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第1章 出会い
14話 異世界のお店
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決して珍しい色じゃない。
日本でも見慣れている焦げ茶色の瞳。
でも俺は、その瞳が持つ輝きに釘付けになっていた。
美しいものを見ると、どうしても気になってしまう。
ダメだ。抵抗できない、拒めない。
美しい、目の前の宝石に近づきたくて、触れたくて。
そして、本能が伝える誰かの面影を確かめたくて。
脳がそう判断した瞬間に全身の力が抜けていく。
その距離がゼロになろうとした時。
「見つけた」
「……え」
そんな声とともに、後ろから誰かの手が俺の口に覆いかぶさり、彼との接触が阻まれる。
強い力で後ろに引き寄せられると、そのまま腕を掴まれ彼とは逆の方へ、俺の身体は引っ張られた。
先程まで息が触れるほどの距離にあった彼の姿がどんどん小さくなっていく。
「おい、待て!」
遠くでそんな彼の声がしたような気がした。
でも、街の喧騒がそれをすぐにかき消す。
怒涛の展開に俺の頭は着いていけず、されるがまま、俺を引っ張る強い力に従ってしまう。
銀髪が揺れる後ろ姿だけが俺の視界に映る。
この屋台の灯りに反射するような美しい銀の髪を持つ人間を、俺は彼女しか知らない。
「エ、ラ……?」
「…………」
しかし俺の問いには答えない。
俺の手を引く彼女はひたすらに真っ直ぐに歩き続けた。
大分歩いて人通りの少ない路地に入ると、彼女はやっと俺の方を向いた。
そして、普段通りの明るい声音と膨れた頬を見せた。
「もう、リヨ。手を離したらダメじゃない。心配したんだから」
「ご、ごめん。ミゾル石が気になって、つい」
俺がエラの手を話してしまった訳を正直に話すと、彼女は口元に手を添えながら「リヨらしい理由ね」とクスリと笑った。
「それで、さっきいた彼が……」
そして、あの状況になっていた事情も彼女に伝えようとした時、俺の背筋は固まってしまった。
エラの瞳が表情か、見たこともない冷たく、鋭いナイフのようだったからだ。
「リヨ、キミは今から僕とご飯を食べるの。僕のおすすめのお店のご飯」
僕……?言葉の違和感を覚えながらも、それを超えるほどの恐怖。
視線に射抜かれて殺されそうで、心臓の音かあまりにもうるさい。
全身が、全神経が、このままでは危険だと警鐘を鳴らしている。
俺は震えた声を絞り出した。
「あ、あの彼、俺が探してる人かもしれなくて」
「……」
それを聞いた彼女は少し俯く。前髪の影が顔に落ちて、表情は全く読み取れない。
ゴクリと唾を飲むとそれを合図とするように、エラは俺の方をまっすぐ見て……安心させるような優しい声と表情で笑った。
「……そっか。ごめんね、リヨが変な人に絡まれてると思っちゃって。早とちりしちゃった」
「いや!俺こそごめん」
彼女は不慣れな俺をとても心配してくれていたんだ。
先程の緊張から一気に解放された俺は、いつもの調子に戻って頭を下げる。
「リヨは可愛いんだから、もっと危機感持ってよ」
「……え?」
生涯で一度も言われたことのなかった言葉を呟いた彼女に俺は思わず聞き返した。
しかし、彼女は深くそれを話すことはなかった。
「なんでもない。今ならまだ間に合うと思う。彼の所へ、戻ろっか」
「助かるよ、ありがとう」
エラは、俺の意思を全て汲んだ提案をしてくれる。
さっき出会った彼が気になって仕方がない。
エラには頼ってばかりで申し訳ないが、この心のざわめきをどうにかしたい。
だから、ここでも彼女の優しさに甘えることにした。
俺たちは路地を出て、再び人の多い通りに出て、人をかき分けながら歩いてきた道を辿っていく。
「っ!きゃ」
歩き始めてすぐに隣を歩いていたエラからそんな悲鳴が聞こえ、俺はすぐさま彼女の方を見る。
よろけた彼女は俺の胸にもたれ掛かる。
道の脇にエラを連れると、彼女は力が抜けたように蹲った。
何があったか、俺は彼女の様子を見て状況を確認する。
表情を歪ませ、足首を手で庇う彼女を目で追ってやっと分かった。
彼女が手で押えていた所が真っ赤に腫れていたのだ。
「エラ!足が」
「いいえ、このくらい。どうってことないわ……。早く、彼を追いかけましょう」
冷や汗を流しながら、無理やり立ち上がろうとする彼女を俺は思わず静止した。
辺りを見回し、どこか休める場所を探す。
すると近くに古びた暗い噴水が見えた。
「いや、放っておいたら、酷くなるだろ。とりあえず、あそこの広場で手当しよう」
「でも、そうしたら彼は……」
エラの心配を押し退けて、彼女の肩を掴んだ。
「こんな状態のエラを放ってなんて行けないだろ!」
こんなに世話になったんだ。
それにこれは俺がワガママを言ったせいで負った怪我。
「………………ありがとう、リヨ」
エラは耳に長い髪をかけて優しく笑った。
***
人気のない、暗い噴水のにエラを座らせる。
俺は跪いた太ももに彼女の真っ赤に腫れた足を乗せる。
「超赤くなってる!無理に歩かなくて良かった」
噴水の水を掬って、暗がりの中で何とか透明度を確かめる。綺麗な水っぽい。
作務衣のポケットにあったタオルを噴水の水で濡らして、患部に押し当てる。
「応急処置だけど」
「ありがとう。ごめんね、私のせいで、リヨの探してる人、見つけられなくなっちゃって」
今にも泣き出しそうな顔をするエラを宥める。
「気にしないで。またきっと、どこかで逢えるだろうから」
「……そっか」
腫れの具合を見ていたから、それを呟く彼女の表情は見えなかったけれど、その優しい声音から分かる。きっと微笑んでくれているだろうと。
タオルが温くなったら、また濡らして患部に当てて。それを何度か繰り返す。
タオルを当てる際に、彼女の素足に触れる。
雪みたいに白くて、指先まで整っている。
くっきりとした土踏まずとはっきりと見える骨の節。
数々の困難を乗り越えんだろう。
強く、逞しい、綺麗な足。
この手当を繰り返して、一時間くらいだったと思う。
エラが静かに声をかけた。
「リヨのおかげで少しマシになったみたい」
「良かった」
押し当てていたタオルをもう一度噴水の濡らし、彼女の足首に巻き付けたあとゆっくり立ち上がる。
「ねぇ」
「なぁ」
互いを呼ぶ声が被る。
「リヨからどうぞ」
「いや、ここはエラから」
「じゃあ一緒に言う?」
そんなエラの提案に頷いて、彼女の「せーの」の合図で口を開いた。
「お店に行かない?」
「おすすめの店に連れてって」
まさか、思っていたことが同じだなんて。
思わず笑いが込み上げてきてしまう。
それは目の前の彼女も同じようで。
「揃った」
「揃ったね」
エラはふぅっと息を吐いて、にっこりと微笑むと、両手を広げて言った。
「じゃあ、リヨ。おんぶして」
「……え?」
思わぬ提案に俺は困惑の声を漏らす。
「お・ん・ぶ!」
俺が頭を搔いて対応を悩んでいると、彼女は譲らずに押してくる。
「分かった分かったお姫様」
キラキラした目で見つめてくるから、結局俺の方が彼女の勢いに降参してしまった。
彼女を背中に乗せると、エラが耳元で囁く。
「……リヨって意外とキザなことも言えるのね」
「忘れてくれ」
「やーだ。一生の宝物にする」
エラはそう言うと、更にぎゅっと俺にしがみついた。
***
エラの案内の通りに進むと、そこは狭い狭い路地裏だった。そこの1番奥まで歩いていく。
小さな看板にはルヴェール料理の店と書かれている。
外装が闇に包まれていることもあって、扉を開けるのに少し躊躇ってしまう。
ドアノブにかけた俺の手に、エラが手を添えてくれたことで、やっと勇気が湧いて一気に扉を開けた。
その瞬間、ふわりと湯気が頬に触れた。
昆布と出汁の香りが、胸の奥まで温かく染み込んでくる。
この香りは……
「これって……」
「そう!オデンという食べ物よ」
「なんであるんだよ!」
思わず心からのツッコミが出てしまった。
「……やっぱり、リヨは知ってるのね」
エラはそんな呟きをした後、俺たちしかいない店の中、急ぎ足でカウンターの席に座り俺を手招きする。
カウンターの奥にいる小太りの老店主は、エラをみて気まずそうに視線を逸らした後、俺の方に視線を向ける。
この人も、エラのおまじないが効いていない?
疑問に思いながらも、軽く頭を下げると、エラの隣に座る。すると店主は吃驚した様子で深い礼を返してくる。
カウンターの上にある鍋を指さして、エラは興奮気味に語りかけてきた。
「私はこのもちもち袋とコンニャンが好き!」
蒟蒻と餅巾着のことだろうか?
美少女のもちもち、ニャン可愛すぎる。助かる。
俺も鍋の中を、入っている具材を確認してみる。
「大根、煮卵に、牛すじ……」
「この串のお肉はヴェルブナーという魔物ものよ。リヨの想像してるものとは少し違うかも」
エラの言葉を聞いて、俺は身体を強ばらせた。
牛じゃないんだ、この肉……。
そう思うとなかなか食べる勇気が出ない。
「そ、そうなんだ。じゃあ……ちょっとやめとこうかな」
「ええ、美味しいのに」
「いや、でも魔物の肉って……」
流石に抵抗があるというか。
丁重にお断りしておこう、と思った時だった。
「はい」
「え、はふっ」
口に突っ込まれた!
異国の謎料理であるカップ麺を口に突っ込まれた彼の気持ちが今になって分かる。
ごめん。めっちゃ怖いな。
目を瞑りながら、何とか咀嚼して極りと飲み込むと、濃厚な風味が広がる。
牛肉とは違うけれど、変な癖もないし、控えめな脂身で歯ごたえがしっかりしていて、肉感がすごくある。
「……うまい」
「でしょう?」
懐かしさと新鮮さ感じるこの不思議な空間で、俺とエラは2人だけの時間を過ごしたのだった。
日本でも見慣れている焦げ茶色の瞳。
でも俺は、その瞳が持つ輝きに釘付けになっていた。
美しいものを見ると、どうしても気になってしまう。
ダメだ。抵抗できない、拒めない。
美しい、目の前の宝石に近づきたくて、触れたくて。
そして、本能が伝える誰かの面影を確かめたくて。
脳がそう判断した瞬間に全身の力が抜けていく。
その距離がゼロになろうとした時。
「見つけた」
「……え」
そんな声とともに、後ろから誰かの手が俺の口に覆いかぶさり、彼との接触が阻まれる。
強い力で後ろに引き寄せられると、そのまま腕を掴まれ彼とは逆の方へ、俺の身体は引っ張られた。
先程まで息が触れるほどの距離にあった彼の姿がどんどん小さくなっていく。
「おい、待て!」
遠くでそんな彼の声がしたような気がした。
でも、街の喧騒がそれをすぐにかき消す。
怒涛の展開に俺の頭は着いていけず、されるがまま、俺を引っ張る強い力に従ってしまう。
銀髪が揺れる後ろ姿だけが俺の視界に映る。
この屋台の灯りに反射するような美しい銀の髪を持つ人間を、俺は彼女しか知らない。
「エ、ラ……?」
「…………」
しかし俺の問いには答えない。
俺の手を引く彼女はひたすらに真っ直ぐに歩き続けた。
大分歩いて人通りの少ない路地に入ると、彼女はやっと俺の方を向いた。
そして、普段通りの明るい声音と膨れた頬を見せた。
「もう、リヨ。手を離したらダメじゃない。心配したんだから」
「ご、ごめん。ミゾル石が気になって、つい」
俺がエラの手を話してしまった訳を正直に話すと、彼女は口元に手を添えながら「リヨらしい理由ね」とクスリと笑った。
「それで、さっきいた彼が……」
そして、あの状況になっていた事情も彼女に伝えようとした時、俺の背筋は固まってしまった。
エラの瞳が表情か、見たこともない冷たく、鋭いナイフのようだったからだ。
「リヨ、キミは今から僕とご飯を食べるの。僕のおすすめのお店のご飯」
僕……?言葉の違和感を覚えながらも、それを超えるほどの恐怖。
視線に射抜かれて殺されそうで、心臓の音かあまりにもうるさい。
全身が、全神経が、このままでは危険だと警鐘を鳴らしている。
俺は震えた声を絞り出した。
