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15、家族会議
しおりを挟むナタリーゼはヴァイスの姉で、トリガー公爵家の次女だ。
好奇心旺盛で、各国を旅している。
銀髪と赤い瞳、小柄で細身な容姿は母親譲りだ。
旅をしているわりに、日焼けは全くしていない。
以前は胸まであった長い髪が、今はショートカットになっている。
「みんな、久しぶりー!」
明るく、気さくな性格は相変わらずだ。
「二人は全然変わらないね。ヴァイスはすっかりいい男になっちゃって」
「姉上、お元気そうで安心しました」
一年ほど前に一度帰って来たそうだが、そのときヴァイスは留学中だったこともあり、再会するのは実に三年振りだ。
タリダルは不機嫌そうに言う。
「お前、半年に一度くらい帰って来なさい」
「そうよ、寂しいじゃない」
ナタリーゼは全然寂しそうではない。
「ごめんごめん。でもほら、手紙は定期的に出してるでしょ?届いてるよね?」
「お前が定住してないから、こっちからは出せないのだが?」
ナタリーゼは日々旅をして、見たこともない景色や人々の暮らしを目にし、時々実家に近況を綴った手紙を送って満足していたが、さすがに帰らなさすぎたと反省したようだ。
これからはもう少し頻繁に帰って来る、と約束した。
「まあいいだろう。さて、先程の話の続きをしよう。ナタリーゼも一緒に聞きなさい」
ヴァイスはナタリーゼに、リフィアやルナントフのことを話す。
そのあと、タリダルが説明を始めた。
シャッテンというのは国王陛下直属の隠密部隊で、諜報と陰の護衛を主な任務とし、頭脳も戦闘力もスーパーエリート集団だ。
つまり、タリダルが『あいつ』と呼び、協力を仰ごうとしているのは、国王陛下である。
(とんでもない話になったな。息子の恋を応援するために、国王陛下を巻き込むというのか?)
「僕のために国王陛下が動いてくださるとは思えませんが・・・」
「なぁに、あいつも学園でクラスメイトだったんだよ。子供時代からの付き合いだし、あいつには山ほどの恩を売ってあるからね。事情を話せば、動いてくれるだろう。ああ、シャッテンの存在は、王族と公爵家でも一部の者しか知らないから他言無用だ」
ヴァイスは、国王陛下をあいつ呼びする父に若干引いている。
さらにジュリアは学園時代、シャッテンの一員だったという。
それで先程、自分も出動する、と言ったのだ。
ヴァイスは、母親が剣術に長けている理由に納得した。
一見、箱入り娘のような雰囲気と性格なのに、人は見かけではわからない。
驚きっぱなしのヴァイスに、ナタリーゼはお構いなしで情報を追加する。
「私も一時期シャッテン見習いだったんだよね」
(うちの女性陣は逞しいな・・・上の姉上もそうなのだろうか?)
ナタリーゼは旅から帰ってくると、いつもしばらくこの屋敷で過ごしている。
そのため、今回ルナントフに探りを入れる任務を任された。
タリダルは、ルナントフは暴走しそうな気がする、という予感があるそうだ。
過去、父親であるハイルトンと対立していた経験から、息子に対してそう感じている。
「腕は落ちていないだろうな?」
ナタリーゼはやる気満々で、得意気に答える。
「気配を消すのは得意だし、熊なら秒で倒せるよ」
旅をしていると、熊や狼などの野生動物に遭遇することがあり、その度に倒していたそうだ。
腕は落ちるどころか上がっている、というのは本人談だ。
「よし。私は陛下に相談して、シャッテンを動かしてもらう。これを機にハイルトンの悪事を暴いてやろうじゃないか」
ヴァイスは首を傾げる。
「悪事・・・ですか?」
「ハイルトンにはいくつか黒い噂がある。これまで野放しにしていたが、証拠を見つけ排除する」
そしてタリダルは希望の光を口にする。
「ハイルトン侯爵家の悪事を暴き失脚させれば、オルドリー嬢はすんなり婚約解消が出来るってわけさ」
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