188 / 539
第187話 さすがに気づく主人公 at 1995/8/23
しおりを挟む
「………………おかしい。どう考えても、おかしい……」
ちょ――ちょっとトイレに……と部室から逃げるように脱出してきた僕は、洗面所の正面の鏡に映る自分の顔をまじまじと見つめながら、そう呟いたのだった。
来週で夏休みも終わりということで、休み前に出された大量の『宿題』を昨日おとといの二日間かけて終わらせることにした僕ら『電算論理研究部』。しかし、その中の部員二人の普段とはまるで違う奇妙な行動に、僕はすっかり参っていた。ちなみに、それは今日も続いている。
おとといは、ロコが落としたシャープペンを拾おうとしたことがきっかけで、『ラッキースケベ』というにはあまりに偶然が重なりすぎな何らかの作為と意図が感じられる事態に陥った。
(………………ケンタ君のー、え・っ・ち・さ・ん)
ただ月曜日の時点では、僕はそこまで状況を警戒してはいなかった。ぶっちゃけ、うひょー! すっげぇ得したなぁー! くらいなもので、実に楽観的だった(享楽的かもしれない)。
だが、昨日の二人――純美子とロコの態度は、明らかに変、だったのだ。
『ねーぇ、ケンタくーん。ここぉ、わからないから教えて欲しいなぁー』
『ん? どこど……ち、ちょっと座る場所近くないかな、スミちゃん?』
『あたしもあたしもー! ここ! あんた、教えるの上手でしょーっ?』
『うお……っ、ロ、ロコまでかよ……! い、いや、いいんだけどもさ』
確かに『電算論理研究部』にあるちゃぶ台は小さい。五十嵐君と水無月さんの二人には文机で我慢してもらっているとしても、残る部員は六名だ。しかしそれでも、かろうじて個々のパーソナルスペースを確保するくらいの余裕はあるはずである。なのに、純美子とロコのせいで。
『あ、あのさ? 二人ともなんでそんなにくっつくの? せ、狭いし、あ、暑いんだけど……』
『あー。確かに暑いかもね。夏だし……ふー……(ぱたぱた)』
『確かに暑いけど、これもいーじゃん。夏だし……はー……(ぴらぴら)』
僕がやんわりとクレームをいれたところで、二人との距離は広がるどころか縮まる一方。その上、僕の顔色の変化をちらちら盗み見ながらボタン一つ余計に外したワイシャツの胸元を引っ張って風を送り込もうとする純美子と、いつもより丈が短い気がする制服のスカートの端をつまみ上げて大胆にもあおぎ出したロコの行動は、明らかに何か裏があるとしか思えなかった。
「なんで急に、二人ともあんなことしはじめたんだ? もしかして、ドッキリかなにかか?」
そうとしか思えない。
だが、僕相手にドッキリを仕掛けたところで、おもしろくもなければなんの得もないだろう。
「はぁ……一体どうなってるんだ。これがずっと続きでもしたら、僕のココロが持たない」
なんというか。
はっきり言って、えっちすぎるのだ。
さては、この僕にもモテ期が! ウェーイ! などというお花畑脳的勘違いなどするはずもなく、ひたすらこうなってしまった原因を探す。かろうじて思い当たる出来事といえば――。
「まさか……この前の、純美子とロコの口論が関係しているのか? にしても……」
あれがあってからの純美子とロコは、前どおりの仲の良さを取り戻していた。それに関しては、僕もとても嬉しいし、なによりホッとした。けれど、それとこれがどうつながるのか……。
「うー。ダメだー! ぜんっぜんわかんないやー!」
がくり、と鏡の中の僕が情けない表情でうなだれた。
そうしてから、のろのろと顔を上げる。
鏡の中の僕よ、一周目の僕よりは、少しはマシになったと思うよな?
