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第151話 僕らの『がっしゅく!』三日目(1) at 1995/7/29
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「ほぁー……すごいね……キレイだー」
「……ね。あのお姉さんに感謝だなー」
合宿三日目。
さすがに二泊目の朝ともなると少しばかり余裕が出てきて、ようやく僕らは早起きして山中湖の朝焼けをこの目にすることができた。時刻は朝の、四時五五分である。気温はかなり寒い。
「真っ赤な富士山ってさ……またちょっと雰囲気が変わるわよね? って、寝てるし……!」
「ぐぅ……はっ!? そ、そうだねサトチン、そのファッションもまたステ――ごふっ!!」
「ねーねー? かえでちゃん! 今日は何で対決しよっかー?」
「や、やですよぅ……。あ! そうだ! じゃあ、お料理教えてくださいっ!」
「これが『赤富士』……葛飾北斎が見た富士山なんですね。寒くないですか、ツッキー?」
「あ……あれ、ですよね? 『富嶽三十六景』の中の『凱風快晴』。ふぇ!? ありがと……」
……なんか、最後の二人だけえらく高尚な話してるし。
にしても、ツッキーも負けずに物知りだ。博学で知られるハカセ相手でもちっとも見劣りしないなんて。ま、恋愛は不得意だけど。
「……ぶぅー。すぐそうやって、他の女の人のことばっかり話すんだから、ケンタ君は」
「ち、違うよ!? 別に僕、年上に興味ないからね? だいたい、それにさ――!」
はいはい。僕も負けずに恋愛初心者で超不得意ですよ、っと。女心って奴はあいかわらずちっともわからないし、今も危うく僕と純美子だけのヒミツを口走りそうになっちゃったし。
っていうか……。
こんなに距離が近くて、ヤキモチも妬くんなら、だ、大丈夫、だよ……ね?
この寒さとロマンチックな雰囲気と、真紅に染まった富士山が僕に味方してくれているはずだ。僕はすぐ右隣に並んで立っている純美子の右肩に、そろそろ……と慎重に、だが着実に、凍える右手を伸ばしていった。もうちょっと……あと少しで……いける……はず……!
「ねっ? 今日、三日目のスケジュールは、どうするんですか? 古・ノ・森・部・長・?」
「は、はいっ! えー……えっとぉー……」
絶妙な――いや、最悪のタイミングで、ぴょん! と飛び跳ねるようにして純美子が振り返り、僕は残像すら見えない速度で右手を一気に引き戻す。なぜか背後から一斉に溜息が漏れた。
(……どんくさい奴)
(じれったいよねー)
(あの馬鹿弟子は……)
(ファ、ファイトですぅー……!)
(いいから、それを羽織っていてください。僕は寒くありませんから)
(で、でも……! い、五十嵐君に、も、申し訳なくって……そのう)
……最後の二人は、声を潜める必要ないのでは?
僕を見つめる純美子の、朝焼けがかすむほど眩しいスマイルと、ん? というカワイイ催促の表情に完敗した僕は、漏れ出そうになる溜息を静かに押し殺して代わりにこう言った。
「合宿最後の日の楽しみ方をわくわく考えているメンバーには申し訳ないんだけどさ、今日は昨日の会議の続きをして、文化祭に向けての行動計画を完成させる予定だよ。みんないい?」
えー! という不満げな声が(主にロコから)上がったが、その重要さがわかっているのでそれ以上これといった要望はなかった。元々僕らは遊びに来たわけではないのだから仕方ない。
「ただ、会議だけずっとしていても煮詰まるだけだからね。適度に息抜きもする。泊めていただいたお礼の草むしりと、夕食の買い物と準備、夜のイベントの買い出し、この三つの担当をくじ引きで決めてやろうと思うんだけど。どうかな?」
「草むしりだけ、フツーに労働なんだよなぁ……」
「それはハズレってことで。その方が盛り上がるだろ、シブチン?」
「三組しかないようですが……」
「ああ、ハカセとツッキーには、室内の整理整頓とお掃除をお願いするよ。できそうかな?」
最後のセリフは、ツッキーに向けてのものだ。
なにぶん昨日が昨日だ。無理はさせたくない。
「だ……! だいじょうぶ……です! や、やり……ます!」
「よし! じゃあコテージに戻って朝ごはんを食べるとしようよ! それから会議するぞー!」
「……ね。あのお姉さんに感謝だなー」
合宿三日目。
さすがに二泊目の朝ともなると少しばかり余裕が出てきて、ようやく僕らは早起きして山中湖の朝焼けをこの目にすることができた。時刻は朝の、四時五五分である。気温はかなり寒い。
「真っ赤な富士山ってさ……またちょっと雰囲気が変わるわよね? って、寝てるし……!」
「ぐぅ……はっ!? そ、そうだねサトチン、そのファッションもまたステ――ごふっ!!」
「ねーねー? かえでちゃん! 今日は何で対決しよっかー?」
「や、やですよぅ……。あ! そうだ! じゃあ、お料理教えてくださいっ!」
「これが『赤富士』……葛飾北斎が見た富士山なんですね。寒くないですか、ツッキー?」
「あ……あれ、ですよね? 『富嶽三十六景』の中の『凱風快晴』。ふぇ!? ありがと……」
……なんか、最後の二人だけえらく高尚な話してるし。
にしても、ツッキーも負けずに物知りだ。博学で知られるハカセ相手でもちっとも見劣りしないなんて。ま、恋愛は不得意だけど。
「……ぶぅー。すぐそうやって、他の女の人のことばっかり話すんだから、ケンタ君は」
「ち、違うよ!? 別に僕、年上に興味ないからね? だいたい、それにさ――!」
はいはい。僕も負けずに恋愛初心者で超不得意ですよ、っと。女心って奴はあいかわらずちっともわからないし、今も危うく僕と純美子だけのヒミツを口走りそうになっちゃったし。
っていうか……。
こんなに距離が近くて、ヤキモチも妬くんなら、だ、大丈夫、だよ……ね?
この寒さとロマンチックな雰囲気と、真紅に染まった富士山が僕に味方してくれているはずだ。僕はすぐ右隣に並んで立っている純美子の右肩に、そろそろ……と慎重に、だが着実に、凍える右手を伸ばしていった。もうちょっと……あと少しで……いける……はず……!
「ねっ? 今日、三日目のスケジュールは、どうするんですか? 古・ノ・森・部・長・?」
「は、はいっ! えー……えっとぉー……」
絶妙な――いや、最悪のタイミングで、ぴょん! と飛び跳ねるようにして純美子が振り返り、僕は残像すら見えない速度で右手を一気に引き戻す。なぜか背後から一斉に溜息が漏れた。
(……どんくさい奴)
(じれったいよねー)
(あの馬鹿弟子は……)
(ファ、ファイトですぅー……!)
(いいから、それを羽織っていてください。僕は寒くありませんから)
(で、でも……! い、五十嵐君に、も、申し訳なくって……そのう)
……最後の二人は、声を潜める必要ないのでは?
僕を見つめる純美子の、朝焼けがかすむほど眩しいスマイルと、ん? というカワイイ催促の表情に完敗した僕は、漏れ出そうになる溜息を静かに押し殺して代わりにこう言った。
「合宿最後の日の楽しみ方をわくわく考えているメンバーには申し訳ないんだけどさ、今日は昨日の会議の続きをして、文化祭に向けての行動計画を完成させる予定だよ。みんないい?」
えー! という不満げな声が(主にロコから)上がったが、その重要さがわかっているのでそれ以上これといった要望はなかった。元々僕らは遊びに来たわけではないのだから仕方ない。
「ただ、会議だけずっとしていても煮詰まるだけだからね。適度に息抜きもする。泊めていただいたお礼の草むしりと、夕食の買い物と準備、夜のイベントの買い出し、この三つの担当をくじ引きで決めてやろうと思うんだけど。どうかな?」
「草むしりだけ、フツーに労働なんだよなぁ……」
「それはハズレってことで。その方が盛り上がるだろ、シブチン?」
「三組しかないようですが……」
「ああ、ハカセとツッキーには、室内の整理整頓とお掃除をお願いするよ。できそうかな?」
最後のセリフは、ツッキーに向けてのものだ。
なにぶん昨日が昨日だ。無理はさせたくない。
「だ……! だいじょうぶ……です! や、やり……ます!」
「よし! じゃあコテージに戻って朝ごはんを食べるとしようよ! それから会議するぞー!」
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