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第2章 最初の開拓
カレースープ
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俺は頼られたことに誇りや自信がついていた。
何よりも、愛するアイドル声優とこの異世界へと召喚されたことは俺にとっては幸運ともいえる状況だった。
だけれど、彼女にとっては最悪な状況だということは心の中ではわかってる。
俺は正直、帰還を望んではいない。
口には出しては言わず感情としても表には出さないであくまでもアイドル声優と同じ気持ちを装うことがファンとしての務めというよりもこの世界へと共に召喚された身分である考え方なのだと思ったのだ。
だからと言って、自分は勇者業とかいうものを経験などしたくはなかった。
命のやり取りなどごめんである。
あの場の時はどうしようもない状況だから一生懸命に頑張れた。
身に染みてわかってしまう。
自分に戦える能力があっても、これ以上戦闘をするのは無理だと俺は理解したのだ。
だから、彼女が提案したい気持ちを汲み取り、状況を把握する。
自らもこの世界を見た時に思ったこともあったがゆえに考えたことが文化の改革。
おおよそ、自分がどうしてこの世界に召喚されたのかはそこにあるのだろうとさえ思う。
物心ついたときから親には何事も経験しろと多くのことを押し付けられてきた。
成長していくとともにそれは増える。
自ずとそんな生活を続けて、人の感情を読み解いていくのは得意になった。
あらゆる分野に触れたことで未熟な部分はあれど経験を持つようになった。
仕事はやりたい仕事へと就くでもなくふらふらは日常茶飯事。
そんな経験だけを摘んできた馬鹿な俺だからこそこの世界の神様はその活かす場所を与えたのではないかと思う。
手元には作り立てのスパイスの効いた粉とひき肉が入ったフライパン。
もう片方では鍋を用意してあらかじめ軽く炒めた野菜を放り込んで水を目分量で入れる。
「あとは煮込むだけだな」
野菜を煮込み始める。
蓋を閉じて時間を計測する。
その間に次の日の仕込みをした。
仕込みといっても簡単なものだった。
ネギのような品質の野菜の根と芽を切り取り、大きな蓋つきのガラス製の中にそれらを入れて作っておいた甘酢風を注ぎ込む。
冷蔵室のようなものの中へとそれを入れて明日の楽しみとしてとっておいた。
「さて、10分は経過しただろうか」
鍋の中を確認すると思いのほか野菜は柔らかいものへと変化していた。
魔道路の故障で当初は火を使えないような話であったが、王宮の地下には非常用の魔道路で動く発力システムのようなものが存在しているために電気や火が動くのは助かるというべきことだ。
そもそも、無かったら王族が市民への配給活動ができないでこの国は餓死という道を辿ったことだろう。
この世界は非常にもったいないと思う。
魔法という能力を持っているのにもかかわらず戦争ということでしか範囲を広げた考えを持ち合わせていない。
武器の製造や建築物に特化してはいるがそれだけ。
魔法による火力を実体験をして本格的に思う。
魔法の火力で野菜さえも早く柔らかくする。
「さてと」
俺はその中へとスパイスの効いた粉を入れた。
お玉のようなもので掻き混ぜる。
スパイスの効いた良い香りが引き立つ。
その匂いにつられたかのように厨房に王女様と種村さんに料理人も入ってきた。
「なんですのこの良い匂い」
「なんとも表現しにくいのですが……あ、あの一つ試食良いでしょうか?」
「すごいのね、あなた。こんな未知の材料を生かして本当に作ってしまうなんてカレーを」
3人が一様に驚きを示しながら鍋の中に入ったスープを見る。
それは野菜と肉が入ったスパイスの効いたスープ。
カレースープである。
「本当は米になるようなものがあったりすれば炊いて、ルーでもよかったんだけど、今回はスープにしてみましたよ」
「スパイスから調理できるのも大したものじゃない」
「あはは、レストランで過去にバイトしていた経験ですよ」
「ふーん、普通においしいわ。カレーとはちょっと程遠くてもそれっぽいわよ」
「ありがとうございます!」
アイドル声優に自分の飯を美味しいといってもらえたことに思わず感無量で涙がこぼれる。
「ちょっと、何泣いてんのよ!」
俺の涙につられたのか、それともおいしくてなのか、こっそりと試食していた王女と料理人が大粒の涙を流しながら二人でがぶがぶとスープを飲んでいた。
「なんて……なんて……言葉が見つからないです! うぅぅ。目から何かがあふれてきます」
「殿下、私もです。このようなもの料理人生で初めて食しましたよ!」
「あはは、すげぇ喜んでもらえたようで」
俺は二人の間から手を伸ばしてお玉を奪い取る。
二人は恨みがましそうな目を向ける。
「勇者様、まだ――」
「王女殿下、話をいいですか?」
「はい?」
