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第2章 異世界教と異世界教
第13話 潰された街(前編)
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「またこの場所か」
再び辿り着いた深い森の中、微かな木漏れ日が地面を照らし石碑を照らす。どうやら僕が異世界に来る時はこの場所のようだ。
草深い場所、踏みしめるたびに緑の臭いが漂ってくる。沙羅に言われた通り石碑に触れないように避けた時、あることに気づいた。
「どこに行けば良いんだろう……」
異世界に来ることが目的になって何をするかまで考えていなかった。
「とりあえずこの間、警備っぽい人が走ってきた方に行ってみるか」
と、歩みを進める。
「やっぱりいきなり捕えられたら嫌だし……」
と戻る。
「いやいや異世界教って言ってたし光輝もいるだろうし……」
と、歩みを進める。
「でも沙羅にリンゴを食べるなって言われてるし……」
と戻る。
言ったり来たりを繰り返すこと10分。
「困った」
足を止め大きく肩を落とした。
「何が困ったの?」
心臓が一瞬止まった。いきなり声をかけられワープしたかの如く後ずさる。
見つかった……捕らえられてしまうんだ……でも光輝が居るから……頭の中がグルグル巡りフラフラしたまま下がり続け石碑にぶつかってしまった。
一瞬体に覚える違和感、風のようなものが入ってきたような感覚……しかし急に声をかけてきた主に気になって頭から抜けてしまった。
「あのさーサクラくん、会っていきなりあとずさるなんて失礼じゃない?」
サクラって誰だ? 人違い? グルグル巡る頭を冷静にさせる。声の主は……
「雫!」
「やっぱりサクラくんは私のことを知っているのね。あえて聞かないけど私もあなたのことを知っているのかしら」
「なんかクン付けされるとむず痒いなぁ。昔は雫とも仲が良かったんだよ」
「昔かぁ……私ってどんな人間だったんだろう」と雫は一瞬暗い顔をするが、「じゃあわたしもサクラって呼ぶね」
笑顔で会話できることが嬉しい。こうやって話していると好きだった記憶…初恋の甘酸っぱい記憶が蘇り恥ずかしさから無意識に口がすぼんでしまう。
「この間はゴメンね。このエリアで人を見かけたら報告しないといけないことになってるの。でも名前は言わなかったわ……きっとあなたはわたしにとって特別な何かのような気がするの」
「そっか……それであの時……人が走ってきたのか」
それでも雫の事情を考えると仕方がないのかも知れない。あの耳の裏を搔く仕草は本当に申し訳ないと思っている時に出てしまう雫の癖だ。
「お詫びにわたしの住んでいる所にこない? さっきの感じだとどうせ行くとこ無いんでしょ」
ここに到着した時フラフラ迷っている所を見られていたようだ。
「うん……でも異世界教の人とは会いたくないと言うか……会えないというか……」
思わず口ごもってしまう。(こっちの)異世界教徒である雫の前で (あっちの)異世界教教祖である僕の言う言葉ではない。
「大丈夫よ。わたしの住んでいるところに異世界教徒はいないから」
異世界教徒が異世界教教徒のいないところに住んでいる。後から考えれば違和感しかない言葉。
しかしこの時は僕のことを知っている人がいない場所にいけることが嬉しくて気づかなかった。
「やった。じゃあお願いしていいかな」
「お姉さんに任せなさい!」
「お姉さんって同じ年じゃん」
「そうなの? じゃあこの世界のことを君よりも知っているお姉さんね」
そんな和やかな感じ雑談しながら道中を案内された。
「なんか凄いところを通りますね」
路を外れ森の奥に向かっているようだ。
「この先は異世界教徒がいるからね、希望通り会わないように迂回するの」
手を加えられていない美しい緑の中を歩いていく。しかし進むにつれて壊れた家具や汚れた資材、ゴミなんかが風景に溶け込んできた。
怪しさ半分怖さ半分、一緒にいるのが雫だったから少しは安心できた。
さらにひどくなる投棄物に気になって見回す回数が増えてくる。
頻回になりすぎて挙動不審な僕、雫が見ているときは平静を取り繕っていたが遂にバレてしまった。
「大丈夫よそんなに警戒しなくても……」と両手を広げて周りを見回し苦笑いをする雫、「でもこの有様じゃあ怖くもなるわよねぇ」
足を止めて真剣な表情になると雫はゆっくりと口を開いた。
「これから行くのはシュッセル。元々は都市として栄えていたんだけど、ユランダ・メシアの建設で資材置き場やゴミ捨て場にされてしまったの」
「ユランダ・メシア?」
