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第1章 異世界教へようこそ
第3話 異世界教始動(前編)
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『僕と沙羅に与えられた使命』
①異世界リンゴをより多くの人に分け与える。
②使命を受ける者は異世界リンゴを食べてはいけない。
③黄金のリンゴの他、違ったリンゴが穫れることがある。それを上納すること。
「異世界リンゴを食べると結衣を探す光輝の力となるの。その力をより多く集めるために異世界教を作って信者を増やしていくのよ」
「そんな団体って簡単に作れないんじゃ……。できても怪しい存在に思われちゃうんじゃない」
「大丈夫よ、私がなんとかするから。朔弥には優秀なサポーターがついてるんだから大船に乗った気でリンゴを作りなさい」
使命を聞いたという沙羅の言葉を疑う余地はない。失敗したとしても別の方法を考えればいいだけ、結衣たちを助けるために出来ることは全部やってみよう。
心のなかに生まれた決意……「絶対に光輝たちを助ける! 僕たちにしか出来ないことなんだ」
「そうよ、早速リンゴを生み出しましょう。まずは目を瞑って体の中にある木を探ってみて」
言われたとおり目を瞑る。体の中を探るように意識を集中させていく……目の奥から始まり脳内をグルっと巡り首から降りる。昔読んだ、気を巡らす本を実践しているような感覚。体の中を這い回るように動かしていくと爽やかな風が流れた気がした。
丹田に近づくにつれて見えてくる空……草原……揺らめく樹木。多くの葉が茂りザワザワと爽やかな音が駆け抜ける。そこに向かって一歩一歩近づいていく……
樹木の反対側にチラリと見える人影、覗き込むと裸の女性が手を付いて遠くを眺めていた。
「うわ」
焦った僕は後ずさって尻もちを付く、それに気づいた彼女は裸の肢体をなびかせ僕に近づくと、あんぐりしている僕の口に何かを放り込み人差し指を唇の前に立てて『シー』のポーズをするとクルリと回ってどこともなく消えていった。
そのままの姿勢で樹木を見上げる。口に入れられた物体は喉を抜け胃に向かって落ちていくのが分かる……それ以上の衝撃が僕を襲う……
「リ、リンゴが……」
手の届く位置、樹木から伸びた一本の枝に実リンゴ、起き上がってリンゴを掴むと──
「うわっ」
沙羅の部屋。ソファーに座っている。目の前でにこやかな顔をしている沙羅、その目線の先……
「採れたようね」
僕の手に握られているリンゴ、スモモの様に小さく可愛い。
「これが……異世界リンゴ」
「それを使って光輝と結衣を助けるのよ」
この先のことを沙羅から説明を受けた。異世界リンゴを朔弥が作り出すという事は絶対に口外しないことだけは厳しく言われたのだった。
* * *
「いーい、最初のターゲットは『相田 琢磨』よ。異世界好きでお喋りな彼が最適だと思うの」
机に座って小説を読んでいる琢磨を廊下から覗き込んで様子を見る。異世界教……異世界リンゴ……こんなことを話したらおかしくなってしまったとのではと思われる気しかしない。
「ホントにやるの……?」
恐る恐る聞く僕の言葉に「光輝や結衣を助けるんでしょ。異世界のことで語りたいとか言って連れだしてきてちょうだい、後は私がうまくやるから」と檄が入った。
入り口を潜り彼に向かって……その道のりを逃げ出したい心が邪魔をする。視線を散らし最短距離を避け……とうとう訪れた異世界教の第一歩。
「琢磨くん……」
本に向かう視線がこちらに移る。
「ああ、朔弥くんか。どうしたの? 光輝くんや出雲さんはどこに行っちゃったんだろうね」
心のなかにチクリとしたもの。僕たちの勝手で彼を巻き込んでしまうのだ。そんな罪悪感が言葉を詰まらせたが、思い切って、
