ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
214 / 539

第213話 最後の仕上げ at 1995/9/14

しおりを挟む
 きーんこーんかーんこーん――。


「よし、終わった! 電算論理研究部、急いで行くぞ!」


 はい、ここまでね――ほんわか笑顔で告げた九組の担任で数学担当の笹原センセイは、まるで早く終わらないかと待ちかねていたかのような僕のセリフに、ひくり、と頬をひきつらせた。さすがに温厚で包容力もハンパないと人気の高い笹センでもいらだちを隠せないようだ。


「遅れんなよ、シブチン! 後ろは来てるか?」


 しかし、こっちは気遣いをする余裕なんてない。すれ違うセンセイや生徒がぎょっとした顔をして廊下を走り抜ける僕たちに非難めいた視線を向けるが、今日ばかりはご容赦願うとしよう。


「来てる……んじゃないの!? つーか、僕だって後ろ振り向く余裕ないって!」

「五十嵐、合流しました。ただいま後方5メートルにおります」

「さ、佐倉もその隣にいますからぁ! いますからね!?」


 いたって冷静に合流報告した五十嵐君が教えてくれたらよかったのだろうに、スルーされた佐倉君は大慌てで自分の存在をアピールする。それから恐る恐るこう付け足した。


「で、でも、廊下走ってたら怒られないですかね? しかも行き先は職員室の隣ですよぅ!?」

「明日の『西中まつり』の準備だとか予行演習だとか言っておけばいいって! もしも誰かに咎められたら、事情説明のためにひとりだけ――じゃなかった、置いて先に進むからな!」

「うひぃ!? トカゲの尻尾役は嫌だぁー!」


 がちゃり――。

 よほど僕らの表情に切羽詰まったものが現れていたのか、文化祭前日には毎年誰かしら似たようなことをするからなのか、運良く誰にも止められることなく部室へ辿り着くことができた。


「よし! 残り十三分しかないから、昨日の打ち合わせ通りに壁板だけは全部運んじゃおうか」

「うへぇ……一人一枚持ったって何回か往復しないとだね。かといって、壊したら意味ないし」

「古ノ森リーダーに渋田サブリーダー。昨日、技術工作部より台車をお借りしておきました!」

「ナイスだ、ハカセ! じゃあ、僕たちはこのまま運んでいくから、佐倉君とそっち頼むよ!」

「り、了解しました! できるだけこっちで運べるように工夫してみますぅ!」


 言うが早いか、僕は渋田をともなって、視聴覚室のある一階廊下の反対側目指して早足で歩きはじめた。カラダの横で大きな段ボール製の壁板を抱え込み、もう一方の手を裏面に斜めに走っている筋交いにそえて、不安定な体勢のままの斜め歩きで、だ。


「くっ……! 思ったより……キツいなこれ……」


 カギを預かっているのは僕だから、最初に到着しなければ誰も視聴覚室には入れない。だが、顔をあげて残りの距離を見てしまうとココロが折れそうだ。床を見つめて黙々と足を進める。

 と――不意に隣に。


「ははは。思ったよりしんどいですねぇ! ちょっと見かけて手伝ったのは失敗でしたねぇ!」

「お、荻島センセイ……!」


 いつも真っ白な白衣が汚れるのもいとわずに壁板を両脇に一枚ずつ抱え、にこにこと笑顔を浮かべているた荻島センセイが、いつの間にか僕の隣にいたのだ。く、と熱いものがこみ上げた。


「あの……ありがとうございます!」

「ははは。ウチのクラスの男子が職員室の前を何度も走っていたら、怒られるの私ですからね」


 そこで荻島センセイは大袈裟に震える真似をして見せた。
 僕はその背中を無我夢中で追いかけていく。


(まったく……その自分だって誰より騒がしく走ってるくせに……。ホント、良いセンセイだ)


「さて、どうです? 人気を集める出し物ができそうですか? 古ノ森君?」

「わかりません。……けど、僕らは――少なくとも部員の僕たちは、最高だって信じてます!」

「ははは。それは頼もしい! 私もぜひ見物させてもらいますよ! ははは」


 そうして僕らは休み時間が来るたびに視聴覚室へと物資を搬入していき、放課後五十嵐君の指示の下、すっかり夜になるまで設営を行った。

 すべてが終わったのは九時を回った頃だった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...