ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第220話 『西中まつり』(7) at 1995/9/15

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 きーんこーんかーんこーん――。


 学校の廊下や教室のすみずみにまでお昼を告げるチャイムが鳴り響いたが、『西中まつり』を訪れるお客さんたちにはあまり関係ないようだった。間隙を縫って水無月さんが担当している受付のところまで駆け寄って覗いてみたが――まだ参加を待つ人たちの長い列があった。


「あ……ぶ、部長……! みんな……だ、大丈夫……ですか? す、少し休憩した方が……」

「なんだけど――」


 僕はもう一度連れ人と話しながら待ってくれている人たちの方を見てからこたえる。


「あんなにおとなしく長い時間待ってくれてるのに、休憩しまーす、だなんて言えないって」

「で、ですね……」

「……ん? なんだかきょろきょろして落ち着かないね……? なんかあったの、ツッキー?」

「――!? な……なにも、特には……」


 いや、どうやら一人きりで受付をしていた間に、水無月さんの身に何か起こったようだ。やけに周囲の目を気にするようなそぶりで、それも不特定多数ではなく、特定の誰かに見聞きされるのを恐れるかのように、伏しがちな目が『誰か』の影を探していた。一体誰が――何を?

 僕はよほど難しい顔付きをしていたのだろう。
 それを見た水無月さんがはにかんだように笑い返す。


「な、何も……ないですよ。い、いつもと同じ、いつもどおりのこと……ってだけですから」

「なら、いいんだけど」


 ――考えすぎかもしれない。
 もし何か困ったことがあれば、水無月さんは仲間である僕らに相談するはずだ。


「もうじき、舞台の終わったロコが応援に来てくれるはずなんだけど……。まだ、来てない?」

「み、見てませんね」


『西中まつり』では、すべての出し物の参加者に対してアンケート用紙を配っている。その趣旨としては、ずばり満足度調査だ。もちろん、昇降口に置かれたアンケート回収箱の中身を見ることはできないものの、用紙を受け取った参加者たちは、みな満足げで楽しそうにみえた。


 ただ、ひとつだけどうにもならなかった問題点は、僕らの出し物は一組あたりにかかる時間がやたらと長い、ということだった。

 これに関しては、なんの言い訳も弁解もできない。これを理由に、一度並んだ列から離れていってしまったお客さんたちもいた。確かにどんなにおもしろかろうが、ここ以外にも行きたい場所がたくさんあるはずで、ここだけに時間を費やすのは非効率以外のなにものでもない。


(オリジナルのイメージ・ソングが流れて、声優のたまごの生ナレーション付きで、専任のガイドまで二人つけて。その上、謎もしかけも一組用にしか作られてないんだもんな……)


 小山田が出した一つ目の対決の勝利条件は、より数多くの参加者を集めた方、だったはずだ。


(そもそも僕らのは勝つための出し物じゃない。僕らと、来てくれた人たちを喜ばせるためだ)


『僕ららしく』――それが夏合宿で、部員のみんなに伝えたテーマだ。


(だから、僕らにとっては、これがベストだ。ベストなんだ。……でも)


 残りの勝負はどちらも勝たなければならない。
 なにがなんでも。


(そうじゃないと――)


 静かな決意を胸に、顔を上げたその先に、息を切らして走ってくるポニーテール姿があった。


「おっまたせー、助っ人只今参上! 凄い人気じゃん! ツッキー、疲れてない? 大丈夫?」

「おいおい……。僕だって目の前にいるんだぜ――ロコ? ……ん? なんかお前の目――?」

「ほらほら! こんなとこで油売ってるヒマあんの? とっととお客さんをお迎えしなって!」


 いや、見間違いなんかじゃない。
 ロコの目の周りはついさっきまで泣いていたかのように赤くみえたのだった。


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