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第229話 『西中まつり』(16) at 1995/9/15
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「……え?」
「おい……え、ってのはなんだよ、ナプキン王子? あぁん?」
いや、さすがに驚くだろ。
まさか僕らの出し物に、ライバルであるはずの小山田が来るなんて思ってもみなかった。
「まーだ、そのあだ名使ってんの、ダッチー? あんま、イケてないよ、それー?」
「うっせ。こいつは『ナプキン王子』でいいんだよ。イケてるイケてないじゃねえんだって」
「……よくはないんだけど」
「そんなことよりさー。……ホントに当たるの、モリケン?」
ははぁん。
そういうことか。
僕の計画で、この学校の主だった情報発信者、つまりロコが言ったところの『インフルエンサー』を渋田・咲都子に連れてきて体験してもらい、ウチの部の出し物のラストに控える相性診断がとても良く当たるということを広めてもらったのだ。そのウワサを、桃月が聞きつけてやってきたということだろう。
「当たるかどうかじゃない。わかるんだよ。えっと、夏休みに入る前、荻センからプリント配られなかった? 血液型とか星座とか、趣味とかまで、すっごく細かいアンケートをさ?」
「あったあった! あれ、マジめんどかったー! ま、選んで〇つけるだけだし、やったけど」
「うんうん、記入問題はなしにしといたからね。ダッチは?」
「おま――ま、いっか……。やったさ。提出しねーと面倒なことになりそうだったから。で?」
「あ……。うん、ただ聞いてみただけだよ。じゃあ、早速ご案内ーっと」
僕は何食わぬ顔で受付の台帳に二人の名前を記入すると、視聴覚室のドアを開けた。僕に促されるまま、小山田と桃月は中へと入った。少し薄暗く、桃月は心細そうに小山田の腕を取る。
「こ、怖いのじゃない……よね?」
「お、おい。しがみつくなって。どうなんだ? あぁ?」
僕はこたえない。
代わりに別の声が響き渡った。
『私の声が聴こえますか……? 私の名前は、アセンブリ・クロージャ。エンディアン王国の王女です。ここは貴方たちの世界よりほんの少し未来にある世界――』
備え付けのスピーカーから純美子の声が聴こえてきた。
意外にも、小山田と桃月は真面目な顔付きでどこからか聞こえる声に聞き入っている。
『――王国に未知なる危機が迫っています。どうか貴方たちのチカラを貸してくれますか? 今から貴方たちのもとに手助けとなる者を送ります。道案内は彼がしてくれるでしょう……!』
「今、王女様からご紹介いただきました道案内が、この私、モーリめにございます」
戸惑う二人に向けて僕はうやうやしい口調でそう告げると、礼儀正しく会釈をする。恰好はいつものワイシャツにスラックス姿としまらないが、この際大目にみてもらうとしよう。
「あなたたちは王国を救うために呼ばれた勇者です。三つの難問に挑み、この国をどうかお救いください。無事成功した者には、偉大なる『機械神』があなたたちの未来を示すでしょう」
正直、僕には演技の才能はない。けれど、相手が誰であろうが、少しでも楽しんでもらえるように、最善を尽くすのが僕なりの礼儀であり流儀だ。深々と会釈してから、ちら、と見る。
「ね、ねえ、ダッチ? 三つの難関、だってさ? 大丈夫?」
「はン、子ども騙しだな。だがよ? 尻尾巻いて逃げ出したとか言われたら癪だ」
「おお、勇者様のおチカラをお貸しいただけるのですね! では、さっそくこちらに――」
僕と小山田と桃月は、入り組んだ迷路の入り口へと進んで行く。すると、目の前に風化してバラバラになってしまった機械の部品らしき物がいくつか四角い箱の中に置かれていた。これは、わら半紙を水に浸して何枚も貼り付けて作った紙粘土のような模型だ。
「さあ、それでは、最初の難関です。お二人で、これを正しい形に組み立ててください。これは、我らの信じる『機械神』、コンピューターを蘇らせるために必要な手順なのです」
小山田はその中のひとつを手に取って観察してみる。軽石のような、かさかさした手触りで妙に軽い。裏返してみると、そこには『FDD』とだけ書いてあった。にやり、と笑って言う。
「……てめぇのハナシはまるでわからねえが、このパズルを解いてみろ、ってわけか。ああ、やってやろうじゃねえか」
「おい……え、ってのはなんだよ、ナプキン王子? あぁん?」
いや、さすがに驚くだろ。
まさか僕らの出し物に、ライバルであるはずの小山田が来るなんて思ってもみなかった。
「まーだ、そのあだ名使ってんの、ダッチー? あんま、イケてないよ、それー?」
「うっせ。こいつは『ナプキン王子』でいいんだよ。イケてるイケてないじゃねえんだって」
「……よくはないんだけど」
「そんなことよりさー。……ホントに当たるの、モリケン?」
ははぁん。
そういうことか。
僕の計画で、この学校の主だった情報発信者、つまりロコが言ったところの『インフルエンサー』を渋田・咲都子に連れてきて体験してもらい、ウチの部の出し物のラストに控える相性診断がとても良く当たるということを広めてもらったのだ。そのウワサを、桃月が聞きつけてやってきたということだろう。
「当たるかどうかじゃない。わかるんだよ。えっと、夏休みに入る前、荻センからプリント配られなかった? 血液型とか星座とか、趣味とかまで、すっごく細かいアンケートをさ?」
「あったあった! あれ、マジめんどかったー! ま、選んで〇つけるだけだし、やったけど」
「うんうん、記入問題はなしにしといたからね。ダッチは?」
「おま――ま、いっか……。やったさ。提出しねーと面倒なことになりそうだったから。で?」
「あ……。うん、ただ聞いてみただけだよ。じゃあ、早速ご案内ーっと」
僕は何食わぬ顔で受付の台帳に二人の名前を記入すると、視聴覚室のドアを開けた。僕に促されるまま、小山田と桃月は中へと入った。少し薄暗く、桃月は心細そうに小山田の腕を取る。
「こ、怖いのじゃない……よね?」
「お、おい。しがみつくなって。どうなんだ? あぁ?」
僕はこたえない。
代わりに別の声が響き渡った。
『私の声が聴こえますか……? 私の名前は、アセンブリ・クロージャ。エンディアン王国の王女です。ここは貴方たちの世界よりほんの少し未来にある世界――』
備え付けのスピーカーから純美子の声が聴こえてきた。
意外にも、小山田と桃月は真面目な顔付きでどこからか聞こえる声に聞き入っている。
『――王国に未知なる危機が迫っています。どうか貴方たちのチカラを貸してくれますか? 今から貴方たちのもとに手助けとなる者を送ります。道案内は彼がしてくれるでしょう……!』
「今、王女様からご紹介いただきました道案内が、この私、モーリめにございます」
戸惑う二人に向けて僕はうやうやしい口調でそう告げると、礼儀正しく会釈をする。恰好はいつものワイシャツにスラックス姿としまらないが