いや、思いたい。
やがてはじまる『小山田組』VS『イケメングループ』VS『僕』の戦いに備え、『電算論理研究部』の部員たちにも内緒で、早朝のジョギング5キロ、腕立て三〇回、腹筋三〇回、スクワット五〇回を夏休みに入ってから毎日ずっと続けきたのだ。その成果が徐々に出ていた。
「さすがに、何の努力もしないで勝てるほど人生甘くないからな。やれることはやるだけだ」
ちょ――ちょっとトイレに……と部室から逃げるように脱出してきた僕は、洗面所の正面の鏡に映る自分の顔をまじまじと見つめながら、そう呟いたのだった。
来週で夏休みも終わりということで、休み前に出された大量の『宿題』を昨日おとといの二日間かけて終わらせることにした僕ら『電算論理研究部』。しかし、その中の部員二人の普段とはまるで違う奇妙な行動に、僕はすっかり参っていた。ちなみに、それは今日も続いている。
おとといは、ロコが落としたシャープペンを拾おうとしたことがきっかけで、『ラッキースケベ』というにはあまりに偶然が重なりすぎな何らかの作為と意図が感じられる事態に陥った。
(………………ケンタ君のー、え・っ・ち・さ・ん)
ただ月曜日の時点では、僕はそこまで状況を警戒してはいなかった。ぶっちゃけ、うひょー! すっげぇ得したなぁー! くらいなもので、実に楽観的だった(享楽的かもしれない)。
だが、昨日の二人――純美子とロコの態度は、明らかに変、だったのだ。
『ねーぇ、ケンタくーん。ここぉ、わからないから教えて欲しいなぁー』
『ん? どこど……ち、ちょっと座る場所近くないかな、スミちゃん?』
『あたしもあたしもー! ここ! あんた、教えるの上手でしょーっ?』
『うお……っ、ロ、ロコまでかよ……! い、いや、いいんだけどもさ』
確かに『電算論理研究部』にあるちゃぶ台は小さい。五十嵐君と水無月さんの二人には文机で我慢してもらっているとしても、残る部員は六名だ。しかしそれでも、かろうじて個々のパーソナルスペースを確保するくらいの余裕はあるはずである。なのに、純美子とロコのせいで。
『あ、あのさ? 二人ともなんでそんなにくっつくの? せ、狭いし、あ、暑いんだけど……』
『あー。確かに暑いかもね。夏だし……ふー……(ぱたぱた)』
『確かに暑いけど、これもいーじゃん。夏だし……はー……(ぴらぴら)』
僕がやんわりとクレームをいれたところで、二人との距離は広がるどころか縮まる一方。その上、僕の顔色の変化をちらちら盗み見ながらボタン一つ余計に外したワイシャツの胸元を引っ張って風を送り込もうとする純美子と、いつもより丈が短い気がする制服のスカートの端をつまみ上げて大胆にもあおぎ出したロコの行動は、明らかに何か裏があるとしか思えなかった。
「なんで急に、二人ともあんなことしはじめたんだ? もしかして、ドッキリかなにかか?」
そうとしか思えない。
だが、僕相手にドッキリを仕掛けたところで、おもしろくもなければなんの得もないだろう。
「はぁ……一体どうなってるんだ。これがずっと続きでもしたら、僕のココロが持たない」
なんというか。
はっきり言って、えっちすぎるのだ。
さては、この僕にもモテ期が! ウェーイ! などというお花畑脳的勘違いなどするはずもなく、ひたすらこうなってしまった原因を探す。かろうじて思い当たる出来事といえば――。
「まさか……この前の、純美子とロコの口論が関係しているのか? にしても……」
あれがあってからの純美子とロコは、前どおりの仲の良さを取り戻していた。それに関しては、僕もとても嬉しいし、なによりホッとした。けれど、それとこれがどうつながるのか……。
「うー。ダメだー! ぜんっぜんわかんないやー!」
がくり、と鏡の中の僕が情けない表情でうなだれた。
そうしてから、のろのろと顔を上げる。
鏡の中の僕よ、一周目の僕よりは、少しはマシになったと思うよな?
いや、思いたい。
やがてはじまる『小山田組』VS『イケメングループ』VS『僕』の戦いに備え、『電算論理研究部』の部員たちにも内緒で、早朝のジョギング5キロ、腕立て三〇回、腹筋三〇回、スクワット五〇回を夏休みに入ってから毎日ずっと続けきたのだ。その成果が徐々に出ていた。
「さすがに、何の努力もしないで勝てるほど人生甘くないからな。やれることはやるだけだ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
ライト文芸
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる