僕が転生した世界で、前世の恋人が元ストーカー男と婚約していたので、命がけで阻止します。

悠木菓子

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 21、アーラ・サンワイア

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 ヴァイスが襲撃されたことなど知らないリフィアは週末、クラスメイトで親友のアーラと街に出かけていた。



 二人はカフェでお茶をしている。
 リフィアはプリンを注文した。
「それにしても、記憶が戻ってほんとよかったわね」
 アーラはチョコレートケーキを口に運びなから言った。
 想像以上に美味しかったのか、頬が綻んでいる。
「うん。一生戻らないかもって、少し諦めてた・・・」

 リフィアが学園で初めて出来た友達がアーラだ。
 彼女は貴族っぽさがなく、サバサバした性格で活発である。
 一年のときから同じクラスで、人見知りのリフィアでもすぐに仲良くなった。
 性格が真逆の二人だが、意外にもそれが良かったのかもしれない。
 思い出したアーラとの記憶は、街で買い物をしたり、お泊まり会をしたりと、楽しいものばかりだった。



「それで?ルナントフ様のこと、どうするの?」
 リフィアたちの三角関係にとても興味があるようだ。
 学園内でも話題になっている。
「ヴァイス様は、婚約解消できそうだって言ってたわ」
「そうなったらルナントフ様、怒り狂うわね」
 その光景を容易に想像でき、二人は苦笑いをする。
「まあ、あの人ちょっと異常よね。あなたへの執着が凄まじいわ」
「執着・・・」

 リフィアは前世のストーカー男の行動や、ルナントフの束縛を思い出す。
 前世では取引先の担当で、仕事でしか会ったことがない。
 プライベートな話をすることはあったが、これと言って共通点はなかったはずだ。
 前世の記憶があるルナントフが、カナの転生後の自分に執着するのは理解できるが、なぜこんなにも好かれているのかがわからない。
 
「それに、かよわい女子の頬を叩くなんて、最低だわ」
 アーラの顔には怒りが浮かんでいる。
「もともとは私が悪いから・・・叩かれても文句は言えないわ」
「いやいや、文句言っていいから。でも最近大人しいよね。あまり絡まれてないんじゃない?諦めたのかな?」
 最近のルナントフとは、挨拶や最低限の会話しかしていない。
「でも、婚約解消はまだしてくれないわ・・・」

「婚約解消がうまくいったとして、卒業したらすぐにトリガー様と結婚するの?」
 アーラは瞳をキラキラさせて聞いてくる。
 今は、婚約解消という目の前の問題で頭がいっぱいであり、ヴァイスとは婚約すらしていない。
「そんな先の話はまだしてないわ」と言うと、アーラは肩を落とし残念そうにした。

「そっちはどうなの?気になる人いないの?」
 アーラに婚約者はいない。
 他人の恋愛話は大好きだが、自身の恋愛には無関心だ。
 今まで浮いた話は一度もない。
「うーん、いないなぁ。今は恋愛より、働くことに興味があるの」
「働くって、どんな仕事?」
「父の職業に憧れてる」
「えっ!?アーラ、騎士になるの!?」

 アーラの家は男爵で、父親は平民出身の一代貴族だ。
 騎士隊で功績を立て叙爵し、現在はその騎士隊で指導者をしている。
 女性でも騎士になれるが、非常に珍しく数は少ない。
 
「まだわからないけどね。とにかく、今はあなたの恋愛話でお腹いっぱいだから、私自身恋愛はしばらく結構よ」
「いい人が見つかったら、教えてね」
「いつになるかなぁ」







 週が明け、ヴァイスは放課後、学園の中庭に向かっている。
 女子生徒に呼び出されたのだ。

(めんどくさいな・・・なんの用だ。ルナントフの差し金か?)

 ぼんやり考えていたら、突然後ろから勢いよく腕を引っ張られた。
 その勢いで一歩下がったその瞬間。
 ヴァイスの十五センチ先の首と胸のあたりを何かが一瞬で通りすぎた。
 ドスッドスッ、と音がした横の壁に目をやると、二本のナイフが刺さっていた。

 ヴァイスの心臓が、ドクンドクンと激しく跳ねる。
 体中から汗が噴き出す。  

(直撃してたら、死んでた・・・)

 ヴァイスを引っ張った人物が口を開く。 
「ふふ、びっくりしました?」
 聞き覚えのあるこの声は、クラスメイトであり、リフィアの親友アーラだ。
 振り返ると、にっこり笑っている。
「引っ張って、ごめんなさい。驚かそうと思ったの」
「サンワイア嬢・・・僕の目の前をナイフが横切ったのだが・・・」
「あら、こわいわぁ」
 壁のナイフを見ながら、とぼけたように言った。

(明らかに僕を狙って投げたものだ・・・フォグの仕業だろうな。このタイミングでサンワイア嬢に引っ張られたのは・・・偶然か?)

「ありがとう。おかげで助かったよ」
「私はただ驚かそうと思って、引っ張っただけですよ」
 そう言って、去って行った。
 ナイフが飛んできたことなど、まったく気にしていないようだ。



 ヴァイスは、呼び出しがフォグの仕業だと察した。
 一人になった瞬間を狙うために。
 一応中庭に行ったが、案の定誰もいなかった。

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