ライバーな俺が大好きな声優アイドルと一緒に異世界へ召喚されてしまったので新しい世界で生きる方法を作りました。(改題しました

ryuu

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第3章 同盟

魔王の居所の件について

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「勇者様勝手な判断も限度がありますわ!」

 地下牢から地上へと戻って、王座の間にいる王女へ結果の伝達を行えば、彼女の怒りに触れた。
 その隣では呆れ、「ほら、怒られた」と言わんばかりの表情をする種村さんの表情。
 王女へと敵対心をむき出しの元囚人と化したジルがいた。
 今のジルは隷属化させ、俺の奴隷であり護衛という立場を利用して連れ出した。
 騎士団長も散々言われたが無理やり連れだしたのだ。

「だが、契約上において俺の行動に文句はないだろう」
「ですが、こちらもこちらなりの事情を考えてくださいませ!」
「彼女には外へと出す際はフードと仮面なりをかぶせて身分を伏せさせる。それくらいは行う予定だ」
「それでも、もしもバレた場合はどうなさるつもりですの!」
「その時は責任を取るさ。この国から出ていくなりする」
「そういう話ではありませんの!」

 王女の逆鱗はとどまることを知らない。
 その怒りに油を注ぐかのようにあざ笑う声。

「ギャハハ、ざまぁないぜ王女。アタイは出てやったぞ!」
「この傭兵風情が! 今すぐ叩き斬るのですノエラ!」

 この時俺は初めて騎士団長の名前を知ったが彼女は身動き一つ取らない。
 彼女に俺は作戦のすべての概要を離しをして承諾をしてもらっていた。

「悪いけど、騎士団長さんも俺の作戦に承諾をしてもらってるんだ。クレアス宰相だっけか。お前のいうことは全く聞かないと思うぞ」
「宰相である私に対して勇者風情が何という口の利き方を! 王女殿下、裏切者である騎士団長とこの勇者を即刻斬り伏せ――」

 しばらくおいて、王女が力強く立ち上がる。
 その勢いに、全員が一気に緊張を高めた。
 宰相はにこやかな笑顔を向けた。

「そうです、殿下正しいご決断を」
「あなたですわ。正しい決断をするのは」
「え」
「たしかに今回は私も思うところは多々ありますわ。ですが、過去を振り返ればこのくらい大目に見るべきことですわ」
「殿下! 何を言うんですか先ほどまであなたは!」
「黙っていなさい」

 この一瞬の間で彼女も何かの決断をしたように俺を睨みつけて大仰にため息をついた。

「勇者様、先ほどしっかりと責任を持つといいましたわね?」
「ああ」
「でしたら、彼女の身元が民間人へ露呈した場合は勇者様には彼女を殺す覚悟を持ってくださいますか?」
「……そういう話は予想していた。覚悟の上だ」

 俺の中ではそれは予定の中に組み込まれている。
 その覚悟もないのにここへと元は敵の兵士だった彼女を奴隷にして連れてくる横暴な真似はしない。

「そうした後に、俺はこの国を去るよ」
「それは我が国としては困るんです。だから先ほどそういう話ではないと言ったのがわかりませんでしたの?」
「はあ? いや、責任としてそれくらい……」
「それは我が国としては不利益を被ることになるんですわ。第一、あなたは契約として我が国を起点としてこの世界を平和へと導くことを約束いたしましたわ。でしたら、去ることは許しませんわよ」
「ははっ、なるほど。了解しましたアルナ王女殿下」

 最後のほうでどうにかこちらの気持ちを汲み取った決断をしてくれたことに心から感謝をして頭を下げた。
 当の宰相は納得できず、魔法で姿を消してどこかへと去った。

「はぁ、宰相に関しては私から言い聞かせますわ。彼女がいた建前上に私がああいう意見をも口にしなければならなかったことをご理解してくださいまし」
「その割に最終的には意見をくみ取った判断への急な方向転換は不自然だった気がするけどな」
「わたくし、こういうの実は苦手なんですのよ」
「そういうが俺たちを騙していたじゃないか」
「あら、またその話を掘り返すつもりですの?」

 お互いにもう行動には躊躇をしないことをわかりあうかのような視線をぶつけ合う。
 おのずと笑いがこぼれた。

「はぁー、びっくりしたわ。やっぱり演技だったのね」

 種村さんが今までの流れを呼んでいたかのようにほっと安堵の息を零しながらぼやいた。

「ごめん。こういう建前を踏まえて交渉しないとならないからさ」
「わたくしの王女としての建前を汲み取って話を持ってきたことを最初の勇者様の顔色を窺ってすぐ察しましたわ」
「はぁー、アルナ王女も頭も役者に転職でもすればいいんじゃないかしらね。まったくもう」

 呆れるため息を零しつつ、王女が話を切り出してくる。

「それで、勇者様、彼女を出したことに関しては不服でありますが承諾は致しますわ。ですが、その前に私は王女として彼女にまだ問いただした案件がございますわ。それを解決しない限り城の外へは出すことは許可できませんわ」
「おいおい、承諾しておいてそれはないだろう」
「あくまで地下牢から出すことは許可しても城の外は許可しませんわよ」
「屁理屈かよ!」

 まったくもって一杯食わされた気分を味わいながらそっと隣のジルを見た。
 彼女は何かを悟った様子でゲヒタ笑みを浮かべていた。

「チッ、三門芝居を見せられたあとになんだってんだい? 今すっごい気分が悪いのさ。最初からアタイを有さ歯が外に出しても良いような気持もちでいたアンタに腹が立ってるんだからねぇ」
「あら? 外へ出たかったのだから気分がよくなったらどうなんですの?」
「ふざけるんじゃないよ! アンタの口車には乗らない!」
「勇者様、今頼めるかしら? 彼女へ魔王の居場所を聞いてくださいませ」

 俺は王女からの頼まれごとに目を瞬いた。
 
「待てよ、魔王の居場所を知らないのか?」
「ええ、そうですわよ。世界のどこにいるのか私は存じ上げていませんわ。魔王は突然としてここから南方の国へと出現しその国を滅ぼし渡り歩いている存在なんですわ」
「そういう話は最初の時に説明をしてほしかったよ……」

 今更知った、魔王の出現経緯に頭を抱える。
 しかし、最初から考えればよかったのだ。
 あらゆる国がどうして魔王に同盟を組んで挑むことをしないのかということに。

(同盟を作ったりしないのは世界全体が喧嘩しているだけじゃなく、魔王の居場所もわからないからか。それに国が魔王に攻撃しているという話もあまりないのは出現場所が不明だということもあったのか)

 ファンタジー小説とかでもよく考えると魔王の所在地は不明な時もあればわかっていてもその領域に踏み込むための強さが必要だったりする。
 俺はてっきり後者のことを考えてしまっていた。

「というわけで、魔王の居場所はどこだ?」
「勇者ぁ、アンタまでそんなつまらない質問をするんじゃないよ」
「わるいけど、そっちの気持ちを汲み取ってやる気はない。王女との交渉もあるし計画をいち早く進めるために知ってるなら口を割ってくれ」
「はぁー、悟ってるだろう勇者。アタイはずっとあの地下牢で痛めつけられてその情報を吐かなかったと思うのかい?」
「それは……」

 なんとなく結果は察している。
 彼女はおおよそ、そのじょうほうを――

「アタイは傭兵さ。放浪する兵士。何かいい仕事の話があれば金摘みさえすればなんでだって動く。魔王の傭兵なんてやっていたけど一時的に部下になっただけに過ぎないのさ。わかるかい?」
「…………やっぱり知らないんだな。どっかの国で魔王の兵隊を名乗るやつにでも仕事の話をもらったってところか」

 その話を傍で聞き耳をたてながら聞いていた王女が悩まし気な声を出す。

「本当に知らないんですの?」
「さんざんアタイを痛めつけてたようだけどねぇアタイは傭兵だよ! 魔王の傭兵なんて言うけど全員ただその場でやとわれただけに過ぎないのさ! だけどねぇ、魔王の居場所を知ってそうな奴は知ってるさ」
「それはどこの誰ですの?」
「フィレアス王国、神官様さ」
「っ!」

 どうやらよほどの大物なのか王女の目が衝撃を受けたように見開いていた。
 口元を抑え、歯ぎしりをする。

「やはり、あの国は通じていましたのね」
「そこまではわからないさ。でも、アタイに仕事の話を持ち込んでこの国の勇者を襲うように命じたのはソイツさ」
「本当にその話は事実だって保証はあるのかジル」
「おいおい、勇者ぁ心外な発言だなぁ。アタイは今アンタと隷属魔法で繋がれてる。勇者に不利になる嘘を告げれば死ぬんだぜ」

 その言葉の重みを痛感した俺は彼女が嘘を言っていないことを信用する。
 王女の反応も見るとその国が魔王の存在を隠匿していてもおかしくはなさそうな雰囲気だった。

「そのフィレアス王国ってのはどんな国なんだよ」
「フィレアス王国は貴族性の強い国で、穀物などの収入が高く他国よりも食料には困っていない国と聞きますわ。ただ、貴族制のために民間人への扱いは酷いものだとかいう話もよく耳にしますわね。特に上流貴族の悪徳な横領や他国への度重なる嫌がらせは後を絶ちませんわ」
「いやがらせ?」
「自らの兵士を他国へと忍ばせて他国の罪へと擦り付けて戦争を仕掛けさせるのですわ」

 よく戦争の作戦などに用いられる戦略として耳にする方法だった。
 だが、その国は彼女が語る雰囲気から察するに毎度のことでそれをうまくやっているのだろう。

「あの国は情報を盗むのではなく他国から品物を盗むことを主としていてそれを扱うのがいつも腹立たしいのですわ。我が国も何度となく被害を受けましたわ。まさか、魔王と繋がっていましたのですわね」

 今すぐにでも戦争を仕掛けようとする勢いの怒りを滲ませる。

「冷静にならないといけませんわね。戦争を今は行える状況にありませんもの」

 すぐに彼女は自制を利かせ、俺のほうを向いた。

「ありがとうございますわ勇者様。もう、あとは彼女をあなたの隙に使って構いませんわ。でも、くれぐれも彼女の身元がわからぬように努力をしてくださいませ」
「わかりました。そうだ、王女様そのフィレアス王国の件だが、もしかしたら後に役立てることになるかもしれない」
「どういう意味ですの? まぁ、今は話すことはできない。あと、騎士団長をしばらくお借りしていいか?」
「騎士団長をなぜですの?」
「ちょっとな」
「ノエラ、あなたは了承していますの?」
「私自身は了承済みです。私自身、勇者の作戦の全容をお聞きしまして私の力を勇者にお貸しできないかと思っています。王女殿下が許可してくださいますのならばぜひにとお願いします」
「わかりました。許可いたしますわ」
「ありがたき幸せにございます」

 順調に話は進んだ。
 俺は笑みを浮かべて王女へと背中を向けた。

「王女殿下、また厨房を少しお借りします」
「え」
「ちょっと、用事が又あるので。昼休みのほうは順調にやりますので問題なく大丈夫です。では」

 俺は王座の間を後にその場から退室したのだった。
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