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第119話 シミュレーションなら二度やった(一度目) at 1995/7/15
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「んー? 待ったー? どーおー? ひらーん!」
「ひらーん、じゃないだろ、ひらーん、じゃ。十五分も遅刻だっての。まったく……」
七月も半ばになると、気温は二十五度。
そろそろ汗ばむ季節のはじまりだ。
珍しく青空色のサマードレス風ワンピースに身を包んだロコは、ほぼ無風の空気を揺り動かして華麗なターンを決めると、ふわり、とワンピースの裾をひるがえしてみせた。しかし、待たされっ放しだった僕は、ぶすり、としたままバス停のベンチから立ち上がろうともしない。
「だ、大体だな? こんなとこ、学校の奴らに見られでもしたら、それこそ一大事なんだぞ?」
「べっつにー?」
顔を伏せるように地面に視線を落としてそわそわしている僕を尻目に、ロコはまだミュージカルの主演女優のようにベンチの前を行ったり来たりしながら舞い踊っている。絶好調かよ。
「だってー。あたしとケンタの組み合わせなんて、いくらでも見慣れてるじゃん。気にしすぎ」
「そ、そうは言うけど……。か、勘違い、されちゃったら困るだろ? ロコが」
「………………ぷっ」
「……なんで笑った? おい、こら! いい加減、止まれっつーの!」
ったく……。
せっかくこっちが気を遣ってるのに、人の気も知らないで!
無理矢理とっ掴まえてなんだか小馬鹿にされているような気さえしはじめた妙に様になっている踊りをやめさせようとしたものの、はるかに運動神経が良いのはロコの方。勝ち目はない。
「くっ……そ……。おのれ、ちょこまかと……」
「ふぅー。そろそろ休憩しよっかな、っと。ちょっと汗かいちゃったし……」
結局触れることすらできなかったロコは、ベンチでぐったりうなだれている僕の隣に座ると、涼しい空気を求めて胸元をつまんでぱたぱたとやりはじめた。きらきらと汗の粒が反射する健康的な胸元が見え隠れして、思わず目が引き寄せられてしまいそうになるのを必死で耐える。
話を昨日に戻そう。
ロコの執拗な尋問に耐え切れず、ついに白状することになってしまった僕は渋々口を開いたのだった。
『あ、あのう……そのだな……。スミちゃんと、日曜日にでかけようって話になって……だな』
『……で? するの? ついに? しちゃうの!?』
『な、何をだよっ!?』
『そりゃー決まってるじゃん。告白でしょ、コ・ク・ハ・ク。スミのこと、好きなんでしょ?』
『は……? おおおおお前なななな何言って――!』
あまりの衝撃に度肝を抜かれすぎて震えが止まらなくなった僕は、照準の定まらない指先で辛うじてロコを指差した。が、その指をあっさり捕まえて握ったロコは肩をすくめて笑った。
『それくらいわかるって。ケンタは弟子、あたしは師匠。他の子たちは知らないだろうけどね』
『そ、そっか……参ったな……』
そうなってしまったら、あとはもうやけくそだ。気づけば僕は、頼れる『ヒーロー』、そして師匠であり兄貴でもあるロコに向かって、純美子への想いを一息にぶちまけてしまっていた。
すべてを超がつくほど真面目な顔で聞き終えたロコは、大きくうなずきこう言ったのである。
『わかったわ! じゃあ、明日一日、予行演習の相手になってあげる! いいわね、ケンタ!』
ということで今日、半日授業が終わってからダッシュですぐさま帰宅し、いつも利用するのとは反対側の菅原神社経由のバス停に集合、ということになってしまったのであった。
「なー、ロコ? え、えっと……予行演習、っていうけど、具体的には何をすればいいんだ?」
「そ、そんなの決まってる……でしょ?」
手にしたハンカチでパタパタ仰いでいたロコの手が止まった。
なぜか僕を見ようとしない。
「こ………………告白、ってのをやんのよ。あたし相手に」
「マ……マジで?」
「なっ! 何よ、ご不満!? 一応これでも、学校一、二を争う美少女なんですけどっ!?」
「……あのな、ロコ? そういうの……間違っても、自分から言わない方がいいと思うぞ?」