「あ、あの彼、俺が探してる人かもしれなくて」
「……」
それを聞いた彼女は少し俯く。前髪の影が顔に落ちて、表情は全く読み取れない。
ゴクリと唾を飲むとそれを合図とするように、エラは俺の方をまっすぐ見て……安心させるような優しい声と表情で笑った。
「……そっか。ごめんね、リヨが変な人に絡まれてると思っちゃって。早とちりしちゃった」
「いや!俺こそごめん」
彼女は不慣れな俺をとても心配してくれていたんだ。
先程の緊張から一気に解放された俺は、いつもの調子に戻って頭を下げる。
「リヨは可愛いんだから、もっと危機感持ってよ」
「……え?」
生涯で一度も言われたことのなかった言葉を呟いた彼女に俺は思わず聞き返した。
しかし、彼女は深くそれを話すことはなかった。
「なんでもない。今ならまだ間に合うと思う。彼の所へ、戻ろっか」
「助かるよ、ありがとう」
エラは、俺の意思を全て汲んだ提案をしてくれる。
さっき出会った彼が気になって仕方がない。
エラには頼ってばかりで申し訳ないが、この心のざわめきをどうにかしたい。
だから、ここでも彼女の優しさに甘えることにした。
俺たちは路地を出て、再び人の多い通りに出て、人をかき分けながら歩いてきた道を辿っていく。
「っ!きゃ」
歩き始めてすぐに隣を歩いていたエラからそんな悲鳴が聞こえ、俺はすぐさま彼女の方を見る。
よろけた彼女は俺の胸にもたれ掛かる。
道の脇にエラを連れると、彼女は力が抜けたように蹲った。
何があったか、俺は彼女の様子を見て状況を確認する。
表情を歪ませ、足首を手で庇う彼女を目で追ってやっと分かった。
彼女が手で押えていた所が真っ赤に腫れていたのだ。
「エラ!足が」
「いいえ、このくらい。どうってことないわ……。早く、彼を追いかけましょう」
冷や汗を流しながら、無理やり立ち上がろうとする彼女を俺は思わず静止した。
辺りを見回し、どこか休める場所を探す。
すると近くに古びた暗い噴水が見えた。
「いや、放っておいたら、酷くなるだろ。とりあえず、あそこの広場で手当しよう」
「でも、そうしたら彼は……」
エラの心配を押し退けて、彼女の肩を掴んだ。
「こんな状態のエラを放ってなんて行けないだろ!」
こんなに世話になったんだ。
それにこれは俺がワガママを言ったせいで負った怪我。
「………………ありがとう、リヨ」
エラは耳に長い髪をかけて優しく笑った。
***
人気のない、暗い噴水のにエラを座らせる。
俺は跪いた太ももに彼女の真っ赤に腫れた足を乗せる。
「超赤くなってる!無理に歩かなくて良かった」
噴水の水を掬って、暗がりの中で何とか透明度を確かめる。綺麗な水っぽい。
作務衣のポケットにあったタオルを噴水の水で濡らして、患部に押し当てる。
「応急処置だけど」
「ありがとう。ごめんね、私のせいで、リヨの探してる人、見つけられなくなっちゃって」
今にも泣き出しそうな顔をするエラを宥める。
「気にしないで。またきっと、どこかで逢えるだろうから」
「……そっか」
腫れの具合を見ていたから、それを呟く彼女の表情は見えなかったけれど、その優しい声音から分かる。きっと微笑んでくれているだろうと。
タオルが温くなったら、また濡らして患部に当てて。それを何度か繰り返す。
タオルを当てる際に、彼女の素足に触れる。
雪みたいに白くて、指先まで整っている。
くっきりとした土踏まずとはっきりと見える骨の節。
数々の困難を乗り越えんだろう。
強く、逞しい、綺麗な足。
この手当を繰り返して、一時間くらいだったと思う。
エラが静かに声をかけた。
「リヨのおかげで少しマシになったみたい」
「良かった」
