47 / 539
第47話 いつになったら始動する? at 1995/5/1
しおりを挟む
やけに長かったように感じた四月も終わり、いよいよ新緑も目に鮮やかな五月。
そして新しい週のはじまり、月曜日の朝だ。
「おはよう、モリケン」
「おっす、シブチン」
今日と明日が終われば、全国民が待望のゴールデン・ウィーク。
しかし、なんとも贅沢な悩みではあるけれど、『リトライ』中の僕にとっては、学校が休みで家にいなきゃならないとなるとそれはそれは退屈で、ただただヒマでつまらないのである。
まあ、考えようによっては、世間様が海へ山へ、果ては海外へとこぞって繰り出す天下の大連休にまでのこのこ出社して、終わりの見えないプログラム作業をしていたあの頃に比べたら、だらだら過ごして何もしなくても怒られない今の身分の方が、はるかに健全で健康的であろう。
早くも連休ムードで表情がゆるみ気味の渋田が、ふとこう尋ねてきた。
「そういえば『電算論理研究部』って、いつから始動するの? まだ部室も見てないんだけど」
「おっと、さすがにシブチンでも気づいたか。いや、な? 荻島センセイにも催促しているんだけど、もう少し待ってくれ、の一点張りで、僕だってまだ、部室も顧問もわからないんだよ」
「それ、マジ?」
「うん。大マジ」
ウケるー! とばかりに揃って大笑いしてみたものの、じきその表情は絶望の色に染まった。
「部室もない! 顧問もいない! 活動内容もわからない! で、どうやって勧誘するのさ!」
「……どうしようもないな」
今度は揃って、深々と溜息をつく。
その様子が気になったのか、隣の純美子が声をかけた。
「もー! せっかくのゴールデン・ウィーク前だってのに、男子二人でジメついた溜息なんてつかないの! ……で? 一体なんのお悩みなのかなー?」
「かくかくしかじか」
「……え、えっと。ホントにそう言う人、はじめて見たんだけど……通じるわけないでしょ!」
だもんで、今までの経緯をかいつまんで話して聞かせた。すると、純美子は眉をしかめた。
「うーん……でも、荻島センセイからの連絡を待たないとどうにもならないよね? それにしても『電算論理研究部』って言ってたけど、コ、コンピューター? だったっけ? それとかどうやって準備する気なの? それ、すっごく高いんでしょ?」
「学校側で準備できそうになければ、僕のを家から持ってくるつもりだよ」
「えええ!? あの『PC―9801UX』を!?」
たちまち渋田は弾かれたような叫びを上げたが、純美子の方はその重大さに気づいていない。
「だ、大丈夫なの、モリケン! 総額五~六〇万はするシロモノだよ!?」
「そ、それ、ホントなの!?」
「っていっても、叔父さんから譲り受けた中古のコンピューターだからね。いいんだ」
二人は知る由もないだろうが、この冬、一九九五年の十一月になれば、ユーザー待望のマイクロソフト『Windows95』の日本語版が発売されることになる。そしてその『Windows95』の登場とともに、インターネット接続によるネットワーク機能の活用が加速度的に広まり、一般に浸透していくことになるのだった。
それを前提に考えれば、まだまだ十分に使い出はあるものの、何かしら最悪のケースが起こって『PC―9801UX』を失うことになっても僕の未来には支障はない、と考えたのだ。それより最悪なのは、せっかく仮承認された『電算論理研究部』が立ち消えてしまうことだ。
恥を忍んで正直に打ち明けると、僕の『リトライ』の活動拠点として渋田の家をいつまでも利用させてもらうのは心苦しかったので、学校内にもある程度自由が利く拠点が欲しかった、はじめはその程度のきっかけだったのだ。だからあまり積極的に活動する気なんてなかった。
けれど、荻島センセイや校長先生、そして何より渋田が乗り気になってくれている今は、少しでも早く『電算論理研究部』を軌道に乗せ、秋の文化祭で成果を残したいと考えていた。
(荻島センセイ、五月になるまでは待ってくれ、って言ってたけど……大丈夫なのか?)
