異世界教へようこそ ─ Welcome to Different dimension religion─

ひより那

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第3章 王道の異世界ファンタジー

第26話 異世界転移?

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「ミ……ミヅキ……か」

 驚いた顔をしている。

「確かに私はミヅキですけどあなたは私のことを知っているのですか?」

 考えても出てこない。この顔この仕草に愛しさを感じ懐かしさを感じる。が、いくら記憶を探っても知り合いという言葉が導き出せない。

「ごめん、知り合いだと思ったんだけど僕も心当たりが無かったよ」

 ミヅキは手を口に当てて「変ですねー」と笑った。僕も釣られて笑ってしまう、恋人のような柔らかな笑顔をぶつけあって笑いあった。

「お腹空いていませんか? ちょうど朝食が出来たところなので一緒に食べましょう」

 向かい合っての食事。ご飯に味噌汁、焼き魚に煮物、良くあるメニューだがとても心に沁み入る味。

「美味しい!」
 
 箸が止まらない。そんな僕の食べる姿をミヅキは両頬杖ついてニコニコしながらじっと眺めていた。

「わたしもあなたのことを知っている気がしてきました。心の奥深くにあるこの温かい感じ……サクヤ……さん?」

 驚いた。僕が彼女の名を当て彼女が僕の名を当てる。思わず興奮してテーブルを叩き立ち上がった。

「うん、そうだよ。僕は朔弥って言うんだ。お互いの名前を言い当てるなんて知らない所で出会ってるのかもしれないね」

 なんだか嬉しい。前世で恋人として過ごし、来世で将来を誓い合ったふたりが現世で再会したように思えてならない。

「そう……とても辛い場所であなたが温もりをくれた。そんな気がするの」

 話しによると、ミヅキも気がついたらこの場所に居たようだ。長老の好意でこの場所に住むことを許されたんだとか……。もしかしたら彼女も僕と同じ転移者なのかもしれない。

「じゃあ僕も長老にこの街に滞在させてもらえる許可をお願いしてみようかな」
「それなら朔弥さんもここに住んだらどうでしょう……やっぱり女の一人暮らしって色々と心配で……」
 うつむいて頬を赤らめるミヅキ、可愛らしい笑顔に照れてしまう。 

 お誘いが嬉しい。僕もこの世界に来たばかりで不安だし、帰れないならこの世界のことを色々と知っておきたい。

 何よりこんなに可愛い娘と一緒に住めるのは異世界であればこそだ。

「ありがとう。それなら僕も食べていくために何か仕事をしないと」

 これがラノベ脳に冒された思考回路だろう。昨日まで高校生だった僕が仕事をするという発想は普通では出てこない。

「それならギルドに行ってみてはどうかしら。わたしもちょっとした依頼ならたまに受けていますが、どちらかと畑で食べ物を育てていることが多いです」

 ミヅキに連れられ、雑談を交わしながら長老の元へ向かった。畑などの自然が多く木造の小さな家が並ぶ。町外れのようで遠くにはラノベで見るような異世界をイメージさせるヨーロピアンな町並みが見えた。

 道中、ミヅキは色々とこの世界のことを教えてくれた。
 この場所はバスリング王国という島で、国の南に位置するジンと言う都市。
 この街の長老は世界に4つある聖堂のひとつであるマタイ聖堂の神子で、世界の災厄を救った伝説の英雄パーティーを担った一人。世界を滅ぼすほどの力をもつ彼女たちは戦に関わらない『戦わずの誓い』を立てているとのことだった。

 長老の家、どこかで見たことがあるような建物。うーん、どこだろう……いや、アニメかなんかで見ただけだろう。

「ミヅキちゃんいらっしゃい。あら? その人は誰かしら」

 出てきたのは美しい金色のロングヘアーの女性。150センチ程度しかない身長と顔はどうみても成人しているようには見えない……ほんとうに長老?

「君ねぇ、顔に出てるわよ。こんな姿じゃあ長老になっちゃいけないかしら」
 長老の手のひらから浮かび上がる光球。ビリビリくる波動……これはヤバいやつだ。

「長老、この人はわたしの家の前で倒れてたんです。やっと目を覚ましたので挨拶にきました。できれば一緒に住もうかと思っているのですが……」

「ふふふ、冗談よ。わざわざ挨拶とは殊勝ね。って、あなた……何かは分からないけど特別な力を持っているようね」
「え、僕がですか?」
 異世界転移といえば最強の能力を得られるのがお約束。きっと知らないだけで凄い能力が眠っているのだろう。

「そうよ、ミヅキちゃんを惹き付ける特別な力をね。一緒に住むのは構わないわ、好きなようにしなさい」

 特別な能力ってそういうことか……てっきり僕の中に凄い力が眠っているのを見抜いたのかと思ったのに。一気に肩の力が抜けた。

「ミヅキちゃんはね、極めて珍しいヘーラーの加護を受けているの。もっと真面目に取り組めば世界だって穫れるのにねぇ」
「やめて下さいよ長老。わたしは普通に生活したいんです」

「君、ひとつだけ教えてあげるわ。この世界には成人した人間が食べる実があるの。それを食べると神の加護を受けられるのよ。特に珍しいのはゼウスの加護ね……確かシェッセルのウェルとウッドバーレンのメルギンスね」

 ウェル? なんか聞き覚えがあるような……流石に異世界人に知り合いなんているわけない。

「あ、そうそう。ミヅキちゃん、シェッセルのウタハ神子が失脚したって連絡があったわ。まったく相変わらず下手な子なんだから」
「盤石と言われた神子様がですか? 失脚するなんて考えられません」
「神子だってやらなければならないことはあるの。万能ではないし失敗してしまったら失脚だってするわ」
「神子様の世界も色々とあるんですねー」

 分からない世界だ。でも僕は何のために異世界転移したんだろう。
 もしかして……実は主人公となるべくミヅキのパートナーとして召喚されたとか……。前世か現世か……もしかしたら幼い頃に出会い忘れてしまっているだけといった良くあるパターンか。

「ほらほら、いつまでもこんな所にいないでさっさとギルドに行きなさい」

「わたしたち長老に挨拶しに来たんですよ。彼は朔弥さん」
「朔弥です。よろしくお願いします」
 ペコリとお辞儀をする。一瞬だけ長老の表情が変わった。
「あなたの名前……まぁいいわ。必要な時になんとかしましょう」
 
「朔弥、彼女は長老のリリス様よ。こう見えてもわたしたちよりずっと長生きなんだから」
 笑顔でミヅキが紹介してくれた。その後ろでは長老がまた光球を浮かび上がらせていた。

「ミヅキちゃん、今、余計なことを言ったわよね」

「ごめんなさーい」
 ミヅキに手を引かれるまま長老宅を後にした。

 なんだかこの感覚が懐かしいな。小さい時に雫に手を引かれた記憶が蘇る。
 そういえば雫も光輝や結衣の後を追うように行方不明になったんだよな……そうか! ここにいるという事は僕も同じか。

 それならみんなこの世界にいるかもしれない。ラノベ脳の発想意味もなく異世界転移なんかが起きるはずない、きっと何かがあるはずだ。

 いつかみんなを探す旅に出かけたい。そのためには世界のことを知りたい。そう決意するのであった。




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