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第1章
旧校舎への避難
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イリューナを連れて入ったのは学校内では旧校舎と呼ばれて誰も入ってはいない木造建築の古びた建物の一室である。
その中でイリューナを前にして雄馬は大仰にため息を零しつつ彼女の姿を見た。
どこか、怪我をしたとかいう様子は見られない。
スムーズにここまで来たのだとうかがえた。
家で何かがあって逃げ出してきたとかそういうわけではないようで安心をした。
ならば、何ゆえにここまで来たのか。
いや、それ以前にどうして雄馬たちがこの学園にいるとわかったのだろうか。
この雄馬たちが住まう街には他にも学園はある。
その中で雄馬たちが通う学園『星城学園』を割り出したのは不思議である。
『星城学園』は歴史はあるがそんじょ其処らの学園と変わらない普通の学園である。
少しばかり行事が多くはあれどそうそう目立つようなあれでもない。
つまりは彼女が目を引かれるような要素もない。
「ここが教室というやつなんですね! すばらしいところです! ここでみんなが一緒になって勉学に励むというわけですか! なんてすばらしいことでしょうか!」
イリューナさんはこちらの怪訝な眼差しを気にせずに周囲の環境に感嘆の言葉を呟き、無邪気な子供のように走り回っていた。
走るたびに古い校舎だけあり軋んでいた。
「頼むからイリューナさん大人しくしてくれ! というか、一度お話をしよう! な?」
落ち着かない彼女に必死で懇願してどうにか彼女の走ることをやめさせて注意をこちらに向けさせた。
彼女がゆっくりとこちらに歩いてくる。
「あ、あの何か怒っていますか?」
そう問われるとそのまま答えづらく有り、彼女のことを気遣ってか嘘が口にして出る。
「怒ってはいないけど、正直いろいろといいたいことはあるよ」
「す、すみません。勝手に出てきてしまして。でも、ユウマさんたちが通う学園という場所が大変興味があり気になったんです!」
「気になったか……。よく、この学園にいるってわかったね」
「それはユウマさんに私は召喚された際にあなたと私は魔力の共有がされましたのでそれを辿るのは簡単なことですから」
なんとも非現実的な話をされたが、漫画やラノベであるような『あいつの波動』を感じるとか『殺気を感じるぞ!』とかいうのに近いもの安良だろうと勝手な理屈を思い浮かべて解釈をした。
『魔力の共有』というのも『感覚』がつながっているというような認識でいいのだろう。
とある双子の話でこんなものがあった。姉に何かあればその危険を遠く離れた場所にいた妹は姉に何かあったと察知し、警察へ電話をして姉を救ったという事例があったという。
その時、姉は自宅で心臓発作で倒れていたことが判明していた。
つまりは『魔力の共有』もそのようなケースに近いことだと考えてもいいのだろうか。
彼女はその痕跡や感覚を辿ってここへ行きついた。
まさに、異世界の住人らしい発想だともいえた。
「なるほどね。家からはどうやって出てきた?」
「ユウマさんの行動を監視していましたし、この国の常識を学べましたので戸締りは大丈夫です。魔法で行ってきました。それから、部屋の修繕作業もしましたよ」
「え? 魔法でそんなこともできちゃうの!?」
魔法の領域のすばらしさを実感する。
漫画などにあるようなことが平然とできるのか。
ともすれば、彼女にかかればこの世界を支配することも可能なんだろう。
ちょっと、悪い考えが思考をよぎったがそこまで落ちれば人間失格だ。
そうまではしたくない。
「なんか、気持ち悪い顔してますけどどうしましたか?」
すごく彼女がこちらを見て引きつった表情をしていたことに気付いた。
とんでもなく失礼な罵倒をしてくれるが全然気にはしない。
むしろご褒美である。
