ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第67話 さっきはおたのしみでしたね? at 1995/5/30

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 じとー……っ。


「……古ノ森君、ずいぶん楽しそうだったねー(棒読み)」


 三、四時間目も終わってお昼休みになったので、いつものメンバー四人で楽しくお弁当……と思っていたら、隣の席から凍てつくような冷たい視線と感情の抜け殻みたいな声が届いた。もう渋田も咲都子も定位置に収まっているのに、純美子だけはなぜか机を寄せようともせず、光の消えたくらうろのようなまっくろくろの座った瞳で僕を見ている。すげぇ怖いんですけど。


「たっ! 楽しかったわけないでしょっ!? あれはイジメなんだって! イ・ジ・メ!」

「ふーん、そうですかー。その割にはとーっても嬉しそうだったなー(棒)」

「み、見てたの!? だったら助けてよ、スミちゃん!」

「お邪魔かなーって思いましてー。あたしー、こう見えてもー空気読める子なのでー(棒)」


 ひいいっ! これは過去最高級のお怒りモードですっ! 

 やっぱりどこかで選択肢を間違ったに違いない。僕の知っている純美子は、こんな狂気のヤンデレ闇属性は持ってなかったはず。セーブポイントまで戻りたい。『リトライ』なんだし。


「ま、まあまあ。最近他のクラスでも流行ってるみたいね、あの遊び。許してあげなよ、スミ」


 と、さすがに見かねたのか――どっちを、なのかは不明だけど――咲都子がフォローに入る。


「モリケンだって、両手を後ろで縛られてたら逃げられないじゃんか。どうしようもないって」

「そ、そうだよ。さすがガタさん、いいこと言う!」

「タダじゃないから。一個貸しねー」

「うぐっ……。と、というわけで、どうかお許しいただけないでしょうか……スミちゃん様?」


 さすがに土下座こそしなかったけれど――だって、本当に僕はまっしろしろの清廉潔白なわけだし――心の底から気持ちをこめて僕が謝ると、ようやく純美子は、はぁ、と溜息をついた。


「……はいはい。もう許してあげます。でもっ、隣であんなことされると……すっごく嫌なの」


 なんで? って無邪気に聞き返しちゃダメな奴だ、これ。ようやく治まった漆黒の怒りの炎を再燃させかねない。すごく、ものすっごく聞いてみたいけれど、やっぱダメだ。ダメダメ。

 その我慢の甲斐もあってか、ようやっといつもどおりのお弁当タイムが始まった。


(しっかしなぁ……困った。まさか今頃になって……)


 僕は半ば機械的にお弁当の中身を口元にせっせと運びながら、さっきのひと騒動の最後の最後に、耳元で桃月がこっそり囁いたセリフをぼんやりと思い出していた。


『……うふふふ。みーつけた。健康診断の時に見た上履き、モリケンのだったんだー。えっち』


 ざざぁーっと一気に血の気が引いて、ほとんど飛び跳ねるように後ろを振り返ったのだけれど、もうその時には肝心の桃月の姿は遠く離れてしまっていたあとだったのだ。


(マジックの字は滲んでたけど、どんな模様だったのかは覚えていたってことだな……マズい)


 ただ、桃月の行動は不可解だった。もし犯人として僕を貶めるつもりだったのなら、さっきのタイミングでクラス中にふれ回れば良かったはずだ。なのになぜ、当の本人である僕だけに打ち明けたのか。別の機会をうかがっている? もしかして、LHRまで待つつもりなのか?


(っても、ウワサは間違いだし、先生に頼まれてやったことなんだ。正々堂々としてればいい)


 そう思ったら、ビクビクしてる自分が急に馬鹿々々しく思えてきてしまい、最後の唐揚げをぽいと口の中に放り込むと、むしゃりむしゃりと鼻息荒く噛み砕いて一気に飲み下した。その一部始終を見ていたのか、目の前でびっくりしたように目を丸くした純美子がぷっと笑った。


「なーんか、急に元気出てきたみたい。変なケンタ君」

「ん!? ……あ、ああ、いよいよ明日だなーって。今から楽しみすぎてさ」

「うふふふっ。おかしいの。なんか小学生の男の子みたいだよ?」

「だってさ……ずっと夢だったんだ。スミちゃんと一緒にでかけるのが。きっと楽しいと思う」


 あ。しまった。
 胸の奥にしまいこんでいた気持ちが溢れ、慌てて目を上げると純美子は真っ赤になっていた。


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