異世界教へようこそ ─ Welcome to Different dimension religion─

ひより那

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第2章 異世界教と異世界教

第21話 異世界教の強さ

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「久しぶりだね朔弥くん」
 その姿は紛れもなく琢磨くん。見たこともないほどに顔がこわばっている。

「お前は!」
 ウィル、メーン、アバンチは戦闘態勢を取った。
 ウィルは大剣を抜き取り、メーンとアバンチは精神武器が既に握られていた。

「ああ、君たちはあの時の。君たちなら俺ひとりで十分かな」
 琢磨くんの肩が上がると同時に地面が揺れる。いくつもの尖った土が剥がれて浮かびあがると、一斉にウィルたちに向いた……と同時に一気に横殴りの雨のように3人を襲う。

 ウィルたちはほんわりとした円い光を作り出し必死に防御を試みるが、鋭い地の刃は防御壁を突き破り3人に傷を作っていく。

「反撃よ」
 メーンは巨大な風を前方に作り出して刃の威力を弱める。

「行きますよ」
 アバンチが放った矢。メーンの風に乗って威力を高める。
 全ての矢が琢磨くんを捉えるが、カキンと音を立てダメージを与えることなく全てが地面に転がった。

 ウィルがいない……

「うぉぉぉ」
 既に上空に飛び上がって大剣を振りかぶっていた。

 ガッキーン。琢磨くんの頭部に直撃……時間が止まる。
 
 ピキッ……ピキッ……ピキッ……パリーン。

 ウィルの大剣が大破。その勢いで吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。

 琢磨くんってこんなに強かったんだ……呆然と見ていることしか出来ない。
 メーンは魔法を、アバンチは矢を放つが全て跳ね返されてしまう。僕は黙って見ていることしかできない……。

 ウィルは「仕方ない……」と、胸の前で禍々しい大剣を作り出し「この剣はあんまり使いたくないんだよな」と身構えた。

「どんな攻撃も俺には効かないよ」

 大の字になって挑発する琢磨くん。その姿は友人というより悪魔の所業にすら見えてしまう。

 僕に出来ること、僕に出来ること……そうだ!

 誰の目からも見えないように存在感の無さを利用してフリックバレットで琢磨くんを狙う。
 威力や調節しながら弾き続ける。戦いの影で弾いているとあることに気づいた。

 琢磨くんの能力は『硬化武装』。一気に全体を強化出来るわけではないようだ。攻撃に合わせて厚みを変化させている……攻撃を受けていない場所は硬化が薄い。

 この状況で僕に出来ることは……ウィルの攻撃に合わせて琢磨くんの体制を崩すこと。
 
「奥義、雷霆らいてい
 高く飛び上がって振り上げた剣に雷が落ちる。まばゆい稲光が辺りを照らし、全てを吸収した刃が雷放電を纏う。
 周囲に落雷の爪痕を残しながら振りかぶる大剣、刃の雷放電が琢磨くんに引き寄せられるように集まり始めると追いかけるようにウィルの剣が振り下ろされた。

「いまだ!フリックパレット」
 琢磨くんの膝に弾いた。これまでの計算から体制を崩すには十分な強さ。
 膝の武装が削り取られ僅かにふらついた。頭部の装甲が膝へと移行して薄くなった瞬間!

 ズドーン!──雷霆が直撃。

「ぐわぁ」

 頭を抱えてふらつき尻もちをつく琢磨くん。
 ウィルたちが追撃に走ると、琢磨の前に巨大な岩が浮かびあがり粉砕した。
 煙幕のように広がる粉塵が視野を遮り気づいたときには琢磨くんは消えていた。

「朔弥くん、ユランダ・メシアで待ってるよ」

 そんな声が風に乗って聞こえた気がした。

「よっしゃー! 異世界教の幹部を撃退したぜー!」
「すごいじゃないウィル、騎士団を全滅させた幹部を倒すなんて」
「ウィル殿、少数精鋭の方が力が出せるようですね。これからは私たちで世界を獲りましょう」

 まるでお祭り騒ぎの様相。テンションマックスの3人はシーラに向かって賑やかに歩いていった。……おまけのように後ろをトボトボついて行く僕。

 ウィルの雷霆……凄い威力だった。あんなに凄い技を隠しもっていたなら、僕は余計なことをしたんじゃないかなぁ。

 黄土色の美しい未知を我が物顔で歩くウィルたち。
 主人公についていくおまけのようなちっぽけさを感じことしか出来なかった。


「おい、シーラについたぞ」

 目の前にあるのは3メートル程の平べったい山。小さな入口から下へ伸びる階段が続いていた。

「ほら、これを持ってさっさとアスタルテの雫を採ってきなさい」

 メーンがパチンと指を鳴らすと手に持った松明に炎が灯る。小さな小瓶とともに手渡された。

「あ、ありがとうございます……」

「サクラ殿、私たちは異世界教幹部殿との戦いを振り返っておりますので、ゆっくりで行ってくるといい」

 シーラの入り口をくぐって階段を降りていく。
 閉塞感が不安を煽るが広範囲を照らす松明が幾分か和らげてくれる。
 静かな空気に響く足音とメラメラする炎の音がラノベ脳を刺激して落ち込む心とワクワクする気持ちを混在させていた。
 
 一歩一歩階段を降りていく。長い長い階段、何の変哲もない階段。
 何段くらい降りただろう……「あ、光が見える」。光に群がる虫のように急いだ。

 6畳ほどの天井が高い小部屋、中央にある祭壇には壁から伸びる一本の細い筒が出ていた。
 特に何かが出ている様子はないが、小瓶を筒の先に当てると虹色の光が1滴瓶へと落ちた。

「よし、帰ろう」
 
『グェーグェー』 
 なんだ小動物が鳴き出した声、あたりを見回すが何もいない。

「いてー!」
 頭に突き刺さる痛み。頭をまさぐるとぐにゃりとした感触が手に……一瞬の恐怖が心に突き刺さる。

「ギャー!」
 反響する叫び声、尻もちをついた音。

 手に残る不快感。分からないからこその恐怖。手のひらを見つめると、親指と人差指で作った輪っか大のハリネズミがこちらを見ていた。

『シャァァ』
 震えるハリネズミ、手のひらでクルクル回ると腕を登って僕の髪の中に隠れてしまった。

『ピーピー』
 頭から聞こえる声。頭をまさぐって捕まえようとするがうまく髪の中を動き回り、捕まえるとトゲを突き立てるので触れない。

「なんか嫌だけど害は無さそうだ……待たせてるんだ! 急いで戻らないと」

 ラノベに出そうなマスコットキャラクターの出現にテンションが上がる。左手の小瓶を握りしめて階段を駆け上がった。

 ※ ※ ※

 帰り道は黄土色の路を外れることなくシェッセルに戻った。
 ご機嫌なウィルたち。頭の中を動き回るくすぐったさと時折聞こえる『ピーピー』という鳴き声に癒やされながら後ろを付いていくのであった。
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