「いや、君の顔が美しいと思ってね」
「え? なんですか、それ。やめてください。気持ち悪いです」
反応上場。
思った通り、イリューナは顔を青ざめさせて自分から数歩よりをとって後退していく。
ユウマは大満足したように手を合わせた。
「ありがとうござます!」
合唱。
雄馬渾身の謝礼だった。
「よ、よくわかりませんが頭は大丈夫なんですか? 私が来てしまって混乱をまだしているとか?」
正直言えば混乱は継続中ではあるけど、イリューナが来てしまったことに対してもうこれ以上何かを言うつもりも不満を抱いているつもりもない。
「頭は大丈夫だ。それよりも、学園に興味があるって言ったな。悪いがそう簡単には学園を案内してやることはできないよ。一応は法律というか規則的に部外者は進入禁止だし、君がここに来たことはおそらくもう教師にばれてるだろうけど見つかったら大事になるのは間違いないんだ。だから、悪いけどしばらくはここにいてくれ。放課後になったらまた来るからさ」
「ええ! せっかく来たのに見学とかも駄目なんですか!?」
「駄目ったらダメなんだよ。さっきの騒ぎで自覚してくれ。あれでさえもう大事なんだ。とくにその耳は目立つ」
「え? これですか?」
彼女はエルフの特徴である自分の耳を指さした。
帽子で隠せているとはいえ、先のように風にあおられて帽子が飛ばされでもしたら一発アウトだ。
さっきは素早くかぶせ戻したが次はできるか保証はない。
そんなスリルは一回で十分である。
「わ、わかりました。では、ここでおとなしくしています」
「頼むぞ。旧校舎の中であれば散策していいがここも古いから暴れるとか、走るとかは禁止だからな」
「え」
「おい、『え』ってなんだ?」
「走るも駄目なんですか?」
「崩れるからダメに決まってるだろう! 死にたいのかよ!」
「このくらいの落石物ならば防げるから大丈夫ですよ」
「防げるのかよ!?」
異世界人の魔法ってハンパじゃない。
普通ならば校舎の倒壊事故に巻き込まれたら死ぬ。
それを彼女は防げるといった。
恐ろしいエルフだ。
「ってそうじゃなく、ともかくさ、倒壊したら周囲にも影響が出るからイリューナさんが良いとしても駄目だよ! 走る、暴れるNG! OK?」
「えぬじ? おーけ?」
「ああ! 走るのも暴れるの駄目ってことだよ」
「わかりました。そういえば、ユキヒはどちらに?」
「あいつは外の連中を薙ぎ払ってくれてる。だから、俺は戻って雪日に無事を伝えてくる。いいな? 言った通りここにいてくれよ。日が沈んだときにはここに来るからさ」
雄馬はそう言い残して旧校舎の部屋の扉を閉じた。
外へ出ればそこにばったりと一人の少女と出くわした。
おもわず驚きの声を上げる。
「きゃっ! 突然なんすか!」
「そっちこそ、ここにいるとは思わなかったぞ」
外で待機していたのは倉本明菜。
雄馬のクラスメイトで雪日の親友にして雪日と並ぶミス星城の一人である。
「中に彼女が?」
「えっと……」
「深いことは聞かないっすよ。事情があるんすよね。まぁ、匿うのは良いっすけどバレないように計らうんすよ」
「ああ、ありがとう。黙ってくれて」
「とりあえずはユッキーの友人でもある見たいっすからね」
そういって彼女は外へ向かい廊下終わるいていく。
雄馬も後をついて向かう。
「彼女とはどこで知り合ったんすか?」
「え」
その質問に雄馬は言葉が詰まる。
その言い訳は考えてはいなかったのですぐにはでなかった。
「なんか言えないことなんすか?」
「あ、いや! 親戚! 親戚の娘さんでさ! しばらく家で居候することになったんだよ! それに雪日がキレてさ、昨日は大変でさーあははは」
「そうなんすね、親戚で居候……そうっすか」
なんか、雰囲気が一瞬怖いように思えたが気のせいだろうか。
――キーンコーンカーンコーン。
耳に聞こえてくる昼休み終業時刻のベルの音。
「やっば!」
「ダメユウ急いで戻るっすよ! 雪日もたぶん戻ってると思うっす!」
「ああ!」
