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3巻 2章 全てを逆撫でる御方とブリガンディとグラーチスと
竜炎の導き手
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「なんでだよ! 【チーム・美味いもん探検隊】って分かり易いだろ? どこがいけないって言うんだ」
頭を抱えるガルムとエレノール。フィオナが困ったような顔をして明後日の方向を向く。大笑いのアリーゼとグリューン。セバスさんはそのまま凍り付いたように動かなくなっている。
「あっはっは! レンジ、お前は本当に面白いな。包丁の腕前だけでなく、洒落のセンスもあるとは天晴だ……え? なんだエレノール……あれは洒落ではなく、レンジのネーミングセンスが絶望的だと。なるほど!」
アリーゼは笑い過ぎだ。エレノールもその言い方はないだろ。せめてもう少し傷つかないような言い方を考えてもいいじゃないか。
アリーゼとエレノールに容赦ないツッコミを入れられて、俺はそのまま意気消沈。変わってフィオナが間を取り繕う様に明るく提案する。
「そうですね。レンジさんの案もすごく直接的で親しみやすいとは思うんですよ。でももう少し、詩的な部分があってもいいのかなって。そうですね……例えば【エリュハルトに咲く希望の花】という命名はどうでしょうか」
フィオナの命名案に更に皆が固まる。季節は春も半ばだというのに、その場に冷たい空気が流れ込むようだ。確かに俺の命名案もどうかとは思うよ。でもフィオナだってかなり下手なポエムみたいでどうなのよ。
するとエレノールが鼻息荒く、ここぞとばかりにカウンターに身を乗り出してくる。大きな胸がカウンターの上に置かれて、一瞬俺の目が釘付けになってしまい、フィオナに睨まれてしまう。
「まったくレンジ君もフィオナも全然だめよ。センスってやつが疑われるわね! もっとこう、専門用語を使い且つカッコいい命名にすべきよ。そうね……【高効率エルナ循環運用実証チーム・コード:フレイム】なんてどうかしら」
エレノールの命名案に、その場の全員の目が更に点になる。
「お前さ、なんとなくカッコいいと思っている言葉を並べただけだろ、それ」
「な、なによ! そんなこと無いわよ! センスの無いレンジ君にだけは言われたくないわ」
俺の容赦ないツッコミ返しに、顔を真っ赤にして反論し、カウンターを何度も叩くエレノール。
おい、やめてくれ。せっかく綺麗に造ってあるのに壊すぞ。
フィオナが仲裁に入り、その横で腹を抱えて笑うアリーゼとグリューン。セバスさんは遠い目をして、魂が既にこの場には居ないかのように立ち尽くしている。
ドン……! と大きくカウンターを叩く音がして、その場の阿鼻叫喚のような様相が一気に止まる。その音はもちろんガルムが出した音だ。
「……ったく、どいつもこいつもロクな名前を考えやがらん! ええい、ワシが決める! 」
大きくため息を吐き出すと、椅子の下で尻尾を床に振り下ろし、皆を制するような力のある声で告げる。
「竜炎の導き手というのはどうだ」
ガルムがその場に居る全員と目を合わせていく。
「ワシたちは聖なる山でのドラゴンとの縁から出会ったチームだ。『竜炎の縁』という言葉を、ホワイトドラゴンが去り際に言っていたのを覚えていないか。あの言葉は、『永久に続く絆としての縁』を意味するのだ。そこから付けさせてもらった」
絆、縁。そうだよな……俺達4人と一匹は全く違う目的があったが、それでも出会い、一致団結し、様々な紆余曲折を経てこの場で座る仲となった。
「素晴らしい……と思います。なにか途方もないこのチームの成り立ちを一言で表したような命名です」
フィオナが膝の上に乗ったグリューンをぎゅっと抱きしめて、言葉の余韻に浸っている。その隣でエレノールが両手を広げ降参という仕草をする。
「さすが年の功とでもいうのかしら。ガルムにまたしても上手く纏められちゃったわ。でも素敵なチーム名よ。あたしはガルム案に1票入れるわ」
俺は聖なる山から最後の飛び立っていったホワイトドラゴンの壮大な姿を思い起こす。あの時から俺達の冒険は始まったんだ。そして全ての謎もあそこから……
「よし。そのチーム名で決定だ、ガルム。今日から【竜炎の導き手】というチームとして動き出そう」
エレノールが『パーティー結成書』の羊皮紙に俺の名前と、チーム名を書き込む。また俺が書き込むと古代魔導語になってしまうからな。こればかりは仕方ない。
「そうと決まれば、皆に話しておかなければいけないことがあるんだ。俺がこの間古龍の息吹で気を失った事を覚えているか? あの時に俺の身に起きたことを共有しておきたいんだ。」
