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第116話 その12「汝自身を許しなさい」 at 1995/7/14
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『――じゃあ何? ただ、一緒にでかけよう、って意味だった、ってこと?』
『ま、まあ、そういうことだな。うん』
渋田を呼び寄せ、手短に囁き声で報告したら呆れた顔をされた。なぜだ。
放課後の『電算論理研究部』の部室には、僕をはじめとした男子フルメンバー四人と、女子メンバーはロコと、そのロコに強引に連れてこられたらしい水無月さんの二人が集まっていた。
男子四人は『98』の置いてある文机を取り囲むように集まって、ふむ、ともっともらしい顔付きで唸り、女子二人は鏡のある洗面所の前でなにやらよくわからない作業に熱中していた。
「あ……あの……上ノ原、さん……! 顔をこんな風に出すのは……まだ恥ずかしくて……」
「んー、そーお? どのみち前髪はカットしちゃう予定なんだから、同じじゃない?」
しかし、純美子がテニス部の練習なのは把握済みだったけれど、咲都子まで休みだとは思わなかった。渋田曰く『家の用事』だそうだ。ちょっと相談したいことがあったんだけどな……。
溜息をついて正面に向き直ったタイミングを見計らったかのように、五十嵐君が口を開いた。
「――で、どうされるのです、古ノ森リーダー? いよいよ決着をつけるおつもりですか?」
「……んんっ!? い、五十嵐君!? それは一体どういう――!」
「どうもこうもありませんよ。もちろん『例の件』です」
一口に『例の件』って言われても、いろいろさまざまあるじゃん!
とっさにごまかそうかと思ったけれど、五十嵐君の穏やかで澄みきった瞳に真正面から見据えられるともう逃げ場はなかった。隣の佐倉君もいつになく真剣できりりとした顔をしている。
「はぁ……参った、降参だよ。僕は、ちゃんと自分と向き合って、きちんと答えを出したい」
「おぉ……!」
「決めた、んですね」
五十嵐君にしては珍しく、驚いた表情をあらわにした。佐倉君は、ごくり、と唾を呑んでひとつうなずいてみせた。ただ、渋田だけは、ぷい、とそっぽを向いて小さく呟いただけだ。
「……遅いんだっつーの」
「そういわれても……仕方ない、か。ははは……」
頭を掻き掻き僕が弱々しく応じると、渋田の福福しい横顔に、くいっ、と笑みが浮いた。僕は心の中で恥ずかしく思いながらも、感謝をする。すると、五十嵐君が僕を再び見つめた。
「して、策はあるのですか、古ノ森リーダー? 勝算はいかほどですか?」
「さ、策って……僕、戦うわけじゃないんだけど?」
「いえいえ。これはれっきとした戦いです。真剣勝負です。違いますか?」
「そ、そうかなー? う、うーん……策、かー……」
やけにチカラが入った五十嵐君の、意外なまでの積極性に押され気味になりつつも頭を悩ませる僕。
策……作戦……そんなの考えてなかったなー。
流れでいい雰囲気になったら、とか?
「いけません。いけませんね、そんなことでは」
「……もうしわけない、です」
やれやれ、と呆れたように首を振る五十嵐君に反射的に謝ってしまう。五十嵐君は言った。
「まず大前提として、好きになれるところを、ちゃんと好きだと思うこと、ですよ?」
「は、はっきり言うなぁ。そ、そこは問題ないんだけど、さ」
てれてれ。自然と頬が熱くなってしまう。
「次に、嫌いなところは、たとえどんなに嫌いでも、許すこと、です。許してあげることです」
「あ、う、うん………………んんっ!? 僕、一度でも『嫌いなところ』って言ったっけ!?」
だっけ? と動揺をあらわにして問い返してみたけれど、超真面目な顔付きでうなずかれてしまっては反論もできない。うーん、心構え、みたいなモンなのかな? べ、勉強になるなぁ。
「それさえできれば、自分自身を『好きになる』ことができるはずですよ、古ノ森リーダー」
「うんう………………って、そっちのハナシかいっ! どーりでおかしいと思ったよっ!!」
『ま、まあ、そういうことだな。うん』
渋田を呼び寄せ、手短に囁き声で報告したら呆れた顔をされた。なぜだ。
放課後の『電算論理研究部』の部室には、僕をはじめとした男子フルメンバー四人と、女子メンバーはロコと、そのロコに強引に連れてこられたらしい水無月さんの二人が集まっていた。
男子四人は『98』の置いてある文机を取り囲むように集まって、ふむ、ともっともらしい顔付きで唸り、女子二人は鏡のある洗面所の前でなにやらよくわからない作業に熱中していた。
「あ……あの……上ノ原、さん……! 顔をこんな風に出すのは……まだ恥ずかしくて……」
「んー、そーお? どのみち前髪はカットしちゃう予定なんだから、同じじゃない?」
しかし、純美子がテニス部の練習なのは把握済みだったけれど、咲都子まで休みだとは思わなかった。渋田曰く『家の用事』だそうだ。ちょっと相談したいことがあったんだけどな……。
溜息をついて正面に向き直ったタイミングを見計らったかのように、五十嵐君が口を開いた。
「――で、どうされるのです、古ノ森リーダー? いよいよ決着をつけるおつもりですか?」
「……んんっ!? い、五十嵐君!? それは一体どういう――!」
「どうもこうもありませんよ。もちろん『例の件』です」
一口に『例の件』って言われても、いろいろさまざまあるじゃん!
とっさにごまかそうかと思ったけれど、五十嵐君の穏やかで澄みきった瞳に真正面から見据えられるともう逃げ場はなかった。隣の佐倉君もいつになく真剣できりりとした顔をしている。
「はぁ……参った、降参だよ。僕は、ちゃんと自分と向き合って、きちんと答えを出したい」
「おぉ……!」
「決めた、んですね」
五十嵐君にしては珍しく、驚いた表情をあらわにした。佐倉君は、ごくり、と唾を呑んでひとつうなずいてみせた。ただ、渋田だけは、ぷい、とそっぽを向いて小さく呟いただけだ。
「……遅いんだっつーの」
「そういわれても……仕方ない、か。ははは……」
頭を掻き掻き僕が弱々しく応じると、渋田の福福しい横顔に、くいっ、と笑みが浮いた。僕は心の中で恥ずかしく思いながらも、感謝をする。すると、五十嵐君が僕を再び見つめた。
「して、策はあるのですか、古ノ森リーダー? 勝算はいかほどですか?」
「さ、策って……僕、戦うわけじゃないんだけど?」
「いえいえ。これはれっきとした戦いです。真剣勝負です。違いますか?」
「そ、そうかなー? う、うーん……策、かー……」
やけにチカラが入った五十嵐君の、意外なまでの積極性に押され気味になりつつも頭を悩ませる僕。
策……作戦……そんなの考えてなかったなー。
流れでいい雰囲気になったら、とか?
「いけません。いけませんね、そんなことでは」
「……もうしわけない、です」
やれやれ、と呆れたように首を振る五十嵐君に反射的に謝ってしまう。五十嵐君は言った。
「まず大前提として、好きになれるところを、ちゃんと好きだと思うこと、ですよ?」
「は、はっきり言うなぁ。そ、そこは問題ないんだけど、さ」
てれてれ。自然と頬が熱くなってしまう。
「次に、嫌いなところは、たとえどんなに嫌いでも、許すこと、です。許してあげることです」
「あ、う、うん………………んんっ!? 僕、一度でも『嫌いなところ』って言ったっけ!?」
だっけ? と動揺をあらわにして問い返してみたけれど、超真面目な顔付きでうなずかれてしまっては反論もできない。うーん、心構え、みたいなモンなのかな? べ、勉強になるなぁ。
「それさえできれば、自分自身を『好きになる』ことができるはずですよ、古ノ森リーダー」
「うんう………………って、そっちのハナシかいっ! どーりでおかしいと思ったよっ!!」
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