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第51話 自称・変人のハカセキャラ at 1995/5/2
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「五十嵐君……だよね?」
みんなの視線が教室の中央に集まっている中、僕が声をかけると彼は驚いた表情を浮かべた。
「……ええ。そういう君は古ノ森健太君ですよね?」
「おっ、知っててくれたんだ、嬉しいな。ところで五十嵐君――?」
今までまじまじと観察したことはなかったけれど、五十嵐君も佐倉君と同じくらいの身長だった。天然物なのかまさかの校則違反なのか、かなりキツめのウェーブがかかった黒髪の下で、細い黒縁のまんまる眼鏡の中から細い目が僕をまっすぐに見つめている。表情に出ないタチなのか、怒っているようにも笑っているようにも見えるその顔の中で、くい、と口端が上がった。
「もしかすると、校外活動の班決めのことで来たんですか? 古ノ森君は……変わってますね」
「ん? どういう意味?」
「言葉のとおりですよ」
浮かべているうっすらとした笑みはどういう感情なんだろう。ちょっと見当がつかない。
「僕のような、クラスの中でも完全に浮いてしまっている、とびっきりとっつきにくい得体のしれない変人になんて声をかけてくるからですよ。だから、変わっている、と言ったんです」
「へ、変人って……ちょっと大袈裟じゃないかな?」
「いいえ。僕は変わり者で変人ですよ。正真正銘の、ね」
自分から『変わり者』とか『変人』だとか言い出すなんて、確かにちょっと他の人とは違っているかもしれない。ただ、五十嵐君は僕の少し行き過ぎた感のある好奇心を舐めている。
「ふーん。だったら、余計に五十嵐君のことが知りたくなってきちゃったんだけどね、僕は」
すると、意外なことに五十嵐君ははじめて戸惑ったような表情をあらわにして笑い始めた。それは教室中に響くほどの大きな笑い声で、一瞬、ほんの一瞬視線が僕たちに集まった。
だが、じきに『またアイツか』とでも言いたげな雰囲気が周囲に漂い、僕たちだけになる。
「古ノ森君は面白い。でも、今のでわかったんじゃないですか? 僕に関わると損をするとね」
「損か得かは僕が決めることだよ、五十嵐君。それに、損得で友だちになるわけじゃないだろ」
「確かに。しかし、そう思っていない人間もこの世にはたくさんいるのですよ」
「……どういう意味?」
だが、僕の問いかけに五十嵐君はこたえてくれなかった。何も言わずに、騒々しさを増す一方の教室をゆっくりと静かに見回している。なんというか――歳の割には落ち着いてる奴だな。
「何を見てるの、五十嵐君?」
「そうですね――」
まるで僕の質問そのものが気の利いたジョークか何かだったように、くすり、と笑う。
「――教師側で勝手に割り振った方が時間の節約になるし、余計な小競り合いを起さずに済むのに、とかです。気の合う者同士、というのはどうにも不効率で不平等だ、そんなあたりです」
「……ぷっ。あはははっ、確かにそうだ」
「これでも、皮肉のつもりだったんですけど。どうして笑うんです?」
「面白い、と思ったからさ。それに、五十嵐君という人間の一側面が見られた気がしたからね」
プログラマーという生き物は、とかく変わり者が多い。
もちろん、この僕自身を筆頭に、だ。
だからというわけではないけれど、五十嵐君のようなとびきり理屈臭い偏屈の変人には慣れっこなのである。いや、むしろこういうタイプの人間を相手にする方が、年中ウェーイウェーイしてる陽キャ集団に囲まれるよりよっぽど落ち着く。彼らに中身がないとはいわない。けれど、この五十嵐君のようなタイプの方が僕の知的好奇心を満たしてくれる可能性が極めて高い。
まあ、四〇歳になった今だからこそ、こんな余裕が持てているのかもしれないけど。
リアルタイムで出会っていたら、速攻でキレちゃいそうだ。
「校外活動、誘ったら一緒に組んでくれるかな、五十嵐君?」
「……本当に物好きな人ですね。いいでしょう、効率化につながるのであればお受けします」
みんなの視線が教室の中央に集まっている中、僕が声をかけると彼は驚いた表情を浮かべた。
「……ええ。そういう君は古ノ森健太君ですよね?」
「おっ、知っててくれたんだ、嬉しいな。ところで五十嵐君――?」
今までまじまじと観察したことはなかったけれど、五十嵐君も佐倉君と同じくらいの身長だった。天然物なのかまさかの校則違反なのか、かなりキツめのウェーブがかかった黒髪の下で、細い黒縁のまんまる眼鏡の中から細い目が僕をまっすぐに見つめている。表情に出ないタチなのか、怒っているようにも笑っているようにも見えるその顔の中で、くい、と口端が上がった。
「もしかすると、校外活動の班決めのことで来たんですか? 古ノ森君は……変わってますね」
「ん? どういう意味?」
「言葉のとおりですよ」
浮かべているうっすらとした笑みはどういう感情なんだろう。ちょっと見当がつかない。
「僕のような、クラスの中でも完全に浮いてしまっている、とびっきりとっつきにくい得体のしれない変人になんて声をかけてくるからですよ。だから、変わっている、と言ったんです」
「へ、変人って……ちょっと大袈裟じゃないかな?」
「いいえ。僕は変わり者で変人ですよ。正真正銘の、ね」
自分から『変わり者』とか『変人』だとか言い出すなんて、確かにちょっと他の人とは違っているかもしれない。ただ、五十嵐君は僕の少し行き過ぎた感のある好奇心を舐めている。
「ふーん。だったら、余計に五十嵐君のことが知りたくなってきちゃったんだけどね、僕は」
すると、意外なことに五十嵐君ははじめて戸惑ったような表情をあらわにして笑い始めた。それは教室中に響くほどの大きな笑い声で、一瞬、ほんの一瞬視線が僕たちに集まった。
だが、じきに『またアイツか』とでも言いたげな雰囲気が周囲に漂い、僕たちだけになる。
「古ノ森君は面白い。でも、今のでわかったんじゃないですか? 僕に関わると損をするとね」
「損か得かは僕が決めることだよ、五十嵐君。それに、損得で友だちになるわけじゃないだろ」
「確かに。しかし、そう思っていない人間もこの世にはたくさんいるのですよ」
「……どういう意味?」
だが、僕の問いかけに五十嵐君はこたえてくれなかった。何も言わずに、騒々しさを増す一方の教室をゆっくりと静かに見回している。なんというか――歳の割には落ち着いてる奴だな。
「何を見てるの、五十嵐君?」
「そうですね――」
まるで僕の質問そのものが気の利いたジョークか何かだったように、くすり、と笑う。
「――教師側で勝手に割り振った方が時間の節約になるし、余計な小競り合いを起さずに済むのに、とかです。気の合う者同士、というのはどうにも不効率で不平等だ、そんなあたりです」
「……ぷっ。あはははっ、確かにそうだ」
「これでも、皮肉のつもりだったんですけど。どうして笑うんです?」
「面白い、と思ったからさ。それに、五十嵐君という人間の一側面が見られた気がしたからね」
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もちろん、この僕自身を筆頭に、だ。
だからというわけではないけれど、五十嵐君のようなとびきり理屈臭い偏屈の変人には慣れっこなのである。いや、むしろこういうタイプの人間を相手にする方が、年中ウェーイウェーイしてる陽キャ集団に囲まれるよりよっぽど落ち着く。彼らに中身がないとはいわない。けれど、この五十嵐君のようなタイプの方が僕の知的好奇心を満たしてくれる可能性が極めて高い。
まあ、四〇歳になった今だからこそ、こんな余裕が持てているのかもしれないけど。
リアルタイムで出会っていたら、速攻でキレちゃいそうだ。
「校外活動、誘ったら一緒に組んでくれるかな、五十嵐君?」
「……本当に物好きな人ですね。いいでしょう、効率化につながるのであればお受けします」
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