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第227話 『西中まつり』(14) at 1995/9/15
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それまで校内にゆるやかに流れていた環境音楽風BGMが、ぴたり、と止まった。そして、落ち着いたトーンの上品な女性の声で、全校生徒向けのアナウンスが流れはじめた。
『――まもなく……視聴覚室そばの昇降口付近において……ミラクル☆キュートでボーイッシュ! 新人アイドル、葉桜ふぅの……デビュー直前……スペシャルライブがはじまります――』
澄んだ声が校内の隅々まで沁みわたると、どこからか生徒のいぶかしむような声が聴こえる。
「……えっ? 確か『西中まつり』の時って、放送部も休み……だったよな? 今の何だ?」
「それに、今の声って、放送部の連中の声じゃなかったな……? センセイ……とかかな?」
確かにさっきのは、今まで聞いたことのない、テレビのアナウンサーみたいな声だったのだ。
また別の場所では、少し興奮気味に話す女子生徒たちがいた。
「アイドル、って言ってたよね? それも、デビュー前ライブやるんだって! マジぃ!?」
「つか、ウチの中学校、アイドルとか呼べるほどお金ないんじゃないの? そもそも公立だし」
「行ってみようよ! もしホントだったら、すっごいラッキーじゃない? 視聴覚室、だっけ」
謎のアナウンスは三回繰り返し同じ内容を伝えたあと、環境音楽風BGMに戻ってしまった。だが、来訪客や生徒たちは、少しずつ視聴覚室のある方へと移動を開始しはじめるのだった。
ところかわって――。
男子テニス部の舞台『男だらけのロミオとジュリエット』は女子生徒たちに好評だ。なにしろ部員は二枚目揃いであり、なのに女装したり化粧したりしたあげく、ラブ・シーンまで演じるところがたまらない。
しかし、体育館でやるものと思いきや、普通の教室で行われていた。なんでも、少しでも多くの女の子に楽しんで欲しいからだという。次の公演で本日四回目だ。
「のりぴょん、もう何回目見るつもりよー? さっきもいたじゃーん」
「だってぇ、ロミオ役のムロ君、やっぱカッコよくない? それに、ジュリエット役の……」
「あー。一年の子でしょー? あの子マジで女の子みたいだよね。でも、男同士でとかさー」
「そこがいいんじゃないの!! れいちゃんはわかってない! モテる女はこれだから……!」
まだぶつぶつと愚痴をこぼす『のりぴょん』に、クラスの人気者『れいちゃん』は告げる。
「じゃあ……のりぴょんも実際に彼氏作ればいいんだよ。ほら、『電算論理研究部』のアレ、超オススメ! のりぴょんと相性バッチリな男子が、あっという間に見つかっちゃうんだって」
「えー。フツーの占い、なんでしょ? 当たるとは限んないじゃん」
「いやいや、マジな奴なんだってば! 結果を信じて告った子が、見事に成功したらしいよ?」
「人のハナシより、れいちゃんはどうだったのよ? さっき受けてきた、って言ってたじゃん」
「………………えと、うん(照)」
「よ……よぉおおおしっ! あたしも行ってくるっ!!」
そして、肝心の視聴覚室では――。
「ただいまっ! ハカセ、どこを手伝えばいいんだ!? もうだいぶ並びはじめちゃってる!」
「大部分は終わりましたよ。あとは、河東さんさえ準備できたら、僕ひとりで操作ができます」
「さすが、ハカセだ! スミちゃん、戻ってきてすぐで悪いんだけれど、スタンバイお願い!」
「う、うん!」
そこで純美子は体操着の上に羽織っていた緑のジャージを脱いだ。
が、少し不安そうな面持ちで、差し出した手でジャージを受け取るケンタを見つめて尋ねる。
「でも、ケンタ君……? 放送室に忍び込んで、あんな勝手なアナウンスしちゃって大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫! 誰もさっきの声がスミちゃんだ、なんて気づかないって。それにさ――」
「ん? それに?」
「い、いや! な、なんでもない、なんでもない……」
(さっき放送室で会った三年の部長が、隠れ純美子ファンだった、ってのは黙っておくか……)
おまけに、隣にいた冴えない底辺陰キャの僕が、なんと彼氏でした! なんて知られたら、それこそマズい。嫉妬のあまり、洗いざらい暴露されてしまうかもしれない。急がねば!
「あと……さっきね? なんだかかえでちゃんが、物凄く複雑そうな顔してたんだけど……」
「あー。………………あとで土下座して謝っておかないと」
『――まもなく……視聴覚室そばの昇降口付近において……ミラクル☆キュートでボーイッシュ! 新人アイドル、葉桜ふぅの……デビュー直前……スペシャルライブがはじまります――』
澄んだ声が校内の隅々まで沁みわたると、どこからか生徒のいぶかしむような声が聴こえる。
「……えっ? 確か『西中まつり』の時って、放送部も休み……だったよな? 今の何だ?」
「それに、今の声って、放送部の連中の声じゃなかったな……? センセイ……とかかな?」
確かにさっきのは、今まで聞いたことのない、テレビのアナウンサーみたいな声だったのだ。
また別の場所では、少し興奮気味に話す女子生徒たちがいた。
「アイドル、って言ってたよね? それも、デビュー前ライブやるんだって! マジぃ!?」
「つか、ウチの中学校、アイドルとか呼べるほどお金ないんじゃないの? そもそも公立だし」
「行ってみようよ! もしホントだったら、すっごいラッキーじゃない? 視聴覚室、だっけ」
謎のアナウンスは三回繰り返し同じ内容を伝えたあと、環境音楽風BGMに戻ってしまった。だが、来訪客や生徒たちは、少しずつ視聴覚室のある方へと移動を開始しはじめるのだった。
ところかわって――。
男子テニス部の舞台『男だらけのロミオとジュリエット』は女子生徒たちに好評だ。なにしろ部員は二枚目揃いであり、なのに女装したり化粧したりしたあげく、ラブ・シーンまで演じるところがたまらない。
しかし、体育館でやるものと思いきや、普通の教室で行われていた。なんでも、少しでも多くの女の子に楽しんで欲しいからだという。次の公演で本日四回目だ。
「のりぴょん、もう何回目見るつもりよー? さっきもいたじゃーん」
「だってぇ、ロミオ役のムロ君、やっぱカッコよくない? それに、ジュリエット役の……」
「あー。一年の子でしょー? あの子マジで女の子みたいだよね。でも、男同士でとかさー」
「そこがいいんじゃないの!! れいちゃんはわかってない! モテる女はこれだから……!」
まだぶつぶつと愚痴をこぼす『のりぴょん』に、クラスの人気者『れいちゃん』は告げる。
「じゃあ……のりぴょんも実際に彼氏作ればいいんだよ。ほら、『電算論理研究部』のアレ、超オススメ! のりぴょんと相性バッチリな男子が、あっという間に見つかっちゃうんだって」
「えー。フツーの占い、なんでしょ? 当たるとは限んないじゃん」
「いやいや、マジな奴なんだってば! 結果を信じて告った子が、見事に成功したらしいよ?」
「人のハナシより、れいちゃんはどうだったのよ? さっき受けてきた、って言ってたじゃん」
「………………えと、うん(照)」
「よ……よぉおおおしっ! あたしも行ってくるっ!!」
そして、肝心の視聴覚室では――。
「ただいまっ! ハカセ、どこを手伝えばいいんだ!? もうだいぶ並びはじめちゃってる!」
「大部分は終わりましたよ。あとは、河東さんさえ準備できたら、僕ひとりで操作ができます」
「さすが、ハカセだ! スミちゃん、戻ってきてすぐで悪いんだけれど、スタンバイお願い!」
「う、うん!」
そこで純美子は体操着の上に羽織っていた緑のジャージを脱いだ。
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「でも、ケンタ君……? 放送室に忍び込んで、あんな勝手なアナウンスしちゃって大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫! 誰もさっきの声がスミちゃんだ、なんて気づかないって。それにさ――」
「ん? それに?」
「い、いや! な、なんでもない、なんでもない……」
(さっき放送室で会った三年の部長が、隠れ純美子ファンだった、ってのは黙っておくか……)
おまけに、隣にいた冴えない底辺陰キャの僕が、なんと彼氏でした! なんて知られたら、それこそマズい。嫉妬のあまり、洗いざらい暴露されてしまうかもしれない。急がねば!
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「あー。………………あとで土下座して謝っておかないと」
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