「このスープを明日から市民への配給物に加えてくださいませんか?」
「…………え」
王女の戸惑ったまま固まったのであった。
何よりも、愛するアイドル声優とこの異世界へと召喚されたことは俺にとっては幸運ともいえる状況だった。
だけれど、彼女にとっては最悪な状況だということは心の中ではわかってる。
俺は正直、帰還を望んではいない。
口には出しては言わず感情としても表には出さないであくまでもアイドル声優と同じ気持ちを装うことがファンとしての務めというよりもこの世界へと共に召喚された身分である考え方なのだと思ったのだ。
だからと言って、自分は勇者業とかいうものを経験などしたくはなかった。
命のやり取りなどごめんである。
あの場の時はどうしようもない状況だから一生懸命に頑張れた。
身に染みてわかってしまう。
自分に戦える能力があっても、これ以上戦闘をするのは無理だと俺は理解したのだ。
だから、彼女が提案したい気持ちを汲み取り、状況を把握する。
自らもこの世界を見た時に思ったこともあったがゆえに考えたことが文化の改革。
おおよそ、自分がどうしてこの世界に召喚されたのかはそこにあるのだろうとさえ思う。
物心ついたときから親には何事も経験しろと多くのことを押し付けられてきた。
成長していくとともにそれは増える。
自ずとそんな生活を続けて、人の感情を読み解いていくのは得意になった。
あらゆる分野に触れたことで未熟な部分はあれど経験を持つようになった。
仕事はやりたい仕事へと就くでもなくふらふらは日常茶飯事。
そんな経験だけを摘んできた馬鹿な俺だからこそこの世界の神様はその活かす場所を与えたのではないかと思う。
手元には作り立てのスパイスの効いた粉とひき肉が入ったフライパン。
もう片方では鍋を用意してあらかじめ軽く炒めた野菜を放り込んで水を目分量で入れる。
「あとは煮込むだけだな」
野菜を煮込み始める。
蓋を閉じて時間を計測する。
その間に次の日の仕込みをした。
仕込みといっても簡単なものだった。
ネギのような品質の野菜の根と芽を切り取り、大きな蓋つきのガラス製の中にそれらを入れて作っておいた甘酢風を注ぎ込む。
冷蔵室のようなものの中へとそれを入れて明日の楽しみとしてとっておいた。
「さて、10分は経過しただろうか」
鍋の中を確認すると思いのほか野菜は柔らかいものへと変化していた。
魔道路の故障で当初は火を使えないような話であったが、王宮の地下には非常用の魔道路で動く発力システムのようなものが存在しているために電気や火が動くのは助かるというべきことだ。
そもそも、無かったら王族が市民への配給活動ができないでこの国は餓死という道を辿ったことだろう。
この世界は非常にもったいないと思う。
魔法という能力を持っているのにもかかわらず戦争ということでしか範囲を広げた考えを持ち合わせていない。
武器の製造や建築物に特化してはいるがそれだけ。
魔法による火力を実体験をして本格的に思う。
魔法の火力で野菜さえも早く柔らかくする。
「さてと」
俺はその中へとスパイスの効いた粉を入れた。
お玉のようなもので掻き混ぜる。
スパイスの効いた良い香りが引き立つ。
その匂いにつられたかのように厨房に王女様と種村さんに料理人も入ってきた。
「なんですのこの良い匂い」
「なんとも表現しにくいのですが……あ、あの一つ試食良いでしょうか?」
「すごいのね、あなた。こんな未知の材料を生かして本当に作ってしまうなんてカレーを」
3人が一様に驚きを示しながら鍋の中に入ったスープを見る。
それは野菜と肉が入ったスパイスの効いたスープ。
カレースープである。
「本当は米になるようなものがあったりすれば炊いて、ルーでもよかったんだけど、今回はスープにしてみましたよ」
「スパイスから調理できるのも大したものじゃない」
「あはは、レストランで過去にバイトしていた経験ですよ」
「ふーん、普通においしいわ。カレーとはちょっと程遠くてもそれっぽいわよ」
「ありがとうございます!」
アイドル声優に自分の飯を美味しいといってもらえたことに思わず感無量で涙がこぼれる。
「ちょっと、何泣いてんのよ!」
俺の涙につられたのか、それともおいしくてなのか、こっそりと試食していた王女と料理人が大粒の涙を流しながら二人でがぶがぶとスープを飲んでいた。
「なんて……なんて……言葉が見つからないです! うぅぅ。目から何かがあふれてきます」
「殿下、私もです。このようなもの料理人生で初めて食しましたよ!」
「あはは、すげぇ喜んでもらえたようで」
俺は二人の間から手を伸ばしてお玉を奪い取る。
二人は恨みがましそうな目を向ける。
「勇者様、まだ――」
「王女殿下、話をいいですか?」
「はい?」
「このスープを明日から市民への配給物に加えてくださいませんか?」
「…………え」
王女の戸惑ったまま固まったのであった。
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