アリーゼも含め、結成した【竜炎の導き手】としての動きの方針を決める情報の提示。やっとあの時の事を話してくれるのかという、待ちに待ったような、皆の真剣な眼差しが俺に注がれる。
頭を抱えるガルムとエレノール。フィオナが困ったような顔をして明後日の方向を向く。大笑いのアリーゼとグリューン。セバスさんはそのまま凍り付いたように動かなくなっている。
「あっはっは! レンジ、お前は本当に面白いな。包丁の腕前だけでなく、洒落のセンスもあるとは天晴だ……え? なんだエレノール……あれは洒落ではなく、レンジのネーミングセンスが絶望的だと。なるほど!」
アリーゼは笑い過ぎだ。エレノールもその言い方はないだろ。せめてもう少し傷つかないような言い方を考えてもいいじゃないか。
アリーゼとエレノールに容赦ないツッコミを入れられて、俺はそのまま意気消沈。変わってフィオナが間を取り繕う様に明るく提案する。
「そうですね。レンジさんの案もすごく直接的で親しみやすいとは思うんですよ。でももう少し、詩的な部分があってもいいのかなって。そうですね……例えば【エリュハルトに咲く希望の花】という命名はどうでしょうか」
フィオナの命名案に更に皆が固まる。季節は春も半ばだというのに、その場に冷たい空気が流れ込むようだ。確かに俺の命名案もどうかとは思うよ。でもフィオナだってかなり下手なポエムみたいでどうなのよ。
するとエレノールが鼻息荒く、ここぞとばかりにカウンターに身を乗り出してくる。大きな胸がカウンターの上に置かれて、一瞬俺の目が釘付けになってしまい、フィオナに睨まれてしまう。
「まったくレンジ君もフィオナも全然だめよ。センスってやつが疑われるわね! もっとこう、専門用語を使い且つカッコいい命名にすべきよ。そうね……【高効率エルナ循環運用実証チーム・コード:フレイム】なんてどうかしら」
エレノールの命名案に、その場の全員の目が更に点になる。
「お前さ、なんとなくカッコいいと思っている言葉を並べただけだろ、それ」
「な、なによ! そんなこと無いわよ! センスの無いレンジ君にだけは言われたくないわ」
俺の容赦ないツッコミ返しに、顔を真っ赤にして反論し、カウンターを何度も叩くエレノール。
おい、やめてくれ。せっかく綺麗に造ってあるのに壊すぞ。
フィオナが仲裁に入り、その横で腹を抱えて笑うアリーゼとグリューン。セバスさんは遠い目をして、魂が既にこの場には居ないかのように立ち尽くしている。
ドン……! と大きくカウンターを叩く音がして、その場の阿鼻叫喚のような様相が一気に止まる。その音はもちろんガルムが出した音だ。
「……ったく、どいつもこいつもロクな名前を考えやがらん! ええい、ワシが決める! 」
大きくため息を吐き出すと、椅子の下で尻尾を床に振り下ろし、皆を制するような力のある声で告げる。
「竜炎の導き手というのはどうだ」
ガルムがその場に居る全員と目を合わせていく。
「ワシたちは聖なる山でのドラゴンとの縁から出会ったチームだ。『竜炎の縁』という言葉を、ホワイトドラゴンが去り際に言っていたのを覚えていないか。あの言葉は、『永久に続く絆としての縁』を意味するのだ。そこから付けさせてもらった」
絆、縁。そうだよな……俺達4人と一匹は全く違う目的があったが、それでも出会い、一致団結し、様々な紆余曲折を経てこの場で座る仲となった。
「素晴らしい……と思います。なにか途方もないこのチームの成り立ちを一言で表したような命名です」
フィオナが膝の上に乗ったグリューンをぎゅっと抱きしめて、言葉の余韻に浸っている。その隣でエレノールが両手を広げ降参という仕草をする。
「さすが年の功とでもいうのかしら。ガルムにまたしても上手く纏められちゃったわ。でも素敵なチーム名よ。あたしはガルム案に1票入れるわ」
俺は聖なる山から最後の飛び立っていったホワイトドラゴンの壮大な姿を思い起こす。あの時から俺達の冒険は始まったんだ。そして全ての謎もあそこから……
「よし。そのチーム名で決定だ、ガルム。今日から【竜炎の導き手】というチームとして動き出そう」
エレノールが『パーティー結成書』の羊皮紙に俺の名前と、チーム名を書き込む。また俺が書き込むと古代魔導語になってしまうからな。こればかりは仕方ない。
「そうと決まれば、皆に話しておかなければいけないことがあるんだ。俺がこの間古龍の息吹で気を失った事を覚えているか? あの時に俺の身に起きたことを共有しておきたいんだ。」
アリーゼも含め、結成した【竜炎の導き手】としての動きの方針を決める情報の提示。やっとあの時の事を話してくれるのかという、待ちに待ったような、皆の真剣な眼差しが俺に注がれる。
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