」
でも、それは俺如きが簡単に答えていい問題とは思えなかった。
「初めは私も葛藤しました、人の命を奪ってまでする必要があるのかと」
それはそうだろう、俺が今感じている事をウォレスさんは何年も前から感じていたはずだ。
「でも、ゴーレムを完成させてから村内の瘴魔からの被害が減ったのは事実なんです」
自分達の命は自分達で守るしかない、ウォレスさんが昼間に言っていた言葉を思い出す。
「だから、私は……」
「…………」
言葉が出てこない、確かに見方によってはウォレスさんのやった行為は許されない事だろう。
ブレットさんや他二人の村人が犠牲になった、この事実は変えられないからだ。
でも、その行為を間違いであると単純に糾弾するのも違うと思ってしまう。
結局、俺一人が決めていい問題じゃないのだ。
「ロスト、あんたどうするの?」
黙っていたフィオが俺に尋ねてくる、村人を犠牲にしたウォレスさんの処遇についてだろう。
「俺は……」
即答出来ずに悶々とする時間が続く、不甲斐ない自分を呪いたくなった。
「ロストさん、貴方が決めて下さい」
「え?」
答えを出せずにいた俺にウォレスさんもまた結論を出す様に求めてくる。
「貴方が間違いだと言うのなら、私は王都に行き罪を償います」
「貴方が正しいと言うのなら、私はここで研究を続けます」
思えばこの村に来てから俺は、目の前の事象に結論を出す事を避けていた気がする。
そのツケが今ここで回ってきたのかもしれない。
俺は真剣に悩んだ後、そのウォレスさんの問いに結論を出した。
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