「琢磨くんに放課後、異世界のことを教えてほしいんだ。いろいろな知識を持ってそうだから……」
ラノベ仲間ではない僕からの質問に一瞬怪訝な表情、しかし直ぐに笑顔へと変わった。
「まさか光輝くんたちが異世界にでもいるんじゃないかって……そんな訳ないよな。いいぜ、俺はラノベの素晴らしさを広めたいと常々思ってるからな。何がキッカケであれ興味を持ってくれたなら大歓迎だぜ」
そう言って1冊の本を手渡された。表紙には可愛らしい女の子、中央で風呂に入る主人公らしき男が描かれている。
「それな、俺がラノベにハマるキッカケになった本なんだ。荒削りだけど中々良いから読んでみな」
本を受け取り「ありがとう」と教室を出る。すぐさま沙羅に腕を掴まれると人気のない所に引っ張られた。
「良く話したじゃない。ちょっと心配だったけどこれで第1関門突破ね。学校の近くに私の家があるからそこで話しましょう」
「家? って、沙羅は良く迎えに来てもらっていなかったっけ?」
「何も無いときはね……ああ、近くの家って明智家じゃなくって私個人の家ね。遅くなったときとかひとりになりたい時とかに使うの」
流石というかなんというか、高校に入ってからの付き合いだが別宅まで持っていたなんて驚くばかり。
「おい」
隠れて話しをする僕たちを呼ぶ声……この声は、
「雫!」
「こんな影でコソコソ何をやっている」
声をかけてきたのは、斑霧 雫。光輝や結衣と同じ幼馴染のひとりである。中学2年生までは良く一緒に居たが、いつのまにか距離が出来ていた。グレてしまったせいもあるが、あんなに穏やかだった彼女が急変して驚いたのを覚えている。
「あら、雫さんではありませんか。なんの要件かしら」
ポニーテールを揺らしながら「朔弥を見かけたから声をかけただけだ。今日は付き合って欲しいところがあってな」
「あら残念ですわ、今日は友人を招いての約束があるんですの。またにしてくださるかしら」
沙羅の言葉に、「そうか、それならまた後にしよう」と踵を返す。
「ごめんな雫、あとで連絡するな」
僕の言葉が届いていたのか無視されたのかは分からないが、返事もなくどこかへ行ってしまった。
①異世界リンゴをより多くの人に分け与える。
②使命を受ける者は異世界リンゴを食べてはいけない。
③黄金のリンゴの他、違ったリンゴが穫れることがある。それを上納すること。
「異世界リンゴを食べると結衣を探す光輝の力となるの。その力をより多く集めるために異世界教を作って信者を増やしていくのよ」
「そんな団体って簡単に作れないんじゃ……。できても怪しい存在に思われちゃうんじゃない」
「大丈夫よ、私がなんとかするから。朔弥には優秀なサポーターがついてるんだから大船に乗った気でリンゴを作りなさい」
使命を聞いたという沙羅の言葉を疑う余地はない。失敗したとしても別の方法を考えればいいだけ、結衣たちを助けるために出来ることは全部やってみよう。
心のなかに生まれた決意……「絶対に光輝たちを助ける! 僕たちにしか出来ないことなんだ」
「そうよ、早速リンゴを生み出しましょう。まずは目を瞑って体の中にある木を探ってみて」
言われたとおり目を瞑る。体の中を探るように意識を集中させていく……目の奥から始まり脳内をグルっと巡り首から降りる。昔読んだ、気を巡らす本を実践しているような感覚。体の中を這い回るように動かしていくと爽やかな風が流れた気がした。
丹田に近づくにつれて見えてくる空……草原……揺らめく樹木。多くの葉が茂りザワザワと爽やかな音が駆け抜ける。そこに向かって一歩一歩近づいていく……
樹木の反対側にチラリと見える人影、覗き込むと裸の女性が手を付いて遠くを眺めていた。
「うわ」
焦った僕は後ずさって尻もちを付く、それに気づいた彼女は裸の肢体をなびかせ僕に近づくと、あんぐりしている僕の口に何かを放り込み人差し指を唇の前に立てて『シー』のポーズをするとクルリと回ってどこともなく消えていった。
そのままの姿勢で樹木を見上げる。口に入れられた物体は喉を抜け胃に向かって落ちていくのが分かる……それ以上の衝撃が僕を襲う……
「リ、リンゴが……」
手の届く位置、樹木から伸びた一本の枝に実リンゴ、起き上がってリンゴを掴むと──
「うわっ」
沙羅の部屋。ソファーに座っている。目の前でにこやかな顔をしている沙羅、その目線の先……
「採れたようね」
僕の手に握られているリンゴ、スモモの様に小さく可愛い。
「これが……異世界リンゴ」
「それを使って光輝と結衣を助けるのよ」
この先のことを沙羅から説明を受けた。異世界リンゴを朔弥が作り出すという事は絶対に口外しないことだけは厳しく言われたのだった。
* * *
「いーい、最初のターゲットは『相田 琢磨』よ。異世界好きでお喋りな彼が最適だと思うの」
机に座って小説を読んでいる琢磨を廊下から覗き込んで様子を見る。異世界教……異世界リンゴ……こんなことを話したらおかしくなってしまったとのではと思われる気しかしない。
「ホントにやるの……?」
恐る恐る聞く僕の言葉に「光輝や結衣を助けるんでしょ。異世界のことで語りたいとか言って連れだしてきてちょうだい、後は私がうまくやるから」と檄が入った。
入り口を潜り彼に向かって……その道のりを逃げ出したい心が邪魔をする。視線を散らし最短距離を避け……とうとう訪れた異世界教の第一歩。
「琢磨くん……」
本に向かう視線がこちらに移る。
「ああ、朔弥くんか。どうしたの? 光輝くんや出雲さんはどこに行っちゃったんだろうね」
心のなかにチクリとしたもの。僕たちの勝手で彼を巻き込んでしまうのだ。そんな罪悪感が言葉を詰まらせたが、思い切って、
「琢磨くんに放課後、異世界のことを教えてほしいんだ。いろいろな知識を持ってそうだから……」
ラノベ仲間ではない僕からの質問に一瞬怪訝な表情、しかし直ぐに笑顔へと変わった。
「まさか光輝くんたちが異世界にでもいるんじゃないかって……そんな訳ないよな。いいぜ、俺はラノベの素晴らしさを広めたいと常々思ってるからな。何がキッカケであれ興味を持ってくれたなら大歓迎だぜ」
そう言って1冊の本を手渡された。表紙には可愛らしい女の子、中央で風呂に入る主人公らしき男が描かれている。
「それな、俺がラノベにハマるキッカケになった本なんだ。荒削りだけど中々良いから読んでみな」
本を受け取り「ありがとう」と教室を出る。すぐさま沙羅に腕を掴まれると人気のない所に引っ張られた。
「良く話したじゃない。ちょっと心配だったけどこれで第1関門突破ね。学校の近くに私の家があるからそこで話しましょう」
「家? って、沙羅は良く迎えに来てもらっていなかったっけ?」
「何も無いときはね……ああ、近くの家って明智家じゃなくって私個人の家ね。遅くなったときとかひとりになりたい時とかに使うの」
流石というかなんというか、高校に入ってからの付き合いだが別宅まで持っていたなんて驚くばかり。
「おい」
隠れて話しをする僕たちを呼ぶ声……この声は、
「雫!」
「こんな影でコソコソ何をやっている」
声をかけてきたのは、斑霧 雫。光輝や結衣と同じ幼馴染のひとりである。中学2年生までは良く一緒に居たが、いつのまにか距離が出来ていた。グレてしまったせいもあるが、あんなに穏やかだった彼女が急変して驚いたのを覚えている。
「あら、雫さんではありませんか。なんの要件かしら」
ポニーテールを揺らしながら「朔弥を見かけたから声をかけただけだ。今日は付き合って欲しいところがあってな」
「あら残念ですわ、今日は友人を招いての約束があるんですの。またにしてくださるかしら」
沙羅の言葉に、「そうか、それならまた後にしよう」と踵を返す。
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