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第187話 さすがに気づく主人公 at 1995/8/23
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「………………おかしい。どう考えても、おかしい……」
ちょ――ちょっとトイレに……と部室から逃げるように脱出してきた僕は、洗面所の正面の鏡に映る自分の顔をまじまじと見つめながら、そう呟いたのだった。
来週で夏休みも終わりということで、休み前に出された大量の『宿題』を昨日おとといの二日間かけて終わらせることにした僕ら『電算論理研究部』。しかし、その中の部員二人の普段とはまるで違う奇妙な行動に、僕はすっかり参っていた。ちなみに、それは今日も続いている。
おとといは、ロコが落としたシャープペンを拾おうとしたことがきっかけで、『ラッキースケベ』というにはあまりに偶然が重なりすぎな何らかの作為と意図が感じられる事態に陥った。
(………………ケンタ君のー、え・っ・ち・さ・ん)
ただ月曜日の時点では、僕はそこまで状況を警戒してはいなかった。ぶっちゃけ、うひょー! すっげぇ得したなぁー! くらいなもので、実に楽観的だった(享楽的かもしれない)。
だが、昨日の二人――純美子とロコの態度は、明らかに変、だったのだ。
『ねーぇ、ケンタくーん。ここぉ、わからないから教えて欲しいなぁー』
『ん? どこど……ち、ちょっと座る場所近くないかな、スミちゃん?』
『あたしもあたしもー! ここ! あんた、教えるの上手でしょーっ?』
『うお……っ、ロ、ロコまでかよ……! い、いや、いいんだけどもさ』
確かに『電算論理研究部』にあるちゃぶ台は小さい。五十嵐君と水無月さんの二人には文机で我慢してもらっているとしても、残る部員は六名だ。しかしそれでも、かろうじて個々のパーソナルスペースを確保するくらいの余裕はあるはずである。なのに、純美子とロコのせいで。
『あ、あのさ? 二人ともなんでそんなにくっつくの? せ、狭いし、あ、暑いんだけど……』
『あー。確かに暑いかもね。夏だし……ふー……(ぱたぱた)』
『確かに暑いけど、これもいーじゃん。夏だし……はー……(ぴらぴら)』
僕がやんわりとクレームをいれたところで、二人との距離は広がるどころか縮まる一方。その上、僕の顔色の変化をちらちら盗み見ながらボタン一つ余計に外したワイシャツの胸元を引っ張って風を送り込もうとする純美子と、いつもより丈が短い気がする制服のスカートの端をつまみ上げて大胆にもあおぎ出したロコの行動は、明らかに何か裏があるとしか思えなかった。
「なんで急に、二人ともあんなことしはじめたんだ? もしかして、ドッキリかなにかか?」
そうとしか思えない。
だが、僕相手にドッキリを仕掛けたところで、おもしろくもなければなんの得もないだろう。
「はぁ……一体どうなってるんだ。これがずっと続きでもしたら、僕のココロが持たない」
なんというか。
はっきり言って、えっちすぎるのだ。
さては、この僕にもモテ期が! ウェーイ! などというお花畑脳的勘違いなどするはずもなく、ひたすらこうなってしまった原因を探す。かろうじて思い当たる出来事といえば――。
「まさか……この前の、純美子とロコの口論が関係しているのか? にしても……」
あれがあってからの純美子とロコは、前どおりの仲の良さを取り戻していた。それに関しては、僕もとても嬉しいし、なによりホッとした。けれど、それとこれがどうつながるのか……。
「うー。ダメだー! ぜんっぜんわかんないやー!」
がくり、と鏡の中の僕が情けない表情でうなだれた。
そうしてから、のろのろと顔を上げる。
鏡の中の僕よ、一周目の僕よりは、少しはマシになったと思うよな?