雄馬は急いで教室へ戻った。
最後に、倉本明菜はそっと旧校舎を見てほくそ笑んでいた。
その中でイリューナを前にして雄馬は大仰にため息を零しつつ彼女の姿を見た。
どこか、怪我をしたとかいう様子は見られない。
スムーズにここまで来たのだとうかがえた。
家で何かがあって逃げ出してきたとかそういうわけではないようで安心をした。
ならば、何ゆえにここまで来たのか。
いや、それ以前にどうして雄馬たちがこの学園にいるとわかったのだろうか。
この雄馬たちが住まう街には他にも学園はある。
その中で雄馬たちが通う学園『星城学園』を割り出したのは不思議である。
『星城学園』は歴史はあるがそんじょ其処らの学園と変わらない普通の学園である。
少しばかり行事が多くはあれどそうそう目立つようなあれでもない。
つまりは彼女が目を引かれるような要素もない。
「ここが教室というやつなんですね! すばらしいところです! ここでみんなが一緒になって勉学に励むというわけですか! なんてすばらしいことでしょうか!」
イリューナさんはこちらの怪訝な眼差しを気にせずに周囲の環境に感嘆の言葉を呟き、無邪気な子供のように走り回っていた。
走るたびに古い校舎だけあり軋んでいた。
「頼むからイリューナさん大人しくしてくれ! というか、一度お話をしよう! な?」
落ち着かない彼女に必死で懇願してどうにか彼女の走ることをやめさせて注意をこちらに向けさせた。
彼女がゆっくりとこちらに歩いてくる。
「あ、あの何か怒っていますか?」
そう問われるとそのまま答えづらく有り、彼女のことを気遣ってか嘘が口にして出る。
「怒ってはいないけど、正直いろいろといいたいことはあるよ」
「す、すみません。勝手に出てきてしまして。でも、ユウマさんたちが通う学園という場所が大変興味があり気になったんです!」
「気になったか……。よく、この学園にいるってわかったね」
「それはユウマさんに私は召喚された際にあなたと私は魔力の共有がされましたのでそれを辿るのは簡単なことですから」
なんとも非現実的な話をされたが、漫画やラノベであるような『あいつの波動』を感じるとか『殺気を感じるぞ!』とかいうのに近いもの安良だろうと勝手な理屈を思い浮かべて解釈をした。
『魔力の共有』というのも『感覚』がつながっているというような認識でいいのだろう。
とある双子の話でこんなものがあった。姉に何かあればその危険を遠く離れた場所にいた妹は姉に何かあったと察知し、警察へ電話をして姉を救ったという事例があったという。
その時、姉は自宅で心臓発作で倒れていたことが判明していた。
つまりは『魔力の共有』もそのようなケースに近いことだと考えてもいいのだろうか。
彼女はその痕跡や感覚を辿ってここへ行きついた。
まさに、異世界の住人らしい発想だともいえた。
「なるほどね。家からはどうやって出てきた?」
「ユウマさんの行動を監視していましたし、この国の常識を学べましたので戸締りは大丈夫です。魔法で行ってきました。それから、部屋の修繕作業もしましたよ」
「え? 魔法でそんなこともできちゃうの!?」
魔法の領域のすばらしさを実感する。
漫画などにあるようなことが平然とできるのか。
ともすれば、彼女にかかればこの世界を支配することも可能なんだろう。
ちょっと、悪い考えが思考をよぎったがそこまで落ちれば人間失格だ。
そうまではしたくない。
「なんか、気持ち悪い顔してますけどどうしましたか?」
すごく彼女がこちらを見て引きつった表情をしていたことに気付いた。
とんでもなく失礼な罵倒をしてくれるが全然気にはしない。
むしろご褒美である。
「いや、君の顔が美しいと思ってね」
「え? なんですか、それ。やめてください。気持ち悪いです」
反応上場。
思った通り、イリューナは顔を青ざめさせて自分から数歩よりをとって後退していく。
ユウマは大満足したように手を合わせた。
「ありがとうござます!」
合唱。
雄馬渾身の謝礼だった。
