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第52話 僕の仲間に手を出すな at 1995/5/2
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なんとか佐倉君と五十嵐君からいい返事をもらえたところで、喜び勇んで渋田たちの待つ席に戻った僕は、ようやく異変が起きていることを知ったのだった。
「……よう、モリケン。お前、アイツらと組むんじゃねえの? 戻ってこなくていいのに――」
「ダッチ……そこで何してる?」
偶然なのか、それともあらかじめ知ってのことか、小山田は空いていた僕の机に足を投げ出し、ふんぞり返るようにして僕の椅子に我が物顔で座っていた。椅子の前脚二本を浮かせて後脚二本だけでバランスを取るようにゆらゆらとカラダを揺らしている。
そのまわりには、小山田が無理矢理集めてきた桃月やロコたちがいて、所在なく立ち尽くしていた。総勢八名の小山田『選りすぐり』の女子たちだ。純美子と咲都子はじっとうつむいて机に視線を落としている。そして、小山田の右腕、吉川に絡まれ、まとわりつかれてひきつり気味の愛想笑いを浮かべた渋田の視線が僕をとらえると、申し訳なさそうにうなずいてみせた。
「こいつらが三人だけしか集まらなくて困っているみたいだからよ、俺の班に入れてやった」
「……別に困ってない。僕も含めて四人だし、あと二人も確保したんだ。余計なお世話だよ」
「へぇ。まあ、どうでもいいだろ? もう決まったんだしよ?」
こいつ……!
クラスの二大勢力の片方がこんな事態になっているのであれば、室生たちも動くはず、その期待はアテが外れた。さっきまで争っていたはずの室生たちは今は素知らぬ顔をして傍観中だ。
「いいから向こうに行ってくれ。そこは僕の机だ。どけよ」
「おいおい。俺は今、くつろいでるところなんだぜ? 居心地いいんだ、ここは。お前こそ向こうに行ってろよ、ヒーロー気取りのナプキン王子様?」
――そういうことか。
どうやらこれはこの前の一件で恥をかかされた仕返しのつもりらしい。面倒なことになった。
よほど『ナプキン王子』という呼び名が気に入ったらしく、小山田と吉川はクスクスと忍び笑いを漏らしては、まわりの女子たちに聴こえるように何度も口に出した。悪趣味な奴らだ。
「そういやあ、アレ、あのあとどうしたんだ? ああ、そっか、こっそり持って帰ったのか!」
「いやん! えっちっ! モリケンの変態っ!」
僕を挑発するように、小山田のセリフに続けて吉川がシナを作って気色の悪い女声で言うと、その後ろに立っていたロコの浅黒い顔がたちまち朱に染まった。関節が白く浮き出るほど拳を握り締め、こみ上げる不快感と怒りを抑えつけるように表情が硬くこわばっていた。
さすがに――もう限界だ。
「……いいかげんにしろよ、ダッチ。お前のくだらない見栄とかプライドとか、そんなもんに付き合うつもりはこれっぽっちもないんだ。僕は、ごく普通の、どこにでもいる中学生としてこの一年間を楽しく過ごしたい。それだけでいいんだ。これ以上……邪魔をしないでくれ!」
「………………あぁ!?」
ガンッ!!