どことなくいつもと違う、なんとなくぎこちない僕らは、ようやくやってきたバスに乗りこむのだった。
「ひらーん、じゃないだろ、ひらーん、じゃ。十五分も遅刻だっての。まったく……」
七月も半ばになると、気温は二十五度。
そろそろ汗ばむ季節のはじまりだ。
珍しく青空色のサマードレス風ワンピースに身を包んだロコは、ほぼ無風の空気を揺り動かして華麗なターンを決めると、ふわり、とワンピースの裾をひるがえしてみせた。しかし、待たされっ放しだった僕は、ぶすり、としたままバス停のベンチから立ち上がろうともしない。
「だ、大体だな? こんなとこ、学校の奴らに見られでもしたら、それこそ一大事なんだぞ?」
「べっつにー?」
顔を伏せるように地面に視線を落としてそわそわしている僕を尻目に、ロコはまだミュージカルの主演女優のようにベンチの前を行ったり来たりしながら舞い踊っている。絶好調かよ。
「だってー。あたしとケンタの組み合わせなんて、いくらでも見慣れてるじゃん。気にしすぎ」
「そ、そうは言うけど……。か、勘違い、されちゃったら困るだろ? ロコが」
「………………ぷっ」
「……なんで笑った? おい、こら! いい加減、止まれっつーの!」
ったく……。
せっかくこっちが気を遣ってるのに、人の気も知らないで!
無理矢理とっ掴まえてなんだか小馬鹿にされているような気さえしはじめた妙に様になっている踊りをやめさせようとしたものの、はるかに運動神経が良いのはロコの方。勝ち目はない。
「くっ……そ……。おのれ、ちょこまかと……」
「ふぅー。そろそろ休憩しよっかな、っと。ちょっと汗かいちゃったし……」
結局触れることすらできなかったロコは、ベンチでぐったりうなだれている僕の隣に座ると、涼しい空気を求めて胸元をつまんでぱたぱたとやりはじめた。きらきらと汗の粒が反射する健康的な胸元が見え隠れして、思わず目が引き寄せられてしまいそうになるのを必死で耐える。
話を昨日に戻そう。
ロコの執拗な尋問に耐え切れず、ついに白状することになってしまった僕は渋々口を開いたのだった。
『あ、あのう……そのだな……。スミちゃんと、日曜日にでかけようって話になって……だな』
『……で? するの? ついに? しちゃうの!?』
『な、何をだよっ!?』
『そりゃー決まってるじゃん。告白でしょ、コ・ク・ハ・ク。スミのこと、好きなんでしょ?』
『は……? おおおおお前なななな何言って――!』
あまりの衝撃に度肝を抜かれすぎて震えが止まらなくなった僕は、照準の定まらない指先で辛うじてロコを指差した。が、その指をあっさり捕まえて握ったロコは肩をすくめて笑った。
『それくらいわかるって。ケンタは弟子、あたしは師匠。他の子たちは知らないだろうけどね』
『そ、そっか……参ったな……』
そうなってしまったら、あとはもうやけくそだ。気づけば僕は、頼れる『ヒーロー』、そして師匠であり兄貴でもあるロコに向かって、純美子への想いを一息にぶちまけてしまっていた。
すべてを超がつくほど真面目な顔で聞き終えたロコは、大きくうなずきこう言ったのである。
『わかったわ! じゃあ、明日一日、予行演習の相手になってあげる! いいわね、ケンタ!』
ということで今日、半日授業が終わってからダッシュですぐさま帰宅し、いつも利用するのとは反対側の菅原神社経由のバス停に集合、ということになってしまったのであった。
「なー、ロコ? え、えっと……予行演習、っていうけど、具体的には何をすればいいんだ?」
「そ、そんなの決まってる……でしょ?」
手にしたハンカチでパタパタ仰いでいたロコの手が止まった。
なぜか僕を見ようとしない。
「こ………………告白、ってのをやんのよ。あたし相手に」
「マ……マジで?」
「なっ! 何よ、ご不満!? 一応これでも、学校一、二を争う美少女なんですけどっ!?」
「……あのな、ロコ? そういうの……間違っても、自分から言わない方がいいと思うぞ?」
どことなくいつもと違う、なんとなくぎこちない僕らは、ようやくやってきたバスに乗りこむのだった。
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