「よ、よくわかりませんが頭は大丈夫なんですか? 私が来てしまって混乱をまだしているとか?」
正直言えば混乱は継続中ではあるけど、イリューナが来てしまったことに対してもうこれ以上何かを言うつもりも不満を抱いているつもりもない。
「頭は大丈夫だ。それよりも、学園に興味があるって言ったな。悪いがそう簡単には学園を案内してやることはできないよ。一応は法律というか規則的に部外者は進入禁止だし、君がここに来たことはおそらくもう教師にばれてるだろうけど見つかったら大事になるのは間違いないんだ。だから、悪いけどしばらくはここにいてくれ。放課後になったらまた来るからさ」
「ええ! せっかく来たのに見学とかも駄目なんですか!?」
「駄目ったらダメなんだよ。さっきの騒ぎで自覚してくれ。あれでさえもう大事なんだ。とくにその耳は目立つ」
「え? これですか?」
彼女はエルフの特徴である自分の耳を指さした。
帽子で隠せているとはいえ、先のように風にあおられて帽子が飛ばされでもしたら一発アウトだ。
さっきは素早くかぶせ戻したが次はできるか保証はない。
そんなスリルは一回で十分である。
「わ、わかりました。では、ここでおとなしくしています」
「頼むぞ。旧校舎の中であれば散策していいがここも古いから暴れるとか、走るとかは禁止だからな」
「え」
「おい、『え』ってなんだ?」
「走るも駄目なんですか?」
「崩れるからダメに決まってるだろう! 死にたいのかよ!」
「このくらいの落石物ならば防げるから大丈夫ですよ」
「防げるのかよ!?」
異世界人の魔法ってハンパじゃない。
普通ならば校舎の倒壊事故に巻き込まれたら死ぬ。
それを彼女は防げるといった。
恐ろしいエルフだ。
「ってそうじゃなく、ともかくさ、倒壊したら周囲にも影響が出るからイリューナさんが良いとしても駄目だよ! 走る、暴れるNG! OK?」
「えぬじ? おーけ?」
「ああ! 走るのも暴れるの駄目ってことだよ」
「わかりました。そういえば、ユキヒはどちらに?」
「あいつは外の連中を薙ぎ払ってくれてる。だから、俺は戻って雪日に無事を伝えてくる。いいな? 言った通りここにいてくれよ。日が沈んだときにはここに来るからさ」
雄馬はそう言い残して旧校舎の部屋の扉を閉じた。
外へ出ればそこにばったりと一人の少女と出くわした。
おもわず驚きの声を上げる。
「きゃっ! 突然なんすか!」
「そっちこそ、ここにいるとは思わなかったぞ」
外で待機していたのは倉本明菜。
雄馬のクラスメイトで雪日の親友にして雪日と並ぶミス星城の一人である。
「中に彼女が?」
「えっと……」
「深いことは聞かないっすよ。事情があるんすよね。まぁ、匿うのは良いっすけどバレないように計らうんすよ」
「ああ、ありがとう。黙ってくれて」
「とりあえずはユッキーの友人でもある見たいっすからね」
そういって彼女は外へ向かい廊下終わるいていく。
雄馬も後をついて向かう。
「彼女とはどこで知り合ったんすか?」
「え」
その質問に雄馬は言葉が詰まる。
その言い訳は考えてはいなかったのですぐにはでなかった。
「なんか言えないことなんすか?」
「あ、いや! 親戚! 親戚の娘さんでさ! しばらく家で居候することになったんだよ! それに雪日がキレてさ、昨日は大変でさーあははは」
「そうなんすね、親戚で居候……そうっすか」
なんか、雰囲気が一瞬怖いように思えたが気のせいだろうか。
――キーンコーンカーンコーン。
耳に聞こえてくる昼休み終業時刻のベルの音。
「やっば!」
「ダメユウ急いで戻るっすよ! 雪日もたぶん戻ってると思うっす!」
「ああ!」
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最後に、倉本明菜はそっと旧校舎を見てほくそ笑んでいた。
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