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第143話 インタールードⅡ at 1995/7/27
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時巫女・セツナの告げたセリフを咀嚼するには時間がかかった。通話中であることを示す低い空電音だけが薄暗闇に漂う。沈黙に耐え切れず、僕は皺枯れた声でのろのろと聞き返した。
「……え? それって一体……どういう意味なんだ?」
『聴こえたろ? 私とお前は、運命共同体なのだ――そう言ったのだよ、古ノ森健太』
運命――共同体?
「い、いやいやいや。言葉自体の意味なら知っているさ。そういうことじゃなくって――!」
『……他に言い換えようがない。もはやお前のこの「リトライ」の成否は、お前だ
けの問題ではなくなってしまった、と言っているのだよ、私は』
「なくなってしまった、ってどういうことだ?」
唐突に足元の床が消え失せてしまったかのような不安感が僕を襲った。
「そもそもこの『リトライ』って奴は、お前が仕組んだことじゃなかったのか? お前が僕を死の直前から拾い上げてきて、二十六年も過去の世界へと放り込んだんじゃなかったのか!?」
『そんなことは一度も言っていないがね』
「言ってないって……い、いやいやいや! だって! そう思っても、ちっとも不思議じゃないシチュエーションだったじゃないか! 僕はもうてっきりすべてお前が仕組んだことだと!」
『おいおいおい。勝手に勘違いしたのはお前だろう?』
「そ、そりゃそうだけどさ――」
元々誰が何を保証してくれるわけでもない『リトライ』ではあったものの、管理側・支配している側だと思っていた時巫女・セツナが、実はそうではなかった、ということは――。
「もしかして……お前も『リトライ者』、プレイヤー側だったってことなのか? 嘘だろ!?」
『プレイヤー、ときたか。くくくっ』
思わずこみあげる衝動に耐えかねたかのように時巫女・セツナは笑い声を噛み殺した。
『まあそういうことにしておこうじゃないか、古ノ森健太。事実はどうあれ。それよりも、だ』
「しておこうって……まだ何か隠してそうだけど、どうせ聞いても無駄なんだよな?」
『くくくっ――』
やれやれ。この調子では、時巫女・セツナからまともな返答は得られなさそうだ。僕は喉の渇きを感じ、水を注いだガラスコップに口を付けた。ひんやりした感覚が思考をリセットする。
『それより、報告と忠告だ。……聞きたくはないのかね?』
「もちろん聞かせてもらうよ」
さっきの『運命共同体』発言は、その範疇に入ってなかったのか。少し意外だ。これ以上他に何がある? 僕はスツールの上で座り直し、ごくりと唾を呑みくだしてから耳を傾けた。
『まず、報告だが……それは今の「現実乖離率」についての話だ』
「? ……ああ、うん」
『ああ、気持ちはわかるとも! アプリを立ち上げるだけなのに、そう思っているのだろう?』
「………………違う、って言いたいのか?」
問い質すより自分の眼で見た方が早いだろう。
僕はスマホを一旦耳元から離して操作する。
――15パーセント。
僕はしばし茫然として、まん丸く開いた目をしぱしぱとしばたたかせた。
そんな……馬鹿な。
「どうして減ってるんだよ!? 五月時点で38パーセント、最後に見た六月の時なんか――」
『……わたしはな? 確かにお前に言ったはずだぞ? 何度も、何度も。繰り返し、な?』
時巫女・セツナのそのセリフからは、怒りや責めといった負の感情が省かれていた。
『これこそが時間の持つ「自己修復力」であり、歴史が引き起こした「拒絶反応」の結果だよ。最近お前の身に「この世界をも変えかねない一大イベント」が発生しただろう? したはずだ』
「ま、まさか……純美子へ告白したことを言っているのか? 世界が……変わる……だって?」
15パーセント――その数字が、僕の手の中で虚空に青白い残像を浮かべながら揺れていた。
「……え? それって一体……どういう意味なんだ?」
『聴こえたろ? 私とお前は、運命共同体なのだ――そう言ったのだよ、古ノ森健太』
運命――共同体?
「い、いやいやいや。言葉自体の意味なら知っているさ。そういうことじゃなくって――!」
『……他に言い換えようがない。もはやお前のこの「リトライ」の成否は、お前だ
けの問題ではなくなってしまった、と言っているのだよ、私は』
「なくなってしまった、ってどういうことだ?」
唐突に足元の床が消え失せてしまったかのような不安感が僕を襲った。
「そもそもこの『リトライ』って奴は、お前が仕組んだことじゃなかったのか? お前が僕を死の直前から拾い上げてきて、二十六年も過去の世界へと放り込んだんじゃなかったのか!?」
『そんなことは一度も言っていないがね』
「言ってないって……い、いやいやいや! だって! そう思っても、ちっとも不思議じゃないシチュエーションだったじゃないか! 僕はもうてっきりすべてお前が仕組んだことだと!」
『おいおいおい。勝手に勘違いしたのはお前だろう?』
「そ、そりゃそうだけどさ――」
元々誰が何を保証してくれるわけでもない『リトライ』ではあったものの、管理側・支配している側だと思っていた時巫女・セツナが、実はそうではなかった、ということは――。
「もしかして……お前も『リトライ者』、プレイヤー側だったってことなのか? 嘘だろ!?」
『プレイヤー、ときたか。くくくっ』
思わずこみあげる衝動に耐えかねたかのように時巫女・セツナは笑い声を噛み殺した。
『まあそういうことにしておこうじゃないか、古ノ森健太。事実はどうあれ。それよりも、だ』
「しておこうって……まだ何か隠してそうだけど、どうせ聞いても無駄なんだよな?」
『くくくっ――』
やれやれ。この調子では、時巫女・セツナからまともな返答は得られなさそうだ。僕は喉の渇きを感じ、水を注いだガラスコップに口を付けた。ひんやりした感覚が思考をリセットする。
『それより、報告と忠告だ。……聞きたくはないのかね?』
「もちろん聞かせてもらうよ」
さっきの『運命共同体』発言は、その範疇に入ってなかったのか。少し意外だ。これ以上他に何がある? 僕はスツールの上で座り直し、ごくりと唾を呑みくだしてから耳を傾けた。
『まず、報告だが……それは今の「現実乖離率」についての話だ』
「? ……ああ、うん」
『ああ、気持ちはわかるとも! アプリを立ち上げるだけなのに、そう思っているのだろう?』
「………………違う、って言いたいのか?」
問い質すより自分の眼で見た方が早いだろう。
僕はスマホを一旦耳元から離して操作する。
――15パーセント。
僕はしばし茫然として、まん丸く開いた目をしぱしぱとしばたたかせた。
そんな……馬鹿な。
「どうして減ってるんだよ!? 五月時点で38パーセント、最後に見た六月の時なんか――」
『……わたしはな? 確かにお前に言ったはずだぞ? 何度も、何度も。繰り返し、な?』
時巫女・セツナのそのセリフからは、怒りや責めといった負の感情が省かれていた。
『これこそが時間の持つ「自己修復力」であり、歴史が引き起こした「拒絶反応」の結果だよ。最近お前の身に「この世界をも変えかねない一大イベント」が発生しただろう? したはずだ』
「ま、まさか……純美子へ告白したことを言っているのか? 世界が……変わる……だって?」
15パーセント――その数字が、僕の手の中で虚空に青白い残像を浮かべながら揺れていた。
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