押し当てていたタオルをもう一度噴水の濡らし、彼女の足首に巻き付けたあとゆっくり立ち上がる。
「ねぇ」
「なぁ」
互いを呼ぶ声が被る。
「リヨからどうぞ」
「いや、ここはエラから」
「じゃあ一緒に言う?」
そんなエラの提案に頷いて、彼女の「せーの」の合図で口を開いた。
「お店に行かない?」
「おすすめの店に連れてって」
まさか、思っていたことが同じだなんて。
思わず笑いが込み上げてきてしまう。
それは目の前の彼女も同じようで。
「揃った」
「揃ったね」
エラはふぅっと息を吐いて、にっこりと微笑むと、両手を広げて言った。
「じゃあ、リヨ。おんぶして」
「……え?」
思わぬ提案に俺は困惑の声を漏らす。
「お・ん・ぶ!」
俺が頭を搔いて対応を悩んでいると、彼女は譲らずに押してくる。
「分かった分かったお姫様」
キラキラした目で見つめてくるから、結局俺の方が彼女の勢いに降参してしまった。
彼女を背中に乗せると、エラが耳元で囁く。
「……リヨって意外とキザなことも言えるのね」
「忘れてくれ」
「やーだ。一生の宝物にする」
エラはそう言うと、更にぎゅっと俺にしがみついた。
***
エラの案内の通りに進むと、そこは狭い狭い路地裏だった。そこの1番奥まで歩いていく。
小さな看板にはルヴェール料理の店と書かれている。
外装が闇に包まれていることもあって、扉を開けるのに少し躊躇ってしまう。
ドアノブにかけた俺の手に、エラが手を添えてくれたことで、やっと勇気が湧いて一気に扉を開けた。
その瞬間、ふわりと湯気が頬に触れた。
昆布と出汁の香りが、胸の奥まで温かく染み込んでくる。
この香りは……
「これって……」
「そう!オデンという食べ物よ」
「なんであるんだよ!」
思わず心からのツッコミが出てしまった。
「……やっぱり、リヨは知ってるのね」
エラはそんな呟きをした後、俺たちしかいない店の中、急ぎ足でカウンターの席に座り俺を手招きする。
カウンターの奥にいる小太りの老店主は、エラをみて気まずそうに視線を逸らした後、俺の方に視線を向ける。
この人も、エラのおまじないが効いていない?
疑問に思いながらも、軽く頭を下げると、エラの隣に座る。すると店主は吃驚した様子で深い礼を返してくる。
カウンターの上にある鍋を指さして、エラは興奮気味に語りかけてきた。
「私はこのもちもち袋とコンニャンが好き!」
蒟蒻と餅巾着のことだろうか?
美少女のもちもち、ニャン可愛すぎる。助かる。
俺も鍋の中を、入っている具材を確認してみる。
「大根、煮卵に、牛すじ……」
「この串のお肉はヴェルブナーという魔物ものよ。リヨの想像してるものとは少し違うかも」
エラの言葉を聞いて、俺は身体を強ばらせた。
牛じゃないんだ、この肉……。
そう思うとなかなか食べる勇気が出ない。
「そ、そうなんだ。じゃあ……ちょっとやめとこうかな」
「ええ、美味しいのに」
「いや、でも魔物の肉って……」
流石に抵抗があるというか。
丁重にお断りしておこう、と思った時だった。
「はい」
「え、はふっ」
口に突っ込まれた!
異国の謎料理であるカップ麺を口に突っ込まれた彼の気持ちが今になって分かる。
ごめん。めっちゃ怖いな。
目を瞑りながら、何とか咀嚼して極りと飲み込むと、濃厚な風味が広がる。
牛肉とは違うけれど、変な癖もないし、控えめな脂身で歯ごたえがしっかりしていて、肉感がすごくある。
「……うまい」
「でしょう?」
懐かしさと新鮮さ感じるこの不思議な空間で、俺とエラは2人だけの時間を過ごしたのだった。
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