いや、思いたい。
やがてはじまる『小山田組』VS『イケメングループ』VS『僕』の戦いに備え、『電算論理研究部』の部員たちにも内緒で、早朝のジョギング5キロ、腕立て三〇回、腹筋三〇回、スクワット五〇回を夏休みに入ってから毎日ずっと続けきたのだ。その成果が徐々に出ていた。
「さすがに、何の努力もしないで勝てるほど人生甘くないからな。やれることはやるだけだ」
ちょ――ちょっとトイレに……と部室から逃げるように脱出してきた僕は、洗面所の正面の鏡に映る自分の顔をまじまじと見つめながら、そう呟いたのだった。
来週で夏休みも終わりということで、休み前に出された大量の『宿題』を昨日おとといの二日間かけて終わらせることにした僕ら『電算論理研究部』。しかし、その中の部員二人の普段とはまるで違う奇妙な行動に、僕はすっかり参っていた。ちなみに、それは今日も続いている。
おとといは、ロコが落としたシャープペンを拾おうとしたことがきっかけで、『ラッキースケベ』というにはあまりに偶然が重なりすぎな何らかの作為と意図が感じられる事態に陥った。
(………………ケンタ君のー、え・っ・ち・さ・ん)
ただ月曜日の時点では、僕はそこまで状況を警戒してはいなかった。ぶっちゃけ、うひょー! すっげぇ得したなぁー! くらいなもので、実に楽観的だった(享楽的かもしれない)。
だが、昨日の二人――純美子とロコの態度は、明らかに変、だったのだ。
『ねーぇ、ケンタくーん。ここぉ、わからないから教えて欲しいなぁー』
『ん? どこど……ち、ちょっと座る場所近くないかな、スミちゃん?』
『あたしもあたしもー! ここ! あんた、教えるの上手でしょーっ?』
『うお……っ、ロ、ロコまでかよ……! い、いや、いいんだけどもさ』
確かに『電算論理研究部』にあるちゃぶ台は小さい。五十嵐君と水無月さんの二人には文机で我慢してもらっているとしても、残る部員は六名だ。しかしそれでも、かろうじて個々のパーソナルスペースを確保するくらいの余裕はあるはずである。なのに、純美子とロコのせいで。
『あ、あのさ? 二人ともなんでそんなにくっつくの? せ、狭いし、あ、暑いんだけど……』
『あー。確かに暑いかもね。夏だし……ふー……(ぱたぱた)』
『確かに暑いけど、これもいーじゃん。夏だし……はー……(ぴらぴら)』
僕がやんわりとクレームをいれたところで、二人との距離は広がるどころか縮まる一方。その上、僕の顔色の変化をちらちら盗み見ながらボタン一つ余計に外したワイシャツの胸元を引っ張って風を送り込もうとする純美子と、いつもより丈が短い気がする制服のスカートの端をつまみ上げて大胆にもあおぎ出したロコの行動は、明らかに何か裏があるとしか思えなかった。
「なんで急に、二人ともあんなことしはじめたんだ? もしかして、ドッキリかなにかか?」
そうとしか思えない。
だが、僕相手にドッキリを仕掛けたところで、おもしろくもなければなんの得もないだろう。
「はぁ……一体どうなってるんだ。これがずっと続きでもしたら、僕のココロが持たない」
なんというか。
はっきり言って、えっちすぎるのだ。
さては、この僕にもモテ期が! ウェーイ! などというお花畑脳的勘違いなどするはずもなく、ひたすらこうなってしまった原因を探す。かろうじて思い当たる出来事といえば――。
「まさか……この前の、純美子とロコの口論が関係しているのか? にしても……」
あれがあってからの純美子とロコは、前どおりの仲の良さを取り戻していた。それに関しては、僕もとても嬉しいし、なによりホッとした。けれど、それとこれがどうつながるのか……。
「うー。ダメだー! ぜんっぜんわかんないやー!」
がくり、と鏡の中の僕が情けない表情でうなだれた。
そうしてから、のろのろと顔を上げる。
鏡の中の僕よ、一周目の僕よりは、少しはマシになったと思うよな?
いや、思いたい。
やがてはじまる『小山田組』VS『イケメングループ』VS『僕』の戦いに備え、『電算論理研究部』の部員たちにも内緒で、早朝のジョギング5キロ、腕立て三〇回、腹筋三〇回、スクワット五〇回を夏休みに入ってから毎日ずっと続けきたのだ。その成果が徐々に出ていた。
「さすがに、何の努力もしないで勝てるほど人生甘くないからな。やれることはやるだけだ」
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