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第226話 『西中まつり』(13) at 1995/9/15
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「じゃあ、早速はじめよう」
僕らは誰もいなくなった受付で作戦会議をはじめた。
僕は全員の顔をひとつずつ見つめ、うなずく。
「ここにいる、みんなにそれぞれお願いごとがあるんだ。作戦実行に欠かせない重要なことだ」
こくり、一斉にうなずいたのを確認してから、僕はまずロコを見た。ロコは少し驚いた顔をする。
「え……? あたし? あたしに何かできるの?」
「もちろん。……というか、むしろ僕らじゃわからないことがある。ロコなら知ってるはずだ」
「どんな?」
「他のクラスの中で、中心になってる生徒を教えて欲しい。リーダー的な要素を持った生徒だ。みんなに人気があって、いつも話題の中心人物になっている子で、できれば女の子が良いんだ」
「はぁ!? 変な目的じゃないでしょうね?」
「阿呆か。違うに決まってるだろ。ほら、早く――」
なにしろ時間がない。もうすぐお昼を過ぎようとしているのだ。『西中まつり』の開催は十五時三〇分までである。僕の頭の中にある作戦も、瞬時に効果を発揮するわけではないのだ。
思ったとおりロコは他のクラスの生徒たちにも顔が広いようで、二年生はおろか一年、三年のクラスの主だった『有名人』の名を何人か挙げてみせた。それを水無月さんがメモしている。
「よしよし! ありがとう、ロコ、ツッキー。次は……シブチンとサトチンだ。頼めるかな?」
「いや、あたしたちはいーんだけどさ……。ガイド役はどうすんのよ?」
「そ、そうだよ! 二人ともいなくなったら、お客さんが来た時に困るじゃんか」
「どうせ、しばらくは誰も来ないから問題ない」
もし来てしまったら、最悪僕がガイドを兼任すればいい。
なにしろシナリオライターだからな。
「二人にやって欲しいのは、リストに書かれた人たちをうまく言いくるめて連れてくることだ」
「……なんのためにか聞いてもいい?」
「もちろん、僕らの出し物を体験してもらうためだよ」
「……それだけ?」
「そう。それだけ」
拍子抜けした渋田と咲都子はお互いの顔を見合わせ首をひねる。
そこに僕は一言付け加えた。
「ただし、だ。……サイコーに楽しんで帰ってもらう必要がある。誰かに薦めたくなるくらい」
「そっか、クチコミをバズらせてもらうんだ! 『インフルエンサー』になってもらうのね!」
「ロ、ロコちゃん? なんで『インフルエンザ』のハナシになってるの?」
「あ………………じ、じゃなくってね――」
「スミちゃん、語源はほとんど同じ言葉だよ。ロコが言いたかったのは『他人に大きな影響力を与える人』ってことなのさ……だろ? その人が良いといえば、それだけで信用性が高まる」
僕は言葉に詰まったロコを横目に、よりわかりやすい言葉を使って説明した。
次は佐倉君だ。
「佐倉君は、お姉さんたちを呼んできてくれないか? 僕らの宣伝をしてもらってありがたいんだけど、少しやり方を変える必要が出てきた。あと……これは凄く頼みにくいんだけど――」
「だ、大丈夫です! な、なんでもやる覚悟があります! なんたって、僕、男ですからっ!」
「えっと……うん、ありがとう、助かるよ。次は……ハカセ?」
「頃合いだと思いました。察するに、人数が手薄になった分のサポートが可能か、ですよね?」
さすが五十嵐君だ。作戦はわからなくても、与えられる役割はすでに予測済みらしい。さらに用意周到なことに視聴覚室のドアを開けたところには、例のミニチュア模型が置かれていた。慎重な手つきでそれを引き寄せる五十嵐君。
「今までは、大部分を僕と佐倉君、残りを古ノ森リーダーと河東さん、そして一部を参加者の方ご自身で操作することによって舞台装置を動かしていました。古ノ森リーダーのご要望は?」
「可能な限り、ハカセがひとりで操作できるようにして欲しい。ああ、でも、難しければ――」
「……難しいなどとは、僕は一言も申しあげていませんよ、古ノ森リーダー? 無論可能です」
五十嵐君は、受付の長机の上に手製のミニチュア模型を置いて順を追って説明していく。
「ここの壁を撤去して、ここにある通路開閉用のロープを延長します。同時に、部専用の『98』を設置した机の下に台車を置き、移動可能にしましょう。まだまだ他にもありますが――」
「さすがは僕らのハカセだ! 続きは、直接手伝いながら聞かせてもらうよ。あとは、だ――」
「……えっ? あたしにも、何かできること、あるの? ケンタ君?」
僕らは誰もいなくなった受付で作戦会議をはじめた。
僕は全員の顔をひとつずつ見つめ、うなずく。
「ここにいる、みんなにそれぞれお願いごとがあるんだ。作戦実行に欠かせない重要なことだ」
こくり、一斉にうなずいたのを確認してから、僕はまずロコを見た。ロコは少し驚いた顔をする。
「え……? あたし? あたしに何かできるの?」
「もちろん。……というか、むしろ僕らじゃわからないことがある。ロコなら知ってるはずだ」
「どんな?」
「他のクラスの中で、中心になってる生徒を教えて欲しい。リーダー的な要素を持った生徒だ。みんなに人気があって、いつも話題の中心人物になっている子で、できれば女の子が良いんだ」
「はぁ!? 変な目的じゃないでしょうね?」
「阿呆か。違うに決まってるだろ。ほら、早く――」
なにしろ時間がない。もうすぐお昼を過ぎようとしているのだ。『西中まつり』の開催は十五時三〇分までである。僕の頭の中にある作戦も、瞬時に効果を発揮するわけではないのだ。
思ったとおりロコは他のクラスの生徒たちにも顔が広いようで、二年生はおろか一年、三年のクラスの主だった『有名人』の名を何人か挙げてみせた。それを水無月さんがメモしている。
「よしよし! ありがとう、ロコ、ツッキー。次は……シブチンとサトチンだ。頼めるかな?」
「いや、あたしたちはいーんだけどさ……。ガイド役はどうすんのよ?」
「そ、そうだよ! 二人ともいなくなったら、お客さんが来た時に困るじゃんか」
「どうせ、しばらくは誰も来ないから問題ない」
もし来てしまったら、最悪僕がガイドを兼任すればいい。
なにしろシナリオライターだからな。
「二人にやって欲しいのは、リストに書かれた人たちをうまく言いくるめて連れてくることだ」
「……なんのためにか聞いてもいい?」
「もちろん、僕らの出し物を体験してもらうためだよ」
「……それだけ?」
「そう。それだけ」
拍子抜けした渋田と咲都子はお互いの顔を見合わせ首をひねる。
そこに僕は一言付け加えた。
「ただし、だ。……サイコーに楽しんで帰ってもらう必要がある。誰かに薦めたくなるくらい」
「そっか、クチコミをバズらせてもらうんだ! 『インフルエンサー』になってもらうのね!」
「ロ、ロコちゃん? なんで『インフルエンザ』のハナシになってるの?」
「あ………………じ、じゃなくってね――」
「スミちゃん、語源はほとんど同じ言葉だよ。ロコが言いたかったのは『他人に大きな影響力を与える人』ってことなのさ……だろ? その人が良いといえば、それだけで信用性が高まる」
僕は言葉に詰まったロコを横目に、よりわかりやすい言葉を使って説明した。
次は佐倉君だ。
「佐倉君は、お姉さんたちを呼んできてくれないか? 僕らの宣伝をしてもらってありがたいんだけど、少しやり方を変える必要が出てきた。あと……これは凄く頼みにくいんだけど――」
「だ、大丈夫です! な、なんでもやる覚悟があります! なんたって、僕、男ですからっ!」
「えっと……うん、ありがとう、助かるよ。次は……ハカセ?」
「頃合いだと思いました。察するに、人数が手薄になった分のサポートが可能か、ですよね?」
さすが五十嵐君だ。作戦はわからなくても、与えられる役割はすでに予測済みらしい。さらに用意周到なことに視聴覚室のドアを開けたところには、例のミニチュア模型が置かれていた。慎重な手つきでそれを引き寄せる五十嵐君。
「今までは、大部分を僕と佐倉君、残りを古ノ森リーダーと河東さん、そして一部を参加者の方ご自身で操作することによって舞台装置を動かしていました。古ノ森リーダーのご要望は?」
「可能な限り、ハカセがひとりで操作できるようにして欲しい。ああ、でも、難しければ――」
「……難しいなどとは、僕は一言も申しあげていませんよ、古ノ森リーダー? 無論可能です」
五十嵐君は、受付の長机の上に手製のミニチュア模型を置いて順を追って説明していく。
「ここの壁を撤去して、ここにある通路開閉用のロープを延長します。同時に、部専用の『98』を設置した机の下に台車を置き、移動可能にしましょう。まだまだ他にもありますが――」
「さすがは僕らのハカセだ! 続きは、直接手伝いながら聞かせてもらうよ。あとは、だ――」
「……えっ? あたしにも、何かできること、あるの? ケンタ君?」
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