ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第146話 僕らの『がっしゅく!』二日目(3) at 1995/7/28

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「結果的にうまくいったからいいものの……ロコの奴め……ぶつぶつ……」

「……なんか言ったー! ケンタ君!」

「な! なんでもないなんでもない!」


 ざ、ざ、ざ、ざ、ざ。
 ペダルを踏みこむ足にチカラを込めると円柱状の外輪が回り、湖面をリズミカルにいた。


「ホントにあたし、がなくって平気?」

「だーいじょうぶだって! 僕、自転車漕ぎで鍛えてるからさ! どこへなりとご案内っと!」


 ……正直に言います。

 ボートに乗り込む時、純美子のスカートの裾が乱れて、真っ白な太腿が目に飛び込んできて、もードキドキが止まらなくって。だからこれ以上、チラチラーっとしたら目に毒っていうか。


「あ! あれ、遊覧船! ほら、甲板にいるの、ツッキーたちじゃない!?」

「ホントだ! おーい!! ――!?」


 どきり――ボートから身を乗り出した純美子は、バランスを取るため僕の手をぎゅっと握る。


「……? どうしたの、ケンタ君?」

「な! なんでも、ない……です!」


 キラキラと陽の光を反射した湖面をバックに、純美子が僕の方に振り返って、さっきまでぶんぶんと振っていた右手で耳元にかかった髪を掻き上げる。僕はつか息をするのを忘れた。


(はーっ……。やっぱ、かわいいんだよなぁ……ホントにもう……)


 それから純美子は、とっさに握り締めてしまった手に気づいた様子で、少しはにかんだように歯を見せて笑ってみせた。ぎゅ、とチカラがこめられる。視線を上げると大きな瞳がそこに。





 僕は、何かに憑かれたようにその暖かな手を引き寄せて――。





「――っはっはー! はーっはっはっはー!! この湖は、今からあたしらのモンだーっ!!」

「あー、畜生! どこの馬鹿野郎だよっ!」


 鏡のように静まり返った湖面を乱暴に掻き分けながら僕たちの方へと近づいてくる一艘のスワンボートが見えた。その不安定な舳先で、突き出た白鳥の首に手を置き、仁王立ちの体勢で高らかに馬鹿笑いをしながら大絶叫を上げているのは――くっそ! 咲都子たちの船か!


「あれ……サトちゃん……だよね?」

「あー……うん。間違いないね。っていうか! もしかして僕たちが標的なのかよっ!?」


 くすくすと小鳩のように笑いを押し殺している純美子を丁重に座席へご案内すると、僕は大急ぎで全身の力を振り絞り、一気にペダルを踏みこんだ。奴らの狙いは……純美子の略奪だ!


「くっそ! 逃げやがったぞ!! お、おい! もっと速度は上がらんのか!?」

「ひ、必死で漕いでるんだってば。遅いと思ったらサトチンも漕いでよぅ……ひぃひぃ……」


 もうあっちの会話まで聴こえる距離だ。どうやら向こうのエンジンは早くも悲鳴を上げているらしい(文字どおりに、だ)。あの馬鹿の茶番に付き合う気はさらさらないが、せっかくのいい雰囲気を邪魔されるのはもっと癪だ。ここは逃げるしかない。いや、逃げ切ってみせる!


 だばだばだばだばだばばば!!


 しかし、いかんせんこのスワンボートっていう奴は、速度が出るように作られてはいない。抜群の安定性と誰でも操縦できる初心者向けなところがコンセプトなのだから仕方ないのだ。


「あははははー! 速い、速いよー! がんばれー! ケンタ君ー!」

「お、おい!? 呑気に水なんぞ飲んどる場合か! 漕げ! 漕ぐのだ! 逃げられるぞ!?」


「ぐぬぬぬぬー!」「ふおおおおー!」


 不毛で誰も幸せにならなさそうな超低速レースを繰り広げる僕ら。
 はぁ、ま、楽しいなこれ。



 その時だった。
 悲痛な叫びが湖面に響き渡ったのは。



「よ、予定外の事態が発生しました! 至急援護をお願いできますか、古ノ森リーダー!!」


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