次の瞬間、物凄い勢いで小山田の拳が振り下ろされ、僕の机の表面に力の限り叩きつけられた。まわりいた生徒が驚きと恐怖のあまり、思わず身をすくめて縮こまる中、小山田は飛び起きるように立ち上がると、僕の方めがけて歩み寄って来る。相当頭にきているのか、スポーツ刈りの頭頂部は真っ赤に染め上げられていた。ついで、渋田に絡んでいた吉川も動き出した。
「てめぇ……! ナメてんのか、あぁ!?」
ずい――と懐近くまで潜り込むと、小山田はねめつけるような視線とともに襟元を掴んだ。
「ずいぶんと恰好いいタンカ切ってくれるじゃねえかよ雑魚のくせに! やんのか、おぉ!?」
飛び出す口調もとがった視線も、見た目どおりのヤクザ顔負けだ。僕の襟元を締め上げる腕っぷしもなかなか侮れないほど力強い。身長こそ僕の方が上だが、到底勝ち目はなさそうだ。
そう――あの頃の僕だったら。
「……よう、モリケン。お前、アイツらと組むんじゃねえの? 戻ってこなくていいのに――」
「ダッチ……そこで何してる?」
偶然なのか、それともあらかじめ知ってのことか、小山田は空いていた僕の机に足を投げ出し、ふんぞり返るようにして僕の椅子に我が物顔で座っていた。椅子の前脚二本を浮かせて後脚二本だけでバランスを取るようにゆらゆらとカラダを揺らしている。
そのまわりには、小山田が無理矢理集めてきた桃月やロコたちがいて、所在なく立ち尽くしていた。総勢八名の小山田『選りすぐり』の女子たちだ。純美子と咲都子はじっとうつむいて机に視線を落としている。そして、小山田の右腕、吉川に絡まれ、まとわりつかれてひきつり気味の愛想笑いを浮かべた渋田の視線が僕をとらえると、申し訳なさそうにうなずいてみせた。
「こいつらが三人だけしか集まらなくて困っているみたいだからよ、俺の班に入れてやった」
「……別に困ってない。僕も含めて四人だし、あと二人も確保したんだ。余計なお世話だよ」
「へぇ。まあ、どうでもいいだろ? もう決まったんだしよ?」
こいつ……!
クラスの二大勢力の片方がこんな事態になっているのであれば、室生たちも動くはず、その期待はアテが外れた。さっきまで争っていたはずの室生たちは今は素知らぬ顔をして傍観中だ。
「いいから向こうに行ってくれ。そこは僕の机だ。どけよ」
「おいおい。俺は今、くつろいでるところなんだぜ? 居心地いいんだ、ここは。お前こそ向こうに行ってろよ、ヒーロー気取りのナプキン王子様?」
――そういうことか。
どうやらこれはこの前の一件で恥をかかされた仕返しのつもりらしい。面倒なことになった。
よほど『ナプキン王子』という呼び名が気に入ったらしく、小山田と吉川はクスクスと忍び笑いを漏らしては、まわりの女子たちに聴こえるように何度も口に出した。悪趣味な奴らだ。
「そういやあ、アレ、あのあとどうしたんだ? ああ、そっか、こっそり持って帰ったのか!」
「いやん! えっちっ! モリケンの変態っ!」
僕を挑発するように、小山田のセリフに続けて吉川がシナを作って気色の悪い女声で言うと、その後ろに立っていたロコの浅黒い顔がたちまち朱に染まった。関節が白く浮き出るほど拳を握り締め、こみ上げる不快感と怒りを抑えつけるように表情が硬くこわばっていた。
さすがに――もう限界だ。
「……いいかげんにしろよ、ダッチ。お前のくだらない見栄とかプライドとか、そんなもんに付き合うつもりはこれっぽっちもないんだ。僕は、ごく普通の、どこにでもいる中学生としてこの一年間を楽しく過ごしたい。それだけでいいんだ。これ以上……邪魔をしないでくれ!」
「………………あぁ!?」
ガンッ!!
次の瞬間、物凄い勢いで小山田の拳が振り下ろされ、僕の机の表面に力の限り叩きつけられた。まわりいた生徒が驚きと恐怖のあまり、思わず身をすくめて縮こまる中、小山田は飛び起きるように立ち上がると、僕の方めがけて歩み寄って来る。相当頭にきているのか、スポーツ刈りの頭頂部は真っ赤に染め上げられていた。ついで、渋田に絡んでいた吉川も動き出した。
「てめぇ……! ナメてんのか、あぁ!?」
ずい――と懐近くまで潜り込むと、小山田はねめつけるような視線とともに襟元を掴んだ。
「ずいぶんと恰好いいタンカ切ってくれるじゃねえかよ雑魚のくせに! やんのか、おぉ!?」
飛び出す口調もとがった視線も、見た目どおりのヤクザ顔負けだ。僕の襟元を締め上げる腕っぷしもなかなか侮れないほど力強い。身長こそ僕の方が上だが、到底勝ち目はなさそうだ。
そう――あの頃の僕だったら。
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