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第85話 勇者ユキノリと導かれし五人(一名欠員) at 1995/6/12
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また新しい週がはじまった。
のだが。
「きこえ……ますか……きこえ……ますか……勇者ユキノリよ……?」
「怖い怖い!」
「いま……あなたの心に……直接……語りかけています……きこえ……ますか……?」
「だから怖いってば! 朝っぱらからなんなのさ、モリケン!」
僕は渋田の耳元に囁きかけるのをやめ、にやり、と口元を引き上げてこう言った。
「ようやく我が『電算論理研究部』の部員が四人揃った。残るはあと一人。たった一人だ!」
「だねー。まあ主に頑張ったのってモリケンで、僕、ほとんど何もしてないんだけど」
「そう、まさにそこだ! 勇者ユキノリ! 今こそその秘められしチカラを見せる時だ!」
僕はのほほんとした渋田の表情のど真ん中に、ぐい、と人差し指を突き付けた。
「あと一人! なんとかしろ! いや、してくださいホントお願いしますからマジでっ!!」
「な、なんとかしろと言われましても……」
ホールドアップの態勢で、文字どおり目と鼻の先に滞空している僕の指先を寄り目気味に見つめたまま、渋田は弱々しく尻つぼみなセリフを吐くのが精一杯だ。すまなそうに付け加える。
「……以前にモリケンと二人で調べたでしょ? もう完全フリー無所属の生徒なんていないよ」
「確かに。確かにそうなんだけどさー……そこをなんとか!」
「なんとか! も何もないでしょ!? あとは掛け持ちか引き抜きしか方法がないよ!?」
「……むう」
渋田の言い分ももっともである。僕は腕組みしたまま低く唸るだけだった。
ただ正確に言えば『完全フリー無所属の生徒』という条件にあてはまる生徒はゼロではない。この条件に該当する生徒は二名――野方咲都子と水無月琴世という女子がいる。ただ、この『女子』というのが大きな障害であり問題なのだと、僕と渋田は考えていたのだった。
誤解なきように付け加えておくけれど、『電算論理研究部』が活動するにあたって、女子が存在することが足枷となる、などということはなく、そこには決して一切のやましさも後ろめたさも欠片もない。部長である僕は、胸を張ってそう宣言する者である。
ただやっぱり、当時のコンピューターの一般的な認識率・普及率の低さがネックだと思っていた。どちらかと言えば『マニアックな趣味』『電子工作の延長線上』といった見方が大半で、ただでさえ一部のマニアックで物好きなオタクの高級な趣味的扱いをされているシロモノを取り扱う部活なのである。
この『ただでさえ』がポイントで、そんなところに好んで入りたがる女子なんているわけがない。いや、実際いないのだ。非実在青少年くらい存在しえないのだ。
「うーん……どうしても見つからなければ、咲都子ちゃんに頼みこんで――」
「それはダメだ。絶対に」
きっぱりと、毅然とした口調で素早く僕が遮ると、渋田は少し驚いたような、でもなんだか妙に嬉しそうな表情を浮かべた。逆の立場なら、僕も似たようなことを言ってしまうかもしれない。ま、まだ、こ、恋人同士とかじゃないけど……。しかしその時は、渋田が僕と似たようなセリフを言って止めるはずだ。
「他のクラスで探すしかないのか、やっぱり……。でもなあ……」
「まだ一ヶ月あるんだよ、モリケン。諦めるにはちょっと早くない?」
「……だよな?」
「……ですです」
そろそろみんなが登校してくる時間だ。
そこで渋田は不器用なウインクをしてこう告げた。
「それにさ、古ノ森部長? なーんか忘れてないかなー? すっごく大事なことを、さ?」
「な、何をだよ?」
「もう僕ら二人だけじゃない。あと二人、四人揃って相談も作戦会議もできるんだってこと」
「………………そっか。サンキュー、シブチン」
やっぱりコイツは一番頼りになる親友様だ。
