4 / 76
第1章 異世界教へようこそ
第3話 異世界教始動(前編)
しおりを挟む
『僕と沙羅に与えられた使命』
①異世界リンゴをより多くの人に分け与える。
②使命を受ける者は異世界リンゴを食べてはいけない。
③黄金のリンゴの他、違ったリンゴが穫れることがある。それを上納すること。
「異世界リンゴを食べると結衣を探す光輝の力となるの。その力をより多く集めるために異世界教を作って信者を増やしていくのよ」
「そんな団体って簡単に作れないんじゃ……。できても怪しい存在に思われちゃうんじゃない」
「大丈夫よ、私がなんとかするから。朔弥には優秀なサポーターがついてるんだから大船に乗った気でリンゴを作りなさい」
使命を聞いたという沙羅の言葉を疑う余地はない。失敗したとしても別の方法を考えればいいだけ、結衣たちを助けるために出来ることは全部やってみよう。
心のなかに生まれた決意……「絶対に光輝たちを助ける! 僕たちにしか出来ないことなんだ」
「そうよ、早速リンゴを生み出しましょう。まずは目を瞑って体の中にある木を探ってみて」
言われたとおり目を瞑る。体の中を探るように意識を集中させていく……目の奥から始まり脳内をグルっと巡り首から降りる。昔読んだ、気を巡らす本を実践しているような感覚。体の中を這い回るように動かしていくと爽やかな風が流れた気がした。
丹田に近づくにつれて見えてくる空……草原……揺らめく樹木。多くの葉が茂りザワザワと爽やかな音が駆け抜ける。そこに向かって一歩一歩近づいていく……
樹木の反対側にチラリと見える人影、覗き込むと裸の女性が手を付いて遠くを眺めていた。
「うわ」
焦った僕は後ずさって尻もちを付く、それに気づいた彼女は裸の肢体をなびかせ僕に近づくと、あんぐりしている僕の口に何かを放り込み人差し指を唇の前に立てて『シー』のポーズをするとクルリと回ってどこともなく消えていった。
そのままの姿勢で樹木を見上げる。口に入れられた物体は喉を抜け胃に向かって落ちていくのが分かる……それ以上の衝撃が僕を襲う……
「リ、リンゴが……」
手の届く位置、樹木から伸びた一本の枝に実リンゴ、起き上がってリンゴを掴むと──
「うわっ」
沙羅の部屋。ソファーに座っている。目の前でにこやかな顔をしている沙羅、その目線の先……
「採れたようね」
僕の手に握られているリンゴ、スモモの様に小さく可愛い。
「これが……異世界リンゴ」
「それを使って光輝と結衣を助けるのよ」
この先のことを沙羅から説明を受けた。異世界リンゴを朔弥が作り出すという事は絶対に口外しないことだけは厳しく言われたのだった。
* * *
「いーい、最初のターゲットは『相田 琢磨』よ。異世界好きでお喋りな彼が最適だと思うの」
机に座って小説を読んでいる琢磨を廊下から覗き込んで様子を見る。異世界教……異世界リンゴ……こんなことを話したらおかしくなってしまったとのではと思われる気しかしない。
「ホントにやるの……?」
恐る恐る聞く僕の言葉に「光輝や結衣を助けるんでしょ。異世界のことで語りたいとか言って連れだしてきてちょうだい、後は私がうまくやるから」と檄が入った。
入り口を潜り彼に向かって……その道のりを逃げ出したい心が邪魔をする。視線を散らし最短距離を避け……とうとう訪れた異世界教の第一歩。
「琢磨くん……」
本に向かう視線がこちらに移る。
「ああ、朔弥くんか。どうしたの? 光輝くんや出雲さんはどこに行っちゃったんだろうね」
心のなかにチクリとしたもの。僕たちの勝手で彼を巻き込んでしまうのだ。そんな罪悪感が言葉を詰まらせたが、思い切って、
「琢磨くんに放課後、異世界のことを教えてほしいんだ。いろいろな知識を持ってそうだから……」
ラノベ仲間ではない僕からの質問に一瞬怪訝な表情、しかし直ぐに笑顔へと変わった。
「まさか光輝くんたちが異世界にでもいるんじゃないかって……そんな訳ないよな。いいぜ、俺はラノベの素晴らしさを広めたいと常々思ってるからな。何がキッカケであれ興味を持ってくれたなら大歓迎だぜ」
そう言って1冊の本を手渡された。表紙には可愛らしい女の子、中央で風呂に入る主人公らしき男が描かれている。
「それな、俺がラノベにハマるキッカケになった本なんだ。荒削りだけど中々良いから読んでみな」
本を受け取り「ありがとう」と教室を出る。すぐさま沙羅に腕を掴まれると人気のない所に引っ張られた。
「良く話したじゃない。ちょっと心配だったけどこれで第1関門突破ね。学校の近くに私の家があるからそこで話しましょう」
「家? って、沙羅は良く迎えに来てもらっていなかったっけ?」
「何も無いときはね……ああ、近くの家って明智家じゃなくって私個人の家ね。遅くなったときとかひとりになりたい時とかに使うの」
流石というかなんというか、高校に入ってからの付き合いだが別宅まで持っていたなんて驚くばかり。
「おい」
隠れて話しをする僕たちを呼ぶ声……この声は、
「雫!」
「こんな影でコソコソ何をやっている」
声をかけてきたのは、斑霧 雫。光輝や結衣と同じ幼馴染のひとりである。中学2年生までは良く一緒に居たが、いつのまにか距離が出来ていた。グレてしまったせいもあるが、あんなに穏やかだった彼女が急変して驚いたのを覚えている。
「あら、雫さんではありませんか。なんの要件かしら」
ポニーテールを揺らしながら「朔弥を見かけたから声をかけただけだ。今日は付き合って欲しいところがあってな」
「あら残念ですわ、今日は友人を招いての約束があるんですの。またにしてくださるかしら」
沙羅の言葉に、「そうか、それならまた後にしよう」と踵を返す。
「ごめんな雫、あとで連絡するな」
僕の言葉が届いていたのか無視されたのかは分からないが、返事もなくどこかへ行ってしまった。
①異世界リンゴをより多くの人に分け与える。
②使命を受ける者は異世界リンゴを食べてはいけない。
③黄金のリンゴの他、違ったリンゴが穫れることがある。それを上納すること。
「異世界リンゴを食べると結衣を探す光輝の力となるの。その力をより多く集めるために異世界教を作って信者を増やしていくのよ」
「そんな団体って簡単に作れないんじゃ……。できても怪しい存在に思われちゃうんじゃない」
「大丈夫よ、私がなんとかするから。朔弥には優秀なサポーターがついてるんだから大船に乗った気でリンゴを作りなさい」
使命を聞いたという沙羅の言葉を疑う余地はない。失敗したとしても別の方法を考えればいいだけ、結衣たちを助けるために出来ることは全部やってみよう。
心のなかに生まれた決意……「絶対に光輝たちを助ける! 僕たちにしか出来ないことなんだ」
「そうよ、早速リンゴを生み出しましょう。まずは目を瞑って体の中にある木を探ってみて」
言われたとおり目を瞑る。体の中を探るように意識を集中させていく……目の奥から始まり脳内をグルっと巡り首から降りる。昔読んだ、気を巡らす本を実践しているような感覚。体の中を這い回るように動かしていくと爽やかな風が流れた気がした。
丹田に近づくにつれて見えてくる空……草原……揺らめく樹木。多くの葉が茂りザワザワと爽やかな音が駆け抜ける。そこに向かって一歩一歩近づいていく……
樹木の反対側にチラリと見える人影、覗き込むと裸の女性が手を付いて遠くを眺めていた。
「うわ」
焦った僕は後ずさって尻もちを付く、それに気づいた彼女は裸の肢体をなびかせ僕に近づくと、あんぐりしている僕の口に何かを放り込み人差し指を唇の前に立てて『シー』のポーズをするとクルリと回ってどこともなく消えていった。
そのままの姿勢で樹木を見上げる。口に入れられた物体は喉を抜け胃に向かって落ちていくのが分かる……それ以上の衝撃が僕を襲う……
「リ、リンゴが……」
手の届く位置、樹木から伸びた一本の枝に実リンゴ、起き上がってリンゴを掴むと──
「うわっ」
沙羅の部屋。ソファーに座っている。目の前でにこやかな顔をしている沙羅、その目線の先……
「採れたようね」
僕の手に握られているリンゴ、スモモの様に小さく可愛い。
「これが……異世界リンゴ」
「それを使って光輝と結衣を助けるのよ」
この先のことを沙羅から説明を受けた。異世界リンゴを朔弥が作り出すという事は絶対に口外しないことだけは厳しく言われたのだった。
* * *
「いーい、最初のターゲットは『相田 琢磨』よ。異世界好きでお喋りな彼が最適だと思うの」
机に座って小説を読んでいる琢磨を廊下から覗き込んで様子を見る。異世界教……異世界リンゴ……こんなことを話したらおかしくなってしまったとのではと思われる気しかしない。
「ホントにやるの……?」
恐る恐る聞く僕の言葉に「光輝や結衣を助けるんでしょ。異世界のことで語りたいとか言って連れだしてきてちょうだい、後は私がうまくやるから」と檄が入った。
入り口を潜り彼に向かって……その道のりを逃げ出したい心が邪魔をする。視線を散らし最短距離を避け……とうとう訪れた異世界教の第一歩。
「琢磨くん……」
本に向かう視線がこちらに移る。
「ああ、朔弥くんか。どうしたの? 光輝くんや出雲さんはどこに行っちゃったんだろうね」
心のなかにチクリとしたもの。僕たちの勝手で彼を巻き込んでしまうのだ。そんな罪悪感が言葉を詰まらせたが、思い切って、
「琢磨くんに放課後、異世界のことを教えてほしいんだ。いろいろな知識を持ってそうだから……」
ラノベ仲間ではない僕からの質問に一瞬怪訝な表情、しかし直ぐに笑顔へと変わった。
「まさか光輝くんたちが異世界にでもいるんじゃないかって……そんな訳ないよな。いいぜ、俺はラノベの素晴らしさを広めたいと常々思ってるからな。何がキッカケであれ興味を持ってくれたなら大歓迎だぜ」
そう言って1冊の本を手渡された。表紙には可愛らしい女の子、中央で風呂に入る主人公らしき男が描かれている。
「それな、俺がラノベにハマるキッカケになった本なんだ。荒削りだけど中々良いから読んでみな」
本を受け取り「ありがとう」と教室を出る。すぐさま沙羅に腕を掴まれると人気のない所に引っ張られた。
「良く話したじゃない。ちょっと心配だったけどこれで第1関門突破ね。学校の近くに私の家があるからそこで話しましょう」
「家? って、沙羅は良く迎えに来てもらっていなかったっけ?」
「何も無いときはね……ああ、近くの家って明智家じゃなくって私個人の家ね。遅くなったときとかひとりになりたい時とかに使うの」
流石というかなんというか、高校に入ってからの付き合いだが別宅まで持っていたなんて驚くばかり。
「おい」
隠れて話しをする僕たちを呼ぶ声……この声は、
「雫!」
「こんな影でコソコソ何をやっている」
声をかけてきたのは、斑霧 雫。光輝や結衣と同じ幼馴染のひとりである。中学2年生までは良く一緒に居たが、いつのまにか距離が出来ていた。グレてしまったせいもあるが、あんなに穏やかだった彼女が急変して驚いたのを覚えている。
「あら、雫さんではありませんか。なんの要件かしら」
ポニーテールを揺らしながら「朔弥を見かけたから声をかけただけだ。今日は付き合って欲しいところがあってな」
「あら残念ですわ、今日は友人を招いての約束があるんですの。またにしてくださるかしら」
沙羅の言葉に、「そうか、それならまた後にしよう」と踵を返す。
「ごめんな雫、あとで連絡するな」
僕の言葉が届いていたのか無視されたのかは分からないが、返事もなくどこかへ行ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
聖女じゃない私たち
あんど もあ
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生二人。王太子によって、片方は「聖女」として王宮に迎えられ、片方は「ただの異世界人」と地方の男爵に押し付けられた。だが、その判断に納得する二人ではなく……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる