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第17話 その1「相棒をゲットしよう!」 at 1995/4/10
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「えー。改めて自己紹介しますよ。私がこのクラスの担任となった、荻島真一郎です」
ぱちぱちぱち。おー、懐かしい。
『楽衛門』こと荻島センセイは、この西町田中学校の理科教師であり、同時に理科部と落語研究会の顧問を務めていた僕の恩師だ。『楽衛門』という奇妙なあだ名の由来は、落語研究会の活動中は自ら『猿美屋楽衛門』を名乗り、部員を『弟子』と呼んでいたところからきている。なぜ『猿美屋』なのかといえば、それはズバリ、町田市の市の花がサルビヤだからなのだった。
「えー。そんなわけでね。もう知った顔もあると思うけれど、一人ずつ自己紹介でもしようか」
荻島センセイはいささかのんびりとした口調でそう言うと、出席番号順に並んだ机の、一番窓側の席の生徒に手招きするような仕草をして立たせた。これは助かる。ついでに僕も、限りなくうっすらとおぼろげな中学時代の記憶との照らし合わせをする機会にさせてもらおう。
とかのんびり構えていたところで、もう僕の番が回ってきた。僕は立ち上がり、こう言った。
「古ノ森健太です。気軽に『モリケン』って呼んでください。小学校からクラブでバレーボールと水泳をやっています。あと、趣味はコンピューターで、自分でゲームのプログラミングをしたりしています。アニメとゲームが好きなので、同じ趣味の人がいたら仲良くしてください」
……ふう、このくらいで大丈夫だろ。
元・陰キャが限界まで頑張った結果だ。
ネタに走ったり、マニアックすぎてもとっつきづらくなるだけだしな。
というか、この自己紹介は、このクラスの中の一人に向けたものだからこれでいい。案の定、標的は僕の自己紹介に興味を持ってくれたようだ。ちらちらこっちの様子をうかがっている。
おっと、奴の順番が回ってきた。
「えっと……渋田行徳です。みんなからは『シブチン』と呼ばれてます。僕も水泳をやっていて、コンピューターを持っているので、仲間がいて嬉しいです。よろしくお願いします」
よしよし。
こうか は ばつぐん だ!
僕がほぼ徹夜で作った『やることリスト』の一つ目は、『相棒をゲットすること』だった。
長い間、連絡一つせずに音信不通となっていたけれど、思い返してみるとやっぱり渋田行徳という男は、僕の『親友』と呼ぶのにふさわしい奴だといまさらながらに気づいたからだった。
もちろん、打算的な考えもある。
渋田の家は、学校から最も近いトー8号棟の中の、さらに最も道路側に近い四階なのだった。だからこそ渋田の部屋の窓からは、学校の体育館二階に設けられた、部活用の女子更衣室がまる見えの覗き放題パラダイスうひょー! 状態なのだが――こほん、それは一旦置いておこう。
何より肝心なのは、学校からすぐ寄れて、立てた作戦をすぐ実行できる立地だということだ。
また何より、渋田ほど人を楽しませてくれて、趣味まで合う奴が今までいなかったからだ。
思わずほころびそうになる口元を隠しつつ耳を傾けているうちに、女子の番となった。じきに、背の高い、カモシカを思わせるすらりと長い手足をした黒髪の美少女がすっと立ち上がる。
「……上ノ原広子です。バレーボールではエースアタッカーをやっています。長所はなにごとにも負けず嫌いで、嫌なものは嫌とはっきりいうところです。一年間よろしくお願いします」
そのなんだか少し怒っているような、つん、と澄ましたすべすべと滑らかな横顔を見た時僕は、妙に懐かしいようなむず痒い思いと、わずかばかりの苦々しい記憶を取り戻していた。
思えばこの頃の僕とロコはあまり口もきかず、やりとりの機会もほとんどないに等しかった。
正直に言えば、多感な少年・少女期ということもあって、むしろ嫌われていると思っていた。
(もしかしてアイツも、僕と同じ……? いやいやいや、あの感じじゃ違ってそうだな)
ひょっとしたらロコも『リトライ者』なのかも、と一旦は考えたが、僕はすぐに首を振ってそれを打ち消した。
ぱちぱちぱち。おー、懐かしい。
『楽衛門』こと荻島センセイは、この西町田中学校の理科教師であり、同時に理科部と落語研究会の顧問を務めていた僕の恩師だ。『楽衛門』という奇妙なあだ名の由来は、落語研究会の活動中は自ら『猿美屋楽衛門』を名乗り、部員を『弟子』と呼んでいたところからきている。なぜ『猿美屋』なのかといえば、それはズバリ、町田市の市の花がサルビヤだからなのだった。
「えー。そんなわけでね。もう知った顔もあると思うけれど、一人ずつ自己紹介でもしようか」
荻島センセイはいささかのんびりとした口調でそう言うと、出席番号順に並んだ机の、一番窓側の席の生徒に手招きするような仕草をして立たせた。これは助かる。ついでに僕も、限りなくうっすらとおぼろげな中学時代の記憶との照らし合わせをする機会にさせてもらおう。
とかのんびり構えていたところで、もう僕の番が回ってきた。僕は立ち上がり、こう言った。
「古ノ森健太です。気軽に『モリケン』って呼んでください。小学校からクラブでバレーボールと水泳をやっています。あと、趣味はコンピューターで、自分でゲームのプログラミングをしたりしています。アニメとゲームが好きなので、同じ趣味の人がいたら仲良くしてください」
……ふう、このくらいで大丈夫だろ。
元・陰キャが限界まで頑張った結果だ。
ネタに走ったり、マニアックすぎてもとっつきづらくなるだけだしな。
というか、この自己紹介は、このクラスの中の一人に向けたものだからこれでいい。案の定、標的は僕の自己紹介に興味を持ってくれたようだ。ちらちらこっちの様子をうかがっている。
おっと、奴の順番が回ってきた。
「えっと……渋田行徳です。みんなからは『シブチン』と呼ばれてます。僕も水泳をやっていて、コンピューターを持っているので、仲間がいて嬉しいです。よろしくお願いします」
よしよし。
こうか は ばつぐん だ!
僕がほぼ徹夜で作った『やることリスト』の一つ目は、『相棒をゲットすること』だった。
長い間、連絡一つせずに音信不通となっていたけれど、思い返してみるとやっぱり渋田行徳という男は、僕の『親友』と呼ぶのにふさわしい奴だといまさらながらに気づいたからだった。
もちろん、打算的な考えもある。
渋田の家は、学校から最も近いトー8号棟の中の、さらに最も道路側に近い四階なのだった。だからこそ渋田の部屋の窓からは、学校の体育館二階に設けられた、部活用の女子更衣室がまる見えの覗き放題パラダイスうひょー! 状態なのだが――こほん、それは一旦置いておこう。
何より肝心なのは、学校からすぐ寄れて、立てた作戦をすぐ実行できる立地だということだ。
また何より、渋田ほど人を楽しませてくれて、趣味まで合う奴が今までいなかったからだ。
思わずほころびそうになる口元を隠しつつ耳を傾けているうちに、女子の番となった。じきに、背の高い、カモシカを思わせるすらりと長い手足をした黒髪の美少女がすっと立ち上がる。
「……上ノ原広子です。バレーボールではエースアタッカーをやっています。長所はなにごとにも負けず嫌いで、嫌なものは嫌とはっきりいうところです。一年間よろしくお願いします」
そのなんだか少し怒っているような、つん、と澄ましたすべすべと滑らかな横顔を見た時僕は、妙に懐かしいようなむず痒い思いと、わずかばかりの苦々しい記憶を取り戻していた。
思えばこの頃の僕とロコはあまり口もきかず、やりとりの機会もほとんどないに等しかった。
正直に言えば、多感な少年・少女期ということもあって、むしろ嫌われていると思っていた。
(もしかしてアイツも、僕と同じ……? いやいやいや、あの感じじゃ違ってそうだな)
ひょっとしたらロコも『リトライ者』なのかも、と一旦は考えたが、僕はすぐに首を振ってそれを打ち消した。
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