僕らは登校してきた我らが『電算論理研究部』部員二名の顔を見つけると急いで駆け寄った。
のだが。
「きこえ……ますか……きこえ……ますか……勇者ユキノリよ……?」
「怖い怖い!」
「いま……あなたの心に……直接……語りかけています……きこえ……ますか……?」
「だから怖いってば! 朝っぱらからなんなのさ、モリケン!」
僕は渋田の耳元に囁きかけるのをやめ、にやり、と口元を引き上げてこう言った。
「ようやく我が『電算論理研究部』の部員が四人揃った。残るはあと一人。たった一人だ!」
「だねー。まあ主に頑張ったのってモリケンで、僕、ほとんど何もしてないんだけど」
「そう、まさにそこだ! 勇者ユキノリ! 今こそその秘められしチカラを見せる時だ!」
僕はのほほんとした渋田の表情のど真ん中に、ぐい、と人差し指を突き付けた。
「あと一人! なんとかしろ! いや、してくださいホントお願いしますからマジでっ!!」
「な、なんとかしろと言われましても……」
ホールドアップの態勢で、文字どおり目と鼻の先に滞空している僕の指先を寄り目気味に見つめたまま、渋田は弱々しく尻つぼみなセリフを吐くのが精一杯だ。すまなそうに付け加える。
「……以前にモリケンと二人で調べたでしょ? もう完全フリー無所属の生徒なんていないよ」
「確かに。確かにそうなんだけどさー……そこをなんとか!」
「なんとか! も何もないでしょ!? あとは掛け持ちか引き抜きしか方法がないよ!?」
「……むう」
渋田の言い分ももっともである。僕は腕組みしたまま低く唸るだけだった。
ただ正確に言えば『完全フリー無所属の生徒』という条件にあてはまる生徒はゼロではない。この条件に該当する生徒は二名――野方咲都子と水無月琴世という女子がいる。ただ、この『女子』というのが大きな障害であり問題なのだと、僕と渋田は考えていたのだった。
誤解なきように付け加えておくけれど、『電算論理研究部』が活動するにあたって、女子が存在することが足枷となる、などということはなく、そこには決して一切のやましさも後ろめたさも欠片もない。部長である僕は、胸を張ってそう宣言する者である。
ただやっぱり、当時のコンピューターの一般的な認識率・普及率の低さがネックだと思っていた。どちらかと言えば『マニアックな趣味』『電子工作の延長線上』といった見方が大半で、ただでさえ一部のマニアックで物好きなオタクの高級な趣味的扱いをされているシロモノを取り扱う部活なのである。
この『ただでさえ』がポイントで、そんなところに好んで入りたがる女子なんているわけがない。いや、実際いないのだ。非実在青少年くらい存在しえないのだ。
「うーん……どうしても見つからなければ、咲都子ちゃんに頼みこんで――」
「それはダメだ。絶対に」
きっぱりと、毅然とした口調で素早く僕が遮ると、渋田は少し驚いたような、でもなんだか妙に嬉しそうな表情を浮かべた。逆の立場なら、僕も似たようなことを言ってしまうかもしれない。ま、まだ、こ、恋人同士とかじゃないけど……。しかしその時は、渋田が僕と似たようなセリフを言って止めるはずだ。
「他のクラスで探すしかないのか、やっぱり……。でもなあ……」
「まだ一ヶ月あるんだよ、モリケン。諦めるにはちょっと早くない?」
「……だよな?」
「……ですです」
そろそろみんなが登校してくる時間だ。
そこで渋田は不器用なウインクをしてこう告げた。
「それにさ、古ノ森部長? なーんか忘れてないかなー? すっごく大事なことを、さ?」
「な、何をだよ?」
「もう僕ら二人だけじゃない。あと二人、四人揃って相談も作戦会議もできるんだってこと」
「………………そっか。サンキュー、シブチン」
やっぱりコイツは一番頼りになる親友様だ。
僕らは登校してきた我らが『電算論理研究部』部員二名の顔を見つけると急いで駆け寄った。
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