世界の破壊と終わりの先でさようなら

プロローグ

プロローグ7

　「おまえさんが何者か少しは説明してくれねぇか！」

　手を引いて一緒にフードをかぶって必要に顔を見せることを拒み口を開こうとしない女。
　逃亡をしながら追跡者に牽制を行うように氷で地面を凍結化させる。
　少しでも相手の足止めを計算した攻撃だが、容易にその足場を追跡の男は足場に電流を迸らせて氷の上を砕きながら疾走していた。

「畜生！　おまえ本当に何もんだ！」

　相手の雷撃が微かに横を通過した。
　一瞬でも逸れていれば雷の元に殺されていやも知れぬ衝撃。
　これほどの魔法士使いの他種族から追われるというのは彼女が相当相手には殺したいほどの相手ということになる。
　この人物を見ると人に恨みを買うような性格にはみえない。

「私は……この国へ密入国をしてきたものです。それ以上の素性は今は明かせません」
「はぁあ！？」
　
　下唇を噛み締めて悲痛な表情をみせた女に俺も弱った感情を抱いてしまう。
　こちらが弱い者いじめしているような気持ちになったのだ。
　実際に見た目から彼女はそれほどの力が備えてるようには見えない。
　理由がどうであれ密入国してくるくらいの事態に彼女は巻き込まれている。
　他国の人物ってだけでも十分な理由だ。

「見えてきた！」

　ようやく自由に出入りのできる区画境界ラインのほうにまで出向いてきた。
　第1区この国一番の広い広大な街で公共団地でもある土地へと走り込む。
　その中には警察機関もあるので彼女の保護を依頼すれば助けてもらえる。
　
「逃がすかぁあああ！」

　第1区に入る寸前に頭上から爆雷が落ちた。
　それは区画門の壁を崩落させて、出入り口扉の瓦解を始めた。
　このままでは行く手を阻まれてしまう。
　焦りつつ後ろを振り返って追跡者の男がゆっくりと歩み寄ってきていた。
　一刻も早く、彼女を救う手段を――
　追撃者の胸元に驚愕する。
　バツ印の上に重なるようなドクロのマークが描かれたタトゥー。
　見覚えのあるそのマーク。
　いつのまにか攻撃を打っている最中に上半身がはだけた結果見えるようになったんだろう。
　その要因は俺にとって足を止めて真っ向から戦う衝動に駆られる大事な要因へ発展した。
　
「あの先へ向けて先へ行け！　それからコイツを使って助けを呼べ！」

　俺は携帯を女に向けて押し付けて扉に向けて後押しを示した。
　足澱む、女の姿。

「いいから行きやがれ！　死にてぇのか！」

　脅迫になったけれども、せめて彼女の生きる道を示さねばならないと考えた。
　俺には聞きたいことがあった。
　男たちの存在はなんとなく見過ごせない要因があったのだ。

「おまえ一人で相手しようってのか！　あァンっ！？」
「……おまえには、ちょっと聞きたいことがある。その胸元のタトゥー、おまえは教団の人間か？」
「ああ、そうか。ワスレテタな。ここって昔に……ひひっ」
「こっちの質問に答えろ！」
「そんなに知りてぇならオレっちをこわしてみればいいさ！」
「そうか……ならそうさせてもらう」

　一瞬にして自分を中心とした周囲全域を氷結化させていく。
　その広範囲の氷結空間に捕らわれた相手の男がもがき苦しみ始めた。

「なんだコレハッ……。こんなのありえねぇ……！　ただの魔法士じゃねぇな！　てめぇのその目まさかっ！」
「おせぇよ」

　氷は変色し、紅蓮の赤に色を変え、柱がつきたつように隆起した。
　男は自らの腕を引きちぎった。
　跳躍をして屋根伝いに疾走して逃げていく。

「待て！」

　身体に異常な倦怠感がずっしりとくる。

「時間か……ぐっ」

　奥歯を噛み締めて逃亡した男の存在を悔しく見おくる。
　ふらふらした足取りで第1区画への境界門の入り口扉に向けて歩んでいった。