異世界教へようこそ ─ Welcome to Different dimension religion─

ひより那

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第4章 獣に植物に聖女結衣

第46話 同じ動物の肉を食った仲

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 神子討伐を明日に控えた昼下がり、メルギンスに紹介された宿を予約した後に解散した。

 というのも、
「サクラちゃん、ラクナシアちゃんとふたりで親子デートしてくるねー」
 とケアルナがニコニコしながらラクナシアの手を引っ張ってどこかに連れて行ってしまったのだ。

「どんなコーディネイトしてあげようかなーとか何を食べようかなーとか心の声が漏れてたぞ」

 なんだかんだでひとりになると急に寂しくなる。
 ホルスでミヅキと別れてからひとりのようなもんだったからなー。
 人恋しさなんて感じなくなっていたと思っていた。……いろんな意味で不安だけは大きかったけど。

 カップルや家族づれを横目に商店街を歩いているとお洒落な食堂が目に入る。テラス席では冒険者らしき3人組が仲良さそうに和気藹々食事をしていた。

「なんかいいなぁ。気持ちのおすそ分けをしてもらおう」
 冒険者たちの隣のテーブルに席をとった。
 
「って、あれ? ユピア、それにセッカさんとラインさん」

 知り合いとの再会は一気にテンションが上がる。思わず駆け寄ってしまった。

 ピクリと反応するセッカ、ラインに目配せをすると僕の進行を妨げ、
「お嬢さん、いきなり近寄ったらビックリしてしまいますよ。何か俺たちに用ですか」

 お嬢さん?……そうか、バスリンクで会った時は朔弥の容姿だった。ついうっかりしてしまった……そうだ、
「あ、ごめんなさい。その女の子が食べているお肉が美味しそうで……なんのメニューかを聞こうと思ってつい」

 ユピアは目を輝かせて叫んだ。
「お前も肉が好きか、私も大好きなんだ。ほれ一緒に食おう、そこに座れ」

 相変わらず肉好きだなぁ。ケアルナさんと一緒だ。思わずクスッとしてしまう。
「どうした、何を笑っておる」
「連れも肉が好きなもので……肉好きが多くて嬉しいなぁと思って」
「そうかそうか、肉好きは仲間じゃ。どんどん食え食え」
「お嬢、素性の知れぬ人と仲良くしてはダメです」

 ラインがイライラしている。ユピアはホイスのお姫様だったものな、守る者として当然だろう。
「ラインは固いのぉ、わらわはユピアだ。主の名前は何という」
「サクラです。よろしくユピア」
「ユピアだとー、様だろ様!」
 ラインがテーブルを強く叩き立ち上がった。その顔は親の敵でも見るような表情。

 ラインさん相変わらずだな……前にやられた時は驚いたけど。
「ユピア様ですか? どこかのお姫様か何かなんですか?」
 大きく溜息をつくセッカ、呆れたように口を開いた。

「お嬢さん失礼した。私たちはユピア様に仕える身でな、ちょっと良いところの家柄だと思ってもらえればいい」
 大変だなぁセッカさん。

「ラーイーンー、あんた本当にクビにするよ。なんでわざわざ正体をバラすような言動をするのよ! もう喋らないで座ってなさい」
 しゅんと小さくなるライン。よほど堪えたのか小さくなって食事を始めた。
 
 にこやかにユピアが口を開いた。
「ごめんねサクラ、私のことはユピアと呼んでくれ、明日は神子討伐だからのぅ、しっかり体力をつけるのだ」
 そう言って次から次へと肉を注文しては食べ注文しては食べ……。

「サクラ殿」
 セッカの鋭い眼光が僕の胸を抉る。もしかして朔弥だということがバレてしまったのか。
「は、はひー」
「君はもしかして、神子討伐の本隊に配属されてないか」

 へ? ああ、てっきり容姿が違っていることがバレたのかと思った。

「えっと……はい、なんかそういうことになったみたいです」
「サクラたちも討伐隊本隊に配属されたのか?。わらわたちもサッカおかげで本隊組よ」

「ユピア様、それはたまたまです。きっとラインより近くにいた分、視線に早く気づいたのでしょう」
「セッカさん、なんで僕が本隊に配属されたって分かったんですか?」

 ユピアが満足そうにお茶を飲んでいる。積み上げられた肉の残骸ほねは台風一過の空のようにきれいである。

「サクラ殿、メルギンス殿に聞いたからな」
「テントで見かけた強そうな人ですよね……確か騎士団長と言っていた」
「そうだ、当日はそのメルギンスが選んだ4チームが討伐本隊となる。詳しくは出発前に説明があるだろう」


「サクラ様ー」
 笑顔で駆けてくるラクナシア。後ろから付いてくるケアルナ。
「ラクナシア、ケアルナ」
 ラクナシアの服装が変わっている、可愛くて動きやすそうな服。
「サクラちゃん、ラクナシアちゃんの服可愛いでしょ」
「うん、似合うねー、ぐるっとしてみてよ」
 手を広げてグルリと回るラクナシア、スカートがフワリと広がる。

「サクラ殿! 今……」
「あ、サッカさん、僕の仲間です。ケアルナとラクナシア」、手を添えて紹介する。更に「こっちが、ユピアにサッカさんにラインさん」

「い、いや……ケアルと言ったら伝説の英雄……過去に災厄を沈めたという……そんな人がパーティーに……」
「あのねー、私はケアルよー。英雄ケアルラって何百年前の話しをしているのよ。この見た目で100年以上生きているように見えるー?」

「た、確かにそうですな。ケアルナ殿でしたか、勘違い失礼した」
「セッカ、そのケアルラというのは凄い人物なのか」

 ラインが勢いよく立ち上がって熱弁を始めた。
「お嬢、凄いなんてものじゃないですよ。その姿は風のように舞い、枝のようにしなり、蜂のように刺すという……更に更に、『立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花』を体現した英雄ととして……って、学校で習いましたよね」

「ライン……確かその日は学校を休んで……それよりも、ケアルナ。主も美しいのう、スタイル良くて羨ましいぞ」
「ユピアちゃん、あなたも大きくなったらきっとキレイに──」
 突然ラインがテーブルを叩いた……瞬間、ユピアの拳がラインを捉えた。
「いい加減にしなさい。殴るわよ」

 (((もう殴ってる……))) みんなの心の声がハモった気がした。

 ……というか、ラインさんはユピアが『様』以外で呼ばれる度に同じことをやっているのだろうか。

「ユピアちゃん、その骨……お肉のよねぇ」
「そうだ。肉は美味しいのだ」
「主がサクラが言っていた肉好きの連れか……よし、肉パーティーを再開しよう」

 こうして夕食が食べられなくなるまで肉を胃に詰め込むのだった。
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