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14、親同士の因縁
しおりを挟む(リフィアやランドホーク殿下に、婚約解消させると宣言したものの、どんな方法で・・・?)
その日の夕食時、ヴァイスは上の空だった。
両親がなにやら話をしているが、右から左へ流れてしまう。
無意識にため息をついてしまった。
「どうした?」
二人とも元気のない息子を心配する。
「悩みがあるなら、なんでも相談してちょうだいね」
「ありがとうございます」
両親に恋愛の悩みを打ち明けるのは照れくさいが、恋愛に関して寛容な人たちだ。
何か知恵を貸してくれるかもしれない。
ヴァイス一人では正直、婚約解消案が思い浮かばず行き詰まっている。
(思いきって相談してみるか?・・・いや、さすがに婚約者のいる女性に手を出したとわかれば、咎められて、諦めろと言われるだろうか?)
迷ったが、一人で考えても前に進めなさそうなので打ち明けることにした。
「あの、実は想い合っている女性がいるのですが・・・彼女には婚約者がいるんです」
「まあ、面白そうな話じゃない!」
母親のジュリアは瞳をキラキラさせ、話に食い付いてきた。
「その婚約者は彼女をとても束縛していて、手も上げました。日に日に彼女から笑顔が消えていって・・・僕は彼女を解放してあげたい。そして将来、彼女と一緒になりたいと思っています」
ヴァイスは、これまでの出来事を思い出しながら言った。
「女性に手を上げるなんて、紳士じゃないわね」
「つまり、お前は二人の婚約を解消させて、その女性と結婚したいと?」
「はい。ですが、どうやって解消させればいいのか悩んでいまして・・・」
ヴァイスは再びため息をつく。
「その女性というのは、学園の令嬢か?」
意外にも、咎められる気配はない。
「クラスメイトのリフィア・オルドリー伯爵令嬢です」
何か思い出そうとしているのか、父親のタリダルは顎に手を当てる。
オルドリー伯爵には何度か会ったことがあり、聡明な人物だったと記憶している、と教えてくれた。
その娘が婚約した、という話は以前なんとなく耳にしたが、相手が誰なのかは知らないようだ。
「ハイルトン侯爵の次男、ルナントフです」
その名を口にした瞬間、両親の顔色が変わった。
「ハイルトンだと!?」
「久しぶりに聞く名だわ」
笑みが消えたジュリアは、チラッと夫を見た。
タリダルは嫌悪の表情を見せ、鼻息を荒くする。
手元近くのフォークでテーブルをぶっ刺しそうなほどの怒りだ。
その様子は明らかに、ハイルトンとの仲は険悪だとわかるが、ヴァイスは恐る恐る聞いてみる。
「お二人はハイルトン侯爵をよくご存知なのですか?」
タリダルは呼吸を落ち着かせ語り始めた。
タリダルとジュリアとハイルトンは学園時代のクラスメイトだった。
ジュリアは子爵家出身で、学園一の美女。
それはもう男たちの憧れの的で、ほとんどの男は遠くから見ていただけだったが、タリダルとハイルトンは本気でジュリアを口説いていたという。
毎日愛の言葉を贈り、求婚し、二年半かけて口説き落としたのはタリダルで、ハイルトンとは現在でも犬猿の仲だ。
タリダルは勝ち誇った顔をしており、ジュリアにはいつの間にか笑みが戻っている。
「懐かしいわねぇ。私、もともとハイルトンは眼中になかったけど、あなたとも結婚するつもりはなかったわ」
「頑張ったなぁ、昔の私」
結婚して二十年以上経っている二人が今でも仲睦まじいのは、タリダルが昔と変わらぬ愛をジュリアに捧げているからだ。
ジュリアに誓った愛を裏切ることがないよう、生涯をかけて愛し抜いているのだろう。
彼女もそんなタリダルを慕い、公爵夫人として支えている。
「僕もお二人のような夫婦関係を築きたいな・・・」
この呟きが聞こえたのか、見つめ合って昔話に花を咲かせていた二人が息子を見る。
「お前があいつの息子に負けるのは気に食わんな。よって、お前とオルドリー嬢が上手くいくよう一肌脱ごうじゃないか」
「私も応援するわ」
二人は咎めるどころか、逆に応援をしてくれた。
ヴァイスにとって心強い味方である。
二人が恋愛結婚だということは知っていたが、学園時代の話を聞くのは初めてだ。
父親同士もライバルだったと聞かされても、不思議と驚きなはい。
血は争えないだけでなく、自分たちにはさらに、前世の因縁も関係しているが。
(両親の協力は得られたが、どうやってリフィアとルナントフの婚約を解消させるつもりなのだろうか?)
タリダルは息子の心を察したようだが、何か考えがあるようで余裕の表情だ。
そしてよくわからない話を始める。
「心配ない。婚約解消は間違いなく出来るよ。少し時間はかかるかもしれないが・・・あいつにも協力を仰いで、そしてシャッテンを動かしてもらって・・・」
「あら、じゃあ久しぶりに私も出動しようかしら!」
ジュリアは楽しそうなことが起こりそう、とでも思っていそうな笑顔だ。
「君は駄目だよ。現役を退いてどれだけ経っていると思ってるんだ・・・とにかく大人しくしていなさい」
キラキラの笑顔から、怒られた子犬のようなしょんぼり顔になってしまった。
「あの、話に全く付いていけないのですが」
「ああ、すまん。何から話そうかな―――」
タリダルの話を遮るように、部屋のドアが勢いよく開いた。
息を切らしながら入ってきたのはメイドだ。
「し、失礼いたしますっ!たった今、ナタリーゼ様がお戻りに・・・!!」
「ナタリーゼが!?」
夫婦は目を丸くし、同時に叫んだ。
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