とりあえず、今日のLHRが終わったら、荻島センセイを掴まえて聞いてみるとしよう。
そして新しい週のはじまり、月曜日の朝だ。
「おはよう、モリケン」
「おっす、シブチン」
今日と明日が終われば、全国民が待望のゴールデン・ウィーク。
しかし、なんとも贅沢な悩みではあるけれど、『リトライ』中の僕にとっては、学校が休みで家にいなきゃならないとなるとそれはそれは退屈で、ただただヒマでつまらないのである。
まあ、考えようによっては、世間様が海へ山へ、果ては海外へとこぞって繰り出す天下の大連休にまでのこのこ出社して、終わりの見えないプログラム作業をしていたあの頃に比べたら、だらだら過ごして何もしなくても怒られない今の身分の方が、はるかに健全で健康的であろう。
早くも連休ムードで表情がゆるみ気味の渋田が、ふとこう尋ねてきた。
「そういえば『電算論理研究部』って、いつから始動するの? まだ部室も見てないんだけど」
「おっと、さすがにシブチンでも気づいたか。いや、な? 荻島センセイにも催促しているんだけど、もう少し待ってくれ、の一点張りで、僕だってまだ、部室も顧問もわからないんだよ」
「それ、マジ?」
「うん。大マジ」
ウケるー! とばかりに揃って大笑いしてみたものの、じきその表情は絶望の色に染まった。
「部室もない! 顧問もいない! 活動内容もわからない! で、どうやって勧誘するのさ!」
「……どうしようもないな」
今度は揃って、深々と溜息をつく。
その様子が気になったのか、隣の純美子が声をかけた。
「もー! せっかくのゴールデン・ウィーク前だってのに、男子二人でジメついた溜息なんてつかないの! ……で? 一体なんのお悩みなのかなー?」
「かくかくしかじか」
「……え、えっと。ホントにそう言う人、はじめて見たんだけど……通じるわけないでしょ!」
だもんで、今までの経緯をかいつまんで話して聞かせた。すると、純美子は眉をしかめた。
「うーん……でも、荻島センセイからの連絡を待たないとどうにもならないよね? それにしても『電算論理研究部』って言ってたけど、コ、コンピューター? だったっけ? それとかどうやって準備する気なの? それ、すっごく高いんでしょ?」
「学校側で準備できそうになければ、僕のを家から持ってくるつもりだよ」
「えええ!? あの『PC―9801UX』を!?」
たちまち渋田は弾かれたような叫びを上げたが、純美子の方はその重大さに気づいていない。
「だ、大丈夫なの、モリケン! 総額五~六〇万はするシロモノだよ!?」
「そ、それ、ホントなの!?」
「っていっても、叔父さんから譲り受けた中古のコンピューターだからね。いいんだ」
二人は知る由もないだろうが、この冬、一九九五年の十一月になれば、ユーザー待望のマイクロソフト『Windows95』の日本語版が発売されることになる。そしてその『Windows95』の登場とともに、インターネット接続によるネットワーク機能の活用が加速度的に広まり、一般に浸透していくことになるのだった。
それを前提に考えれば、まだまだ十分に使い出はあるものの、何かしら最悪のケースが起こって『PC―9801UX』を失うことになっても僕の未来には支障はない、と考えたのだ。それより最悪なのは、せっかく仮承認された『電算論理研究部』が立ち消えてしまうことだ。
恥を忍んで正直に打ち明けると、僕の『リトライ』の活動拠点として渋田の家をいつまでも利用させてもらうのは心苦しかったので、学校内にもある程度自由が利く拠点が欲しかった、はじめはその程度のきっかけだったのだ。だからあまり積極的に活動する気なんてなかった。
けれど、荻島センセイや校長先生、そして何より渋田が乗り気になってくれている今は、少しでも早く『電算論理研究部』を軌道に乗せ、秋の文化祭で成果を残したいと考えていた。
(荻島センセイ、五月になるまでは待ってくれ、って言ってたけど……大丈夫なのか?)
とりあえず、今日のLHRが終わったら、荻島センセイを掴まえて聞いてみるとしよう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる