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第91話 いつもと景色が違ってみえる月曜日 at 1995/6/19
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「おーっす、お早う!」
「……」
「おーい、シブチーン?」
「……」
「ど、どうしたんだよ? 無視すんなって」
いつもなら気の利いた返しの一つでもする渋田だというのに、無言のまま、きっ! と振り返って僕を尖った眼で睨みつけてきた。どうやらご機嫌斜めらしい。よほど気の合う奴でもなければ、どんなに内心不機嫌であろうとも曖昧な愛想笑いで場を和ませようとする渋田がだ。
「……僕を見捨てて逃げたね、モリケン?」
「え……? あ、ああ、もしかして……知り合いのおばさん、って奴のハナシしてるのか?」
「そうだよっ!」
渋田は一声叫ぶと、がばっと机に突っ伏した。そのままおいおい泣く真似まではじめる。
「あー、もうっ! あのあとウチに帰ったら、早速家族中から質問責めにあっちゃったよ!」
「ま、まーまー……」
「まーまー、じゃないよ!? モリケンはずるい! こっそりスミちゃんと――もがぐぶ!」
「いいか……それ以上喋ったら……言っている意味、わかるな……?」
渋田は僕の手のひらで口をぴったり塞がれて苦しそうにもがいていたが、こっちだってB級サスペンス映画の悪役っぽいセリフを吐くくらいには相当必死である。まだ登校している生徒の数は少ないものの、誰の耳に入るかわからない。やがて抵抗が弱くなったので解放してやる。
「……ぷはっ! こ、殺す気!?」
「場合によっては」
いろんな意味でお疲れの様子の渋田はすっかり諦めモードで、はぁ……、と溜息を漏らした。
「もー、土日の休み中、居心地悪かったよ……。みんなして冷やかすんだもん、ウチの家族」
「で、でもだな? みんな喜んでるんだろうし、嬉しいからこそなんだろ? 悪気はないって」
「だーけーどー! 乙女ゴコロは複雑なのっ!」
誰が乙女だっつーの。
どさくさに紛れやがって。
渋田にとっては散々な週末だったようだけれど、この僕にとってもまた、いつもとは違った週末だった。
今までであれば、ほぼ毎週のようにかかってきていた時巫女・セツナからの電話が今回に限っては一切なかったのだ。取り損ねたのかな? と着信履歴を確認したりもしたけれど無駄足だった。そもそも、誰にも見えないからと言って、僕はスマホをそのへんに置いたりしない。
『……ふん。ならば、信じざるを得ないようにしてやるまでさ。せいぜい覚悟しておくがいい』
ふいに、先週の通話の最後にセツナが口にしたセリフが頭をよぎった。
時巫女・セツナは一体何をする気なのだろう?
僕が歴史を変えてしまうのを妨害するのが目的なのだろうか。確かにそこだけを聞けば僕に非があるけれど、元々『変えてみろ』と言い出したのは彼女だ。責められるのは不条理である。
「で……? ねえねえ、どうなったのー?」
妙にざわざわした落ち着かない気持ちの僕を、渋田が小突いて正気に戻した。
「へ? 何が?」
「何が、じゃないでしょうがぁあああ! せっかく二人きりで帰ったんだし、例の作戦は、うまく言ったのか?
って聞いてるんだよぉおおお!」
「あー」
僕は照れ隠しであらぬ方向を見上げ、ぽりぽりと頬を掻いた。
「あの……すんません。まだッス」
「えええええ!? ……モリケンって、案外とヘタレなの? そうなの!? はぁ……」
「……」
「おーい、シブチーン?」
「……」
「ど、どうしたんだよ? 無視すんなって」
いつもなら気の利いた返しの一つでもする渋田だというのに、無言のまま、きっ! と振り返って僕を尖った眼で睨みつけてきた。どうやらご機嫌斜めらしい。よほど気の合う奴でもなければ、どんなに内心不機嫌であろうとも曖昧な愛想笑いで場を和ませようとする渋田がだ。
「……僕を見捨てて逃げたね、モリケン?」
「え……? あ、ああ、もしかして……知り合いのおばさん、って奴のハナシしてるのか?」
「そうだよっ!」
渋田は一声叫ぶと、がばっと机に突っ伏した。そのままおいおい泣く真似まではじめる。
「あー、もうっ! あのあとウチに帰ったら、早速家族中から質問責めにあっちゃったよ!」
「ま、まーまー……」
「まーまー、じゃないよ!? モリケンはずるい! こっそりスミちゃんと――もがぐぶ!」
「いいか……それ以上喋ったら……言っている意味、わかるな……?」
渋田は僕の手のひらで口をぴったり塞がれて苦しそうにもがいていたが、こっちだってB級サスペンス映画の悪役っぽいセリフを吐くくらいには相当必死である。まだ登校している生徒の数は少ないものの、誰の耳に入るかわからない。やがて抵抗が弱くなったので解放してやる。
「……ぷはっ! こ、殺す気!?」
「場合によっては」
いろんな意味でお疲れの様子の渋田はすっかり諦めモードで、はぁ……、と溜息を漏らした。
「もー、土日の休み中、居心地悪かったよ……。みんなして冷やかすんだもん、ウチの家族」
「で、でもだな? みんな喜んでるんだろうし、嬉しいからこそなんだろ? 悪気はないって」
「だーけーどー! 乙女ゴコロは複雑なのっ!」
誰が乙女だっつーの。
どさくさに紛れやがって。
渋田にとっては散々な週末だったようだけれど、この僕にとってもまた、いつもとは違った週末だった。
今までであれば、ほぼ毎週のようにかかってきていた時巫女・セツナからの電話が今回に限っては一切なかったのだ。取り損ねたのかな? と着信履歴を確認したりもしたけれど無駄足だった。そもそも、誰にも見えないからと言って、僕はスマホをそのへんに置いたりしない。
『……ふん。ならば、信じざるを得ないようにしてやるまでさ。せいぜい覚悟しておくがいい』
ふいに、先週の通話の最後にセツナが口にしたセリフが頭をよぎった。
時巫女・セツナは一体何をする気なのだろう?
僕が歴史を変えてしまうのを妨害するのが目的なのだろうか。確かにそこだけを聞けば僕に非があるけれど、元々『変えてみろ』と言い出したのは彼女だ。責められるのは不条理である。
「で……? ねえねえ、どうなったのー?」
妙にざわざわした落ち着かない気持ちの僕を、渋田が小突いて正気に戻した。
「へ? 何が?」
「何が、じゃないでしょうがぁあああ! せっかく二人きりで帰ったんだし、例の作戦は、うまく言ったのか?
って聞いてるんだよぉおおお!」
「あー」
僕は照れ隠しであらぬ方向を見上げ、ぽりぽりと頬を掻いた。
「あの……すんません。まだッス」
「えええええ!? ……モリケンって、案外とヘタレなの? そうなの!? はぁ……」
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