「そうよ、異世界教が作った街よ。異世界教徒を中心に信仰を誓ったこの世界の人達が住んでいるわ」
ソウジャ様と呼ばれる者と光輝が教祖の異世界教、教徒たちが作った街、一体どういうことだ。
この世界に足を踏み入れた異世界教徒の中で能力を持たない雫が監視役として派遣されたらしい。
「派遣と言っても体よく追い出された感じね。でも何も分からないわたしの居場所を作ってくれたことには感謝しないとね」
「雫はなんで能力がないの?」
「異世界リンゴを食べてこっちに来た人は自分の能力が知識の中にあるらしいの。たぶん何かのきっかけで記憶がなくなったから何が使えるのか覚えてないのだと思うわ」
雫は異世界リンゴは食べていない。自らこっちの世界に来るために沙羅によって黄金のリンゴを食べた。これは伝えたほうが良いのか迷っていた。
「でもねサクラ、わたしは今のままで良いとも思ってるの……」……「だって、みんなと違って元の世界と記憶が共有されていないから……」
そういえば琢磨くんや憲久くんは高校生としての記憶、異世界での記憶、共に持っているようだった。
「それって何か大切なことなの?」
「わたしは良く分からないんだけど、両世界の記憶が途切れることなく動いているようなの。どっちの世界も普通に生活しているみたい」
良く分からない。両方の世界で活動しているが時間は途切れず両方とも記憶に残るっか。
考え方はコピーか……でも……コピーだと物理的には別物だしリンク……良く分からん。
「うーん……」
「まぁ難しいことはいいじゃない。言えることはわたしはこっちの世界に来た人間。向こうの記憶は全く無い、異能の力がない分、叩く杭がないってことかもね」
「物置に派遣されてるのに?」
「その程度で済んでるってことよ。それにサクラも同じようなものなんでしょ」
確かにそうだ。途切れることなく両世界の記憶は共有していない。
2つの時間が並行に流れていると仮定するとどちらかしか存在していない……そういった意味では雫と一緒。
でも僕は『異世界リンゴ』を食べて来ているし……雫の言う通り能力も知識として持ってないし……何らかのキッカケで戻されるし……ぶつぶつ
「まぁいいじゃない。この世界に飛ばされた異世界教徒ではない人間を罪人として捕縛するからね、ユランダ・メシアは……」
「え”!?」
「だからサクラはしばらく自分のことが分かるまで隠れていたほうがいいと思ったの」
こうして僕は雫に従うままシェッセルに向かうのだった。
再び辿り着いた深い森の中、微かな木漏れ日が地面を照らし石碑を照らす。どうやら僕が異世界に来る時はこの場所のようだ。
草深い場所、踏みしめるたびに緑の臭いが漂ってくる。沙羅に言われた通り石碑に触れないように避けた時、あることに気づいた。
「どこに行けば良いんだろう……」
異世界に来ることが目的になって何をするかまで考えていなかった。
「とりあえずこの間、警備っぽい人が走ってきた方に行ってみるか」
と、歩みを進める。
「やっぱりいきなり捕えられたら嫌だし……」
と戻る。
「いやいや異世界教って言ってたし光輝もいるだろうし……」
と、歩みを進める。
「でも沙羅にリンゴを食べるなって言われてるし……」
と戻る。
言ったり来たりを繰り返すこと10分。
「困った」
足を止め大きく肩を落とした。
「何が困ったの?」
心臓が一瞬止まった。いきなり声をかけられワープしたかの如く後ずさる。
見つかった……捕らえられてしまうんだ……でも光輝が居るから……頭の中がグルグル巡りフラフラしたまま下がり続け石碑にぶつかってしまった。
一瞬体に覚える違和感、風のようなものが入ってきたような感覚……しかし急に声をかけてきた主に気になって頭から抜けてしまった。
「あのさーサクラくん、会っていきなりあとずさるなんて失礼じゃない?」
サクラって誰だ? 人違い? グルグル巡る頭を冷静にさせる。声の主は……
「雫!」
「やっぱりサクラくんは私のことを知っているのね。あえて聞かないけど私もあなたのことを知っているのかしら」
「なんかクン付けされるとむず痒いなぁ。昔は雫とも仲が良かったんだよ」
「昔かぁ……私ってどんな人間だったんだろう」と雫は一瞬暗い顔をするが、「じゃあわたしもサクラって呼ぶね」
笑顔で会話できることが嬉しい。こうやって話していると好きだった記憶…初恋の甘酸っぱい記憶が蘇り恥ずかしさから無意識に口がすぼんでしまう。
「この間はゴメンね。このエリアで人を見かけたら報告しないといけないことになってるの。でも名前は言わなかったわ……きっとあなたはわたしにとって特別な何かのような気がするの」
「そっか……それであの時……人が走ってきたのか」
