ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
215 / 539

第214話 『西中まつり』(1) at 1995/9/15

しおりを挟む
 どん、どどん――。

 校舎裏の土手から打ち上げられた、学校行事恒例の音ばかりの三段花火の轟音が、立ち並ぶ団地の隅から隅へと鳴り響き渡った。この瞬間から、僕らの『西中まつり』ははじまるのだ。


「……よし。最終チェックも完了です、古ノ森リーダー」


 ふう、と額に浮いた汗を拭ったのは五十嵐君だ。最後の最後まで、納得がいかない、と言い張って、壁板や配線の調整を行い、朝一番から何度もチェックとテストを繰り返していたのだ。


「ありがとう、ハカセ。けど、ハカセの緻密な計算のおかげで、組み立てはスムーズだったね」

「当然です」


 くい、と丸眼鏡の位置を直し、それから珍しく五十嵐君ははにかんだような笑顔を浮かべる。


「……と言いたいところですが、ここまでうまく行くとは、僕自身、思っていませんでしたよ」

「な、なんか、パズルみたいでしたよね! 最初っからつなぎ目ができてて、ハメるだけって」


 佐倉君が言ったとおり、五十嵐君設計の段ボール製の壁板には、差し込み用の棒部分と受け用の穴部分が設けられており、裏面には配置順に番号が振ってあった。なので僕たちは、例の青図面と照らし合わせて書かれているとおりの順番にそれらをはめ込んで並べていくだけで済んだのだ。

 僕らの生命線でもある2台の『98キューハチ』はもとより、技術工作部から借りたスピーカーやそれらをつなぐ配線もそうだ。すべてが、五十嵐君がひとりで書いた図面と、五十嵐君がひとりで作り上げたミニチュアとまったく同じようにできていた。さすがは僕ら『電算論理研究部』のハカセだ。


「あとは……。ええと、そろそろ戻って来る頃じゃないかな?」


 と、僕が後ろを振り返ったちょうどそのタイミングだった。


「うーい。おまたせー。コイツのメイクやら着付けやらに、やたら手間取っちゃってねー」

「僕、けがされちゃったよぅ……ぐすぐす……」


 案の定、初メイクに初コスプレの渋田は、今の自分の姿がよほど嫌なのか、意味不明な泣き言をぐちぐちこぼしていたが、キャスト役の二人の姿に一同改めて感嘆の溜息を漏らした。


「す、凄いですねっ! なんか、ホントに未来から来た人! ってカンジじゃないですかー!」


 お手伝いした衣装の完成品はすでに目にしていても、実際に誰かが着ている姿をはじめて見た佐倉君の目がキラキラしている。もちろん、僕を含めた他の部員たちもそうだ。光沢のあるパールホワイトをベースに、ライトイエローとライトグリーンのラインが幾何学模様を描くぴったりとしたシルエット。メイクを施した目元には、クリアオレンジの大きなゴーグルを装着していて、かなりクールだ。


「元々あたしが持っていた知識に、さらにせりさんに教わったテクニックが加わったからねー」

「確かに、サトチンの腕はさすがだし、カッコいいしかわいいよ? でもさ、なんで僕が……」


 まだブツブツ呟く渋田の姿は――うーん……なんかいつもよりコミカルさが強調されて、デフォルメされたって感じがする。上半身はムキムキで、でもずんぐりむっくりしてるような。


「えー? カッコいいと思うんだけどねー。いかにもSF映画に出てきそうな異星人じゃんか」

「そ――そう? カッコいい? な、ならいいんだけどさー!」


 あいかわらず手のひらの上で転がされてるなぁ。異星人というより、どっちかというとドワーフっぽいんだが。でも、頬にオイル汚れらしき物まであって、優秀なメカニックってカンジでいいと思うぞ。

 そこで、遅れて登場したのは――。


「ホント、ホント! 渋田君、カッコいいと思う! サトちゃんもすっごくかわいいー!」

「あ! スミちゃん! 良かった、間に合わないかと……」

「とりあえず、女テニの方の準備だけは手伝わないといけなかったから……ゴメン、ケンタ君」


 そうこたえながら深呼吸をひとつして弾む息を整えると、純美子はハミングをするように静かに長く声を出した。音階を変え、テンポを変え、徐々に声に張りと大きさを与えていく。

 それから、うん、と大きくうなずいてみせた。


「ケンタ君が選んでくれたあたしの声――誰にも負けないこの武器で、物語を完成させてみせるよ!」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...