ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
45 / 539

第45話 鮮血に染まる乙女ゴコロ事件(3) at 1995/4/26

しおりを挟む
「おい、ダッチ? これだけは言っておく――いや、言わせてくれ」


 あえて小山田のことをあだ名で呼んだのは、親しみを持たせるためではなく上も下もない対等だということを明らかにするためだった。案の定、小山田の顔が見る間に赤黒く染まる。


「てめえ……!」

「まあ、聞けよ」


 僕は気楽な調子で応じながらも、小山田の憤怒の炎を灯した双眸からかたときも視線をそらすことなく語りかけた。


「もちろんダッチだけじゃない、悪ノリしてる他の連中もだ。……なあ、こんなことやめないか? 興味がある? 恥ずかしい? 照れ臭い? 理由はそれぞれで、わざわざ追及する気もないけれど、こんなの、みんな不愉快になって気分が悪くなるだけで、誰も得をしないだろ?」

「はン! 俺はたまらなくおもしれえけどな!」

「……これが、お前の好きな女の子の物だったとしてもか?」


 小馬鹿にしたように下卑た笑みを浮かべていた小山田の表情が凍りついた。


「その子の心に一生残る嫌な記憶を刻みつけることになってもか? それでもまだ、おもしれえ、って言いながら、はしゃいでられるのか、お前は? 大した奴だな。さすがだよ、ダッチ」


 僕は力の抜けた小山田の手に触れ、ゆっくり振り解いた。そして背を向けしゃがみこむと、無人の机のまわりにぶちまけられたゴミをひとつひとつ拾い上げてはゴミ箱の中に戻していく。


「僕たちは、まだ半分子供で、半分大人だ。多少羽目を外したところで、こっぴどく叱られはするけれど最終的には許される、そういう年頃だ。けどな? 同じクラスの連中はそうじゃない。同じように歳をとり、同じように大人になっていく。心に受けた傷を抱えたまま、ね」


 用心して割れたガラスの破片を拾い上げると、それも一緒にゴミ箱に投げ込んだ。


「意外とさ……大人になっても、何十年経っても思い出すんだよ。嫌な記憶、忘れたい思い出、そんな古傷がひょっこり顔を出してズキズキ痛むんだ。いつまで経っても消えない、忘れられないんだよ。やった方はけろっとしてすぐに忘れちまう。罪の意識なんてこれっぽっちもない」


 僕は最後に丸められた生理用品を手にとると、ついてしまったホコリを優しく払ってからこう続けた。


「気に入らないんだろうな? ムシャクシャしてるんだろうな? イライラして、ムカムカしてるんだろうな? けどな、もうこういう下らないことはやめて欲しい。誰かを貶めて傷つけないと生まれてこないジョークだなんて、可哀想すぎてちっとも笑えないんだよ。ゴミ以下だ」


 ぼすん――。
 セリフの最後にあわせて、小山田から目をそらさず手の中の生理用品をゴミ箱に落とした。


 小山田はじっと僕を見つめ返している。しかし、その瞳の奥に宿るのは、めらめらと燃え上がる炎のようだった。なにかほんの些細なきっかけで、たちまち噴き出してきそうな炎だった。

 けれど僕は、構わず背中を向けると、もう一度ゴミ箱をしっかりと抱え直した。


「それじゃあ僕、ちょっと捨ててくるよ」



 がら――ぴしり。



 間もなく授業が始まろうというタイミングでひとり立つ廊下は、静かで、静かすぎて、おかげで頭に昇りかけていた血が徐々に静まるのがはっきりと感じられた。僕は張り詰めていたものを押し出すように、ふぅーっと長く息を吐き出すと、その場に立ち尽くしたまま目を閉じる。


 ヴーッ。ヴーッ。ヴーッ。

(……はぁ。現実乖離率、結構上がったんだろうなあ……。けれど、二度目は嫌だったから)


 それがわかっているだけに、スマホを取り出すのも億劫になったので帰宅してから見ることにした。今はまず、こいつを焼却炉に入れてこよう。そう思って歩き出そうとした時だった、


「……ちょっと待ちなさいよ、ケンタ。あたしも一緒に行くから」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...