それでも雫の事情を考えると仕方がないのかも知れない。あの耳の裏を搔く仕草は本当に申し訳ないと思っている時に出てしまう雫の癖だ。
「お詫びにわたしの住んでいる所にこない? さっきの感じだとどうせ行くとこ無いんでしょ」
ここに到着した時フラフラ迷っている所を見られていたようだ。
「うん……でも異世界教の人とは会いたくないと言うか……会えないというか……」
思わず口ごもってしまう。(こっちの)異世界教徒である雫の前で (あっちの)異世界教教祖である僕の言う言葉ではない。
「大丈夫よ。わたしの住んでいるところに異世界教徒はいないから」
異世界教徒が異世界教教徒のいないところに住んでいる。後から考えれば違和感しかない言葉。
しかしこの時は僕のことを知っている人がいない場所にいけることが嬉しくて気づかなかった。
「やった。じゃあお願いしていいかな」
「お姉さんに任せなさい!」
「お姉さんって同じ年じゃん」
「そうなの? じゃあこの世界のことを君よりも知っているお姉さんね」
そんな和やかな感じ雑談しながら道中を案内された。
「なんか凄いところを通りますね」
路を外れ森の奥に向かっているようだ。
「この先は異世界教徒がいるからね、希望通り会わないように迂回するの」
手を加えられていない美しい緑の中を歩いていく。しかし進むにつれて壊れた家具や汚れた資材、ゴミなんかが風景に溶け込んできた。
怪しさ半分怖さ半分、一緒にいるのが雫だったから少しは安心できた。
さらにひどくなる投棄物に気になって見回す回数が増えてくる。
頻回になりすぎて挙動不審な僕、雫が見ているときは平静を取り繕っていたが遂にバレてしまった。
「大丈夫よそんなに警戒しなくても……」と両手を広げて周りを見回し苦笑いをする雫、「でもこの有様じゃあ怖くもなるわよねぇ」
足を止めて真剣な表情になると雫はゆっくりと口を開いた。
「これから行くのはシュッセル。元々は都市として栄えていたんだけど、ユランダ・メシアの建設で資材置き場やゴミ捨て場にされてしまったの」
「ユランダ・メシア?」
「そうよ、異世界教が作った街よ。異世界教徒を中心に信仰を誓ったこの世界の人達が住んでいるわ」
ソウジャ様と呼ばれる者と光輝が教祖の異世界教、教徒たちが作った街、一体どういうことだ。
この世界に足を踏み入れた異世界教徒の中で能力を持たない雫が監視役として派遣されたらしい。
「派遣と言っても体よく追い出された感じね。でも何も分からないわたしの居場所を作ってくれたことには感謝しないとね」
「雫はなんで能力がないの?」
「異世界リンゴを食べてこっちに来た人は自分の能力が知識の中にあるらしいの。たぶん何かのきっかけで記憶がなくなったから何が使えるのか覚えてないのだと思うわ」
雫は異世界リンゴは食べていない。自らこっちの世界に来るために沙羅によって黄金のリンゴを食べた。これは伝えたほうが良いのか迷っていた。
「でもねサクラ、わたしは今のままで良いとも思ってるの……」……「だって、みんなと違って元の世界と記憶が共有されていないから……」
そういえば琢磨くんや憲久くんは高校生としての記憶、異世界での記憶、共に持っているようだった。
「それって何か大切なことなの?」
「わたしは良く分からないんだけど、両世界の記憶が途切れることなく動いているようなの。どっちの世界も普通に生活しているみたい」
良く分からない。両方の世界で活動しているが時間は途切れず両方とも記憶に残るっか。
考え方はコピーか……でも……コピーだと物理的には別物だしリンク……良く分からん。
「うーん……」
「まぁ難しいことはいいじゃない。言えることはわたしはこっちの世界に来た人間。向こうの記憶は全く無い、異能の力がない分、叩く杭がないってことかもね」
「物置に派遣されてるのに?」
「その程度で済んでるってことよ。それにサクラも同じようなものなんでしょ」
確かにそうだ。途切れることなく両世界の記憶は共有していない。
2つの時間が並行に流れていると仮定するとどちらかしか存在していない……そういった意味では雫と一緒。
でも僕は『異世界リンゴ』を食べて来ているし……雫の言う通り能力も知識として持ってないし……何らかのキッカケで戻されるし……ぶつぶつ
「まぁいいじゃない。この世界に飛ばされた異世界教徒ではない人間を罪人として捕縛するからね、ユランダ・メシアは……」
「え”!?」
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こうして僕は雫に従うままシェッセルに向かうのだった。
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