ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第149話 僕らの『がっしゅく!』二日目・アフター at 1995/7/28

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「――ってわけで、本合宿の目的である『文化祭の出し物』について話し合いたいと思います」


 夕食後まだ少しざわめいていたリビングは、僕のひとことでたちまち落ち着きを取り戻した。


 ちなみに本日の夕食のメインは、山梨県の郷土料理のひとつ『ほうとう』だ。

 小麦粉を練って作った平打ちのうどんっぽい麺に、かぼちゃや芋、きのこや季節の野菜に豚肉といった具材を加えて、味噌ベースの味付けで煮込むというシンプルで素朴な料理である。麺に打ち粉がついたまま煮込むから独特のとろりとした食感が生まれて、とても美味しかった。


 僕自身、お腹の中からほくほく暖まった状況が幸せで、このまま寝てしまいたかったのだが。


「忘れちゃいないと思うけど、僕らはここに遊びに来たんじゃないからね? しっかりやろう」

「うーわー……。その言い方、荻センっぽいわー」


 ロコがうんざりした顔で茶化すと、全員くすくすと忍び笑いをする。僕は気にせず進めた。


「はじめに言っておくけれど……小山田や室生との競争については忘れること。いいね?」

「で、でも……。もし負けたら、ロコちゃんはテニス部に取られちゃうんですよね?」

「ああ、そうなるね、佐倉君。……でもだ、それを気にしすぎちゃダメだ、って言ってるのさ」


 姉思いの弟(?)佐倉君が寂しそうにロコを見る。一方のロコは、軽く肩をすくめて応じた。


「あのさ? 僕らは、僕らのやりたいことをやるべきなんだよ」


 なぜかあらかじめ用意されていたホワイトボードに文字を書き入れつつ、僕は続けて言う。


「人を集めるにはーとか、あいつらがこんな出し物やるからーとか、他ばっかり気にしてたら、自分たちの本当にやりたいことが見えなくなる。そんなことじゃ、勝ち負け以前の話、だろ?」


 僕がそういうと、あちこちから、でも! だって! という声が上がりつつも、どこか少しホッとした表情を皆浮かべていた。やっぱりみんな、それが一番気になっていたのだろう。


「じゃあ、なにしようってのさ? たとえば……自作ゲームお披露目とかでもいいってこと?」

「もちろんだよ、シブチン。けどね――」

「……けど?」


 眉をひそめる渋田に、僕は皮肉めいた笑みを浮かべながらこうこたえてやった。


「ほら、僕らって一応、校長先生の後押しもあって新設された部活動じゃんか? なのに、お遊び用のゲームばっかり作ってます! だと、PTAとか親からの印象もよくないと思うんだ」


 自分たちのやりたいことを! とは言いつつも、恩人でもある校長先生に肩身の狭い思いをさせるのは、あまりにも申し訳ないと思ったのだ。そりゃわかるけどさ……渋田は不服そうだ。


「だからといって、僕、自作ゲームを公開しない、だなんて一言も言ってないぜ、シブチン?」

「ん? ん?」

「だって、そのために進めてきたんじゃんか。はじめは僕とシブチンの二人きりだったよね?」


 そして僕は、五十嵐君を、佐倉君を、水無月さんを順に見つめてからこう続けた。


「そして今や、こんなに頼もしい仲間が増えたんだ! だったら、もうやるしかない、だろ? 応援してくれる仲間だっている。陰キャの集まりだってできるんだぜ、ってとこ見せようぜ!」

「そのためにも、入念な計画の立案が肝心……ということですね、古ノ森リーダー?」

「そういうこと! じゃあ、ハカセも手伝ってよ。ブレイン・ストーミングの時間だ!」


 そこからは僕と五十嵐君の二人が議事進行と書記の二役を兼ねて、ホワイトボードいっぱいにみんなが思いついたアイデアを書き連ねていった。


 パソコンにくわしい者、また一方、まったく知識なんて持ち合わせてない者がいる部なわけで。かえって意見が偏りすぎることなく、さまざまな視点からの意見が飛び出してくる。中身が四〇歳の、元・IT業界のチーフプログラマーの僕でさえ舌を巻く思いで驚きの連発だ。


「はははっ! なんかすごいじゃん、電算論理研究部! じゃあ、それぞれ検討していこう!」


 そして僕らは、その日夜遅くまで意見をかわしあい、真剣に話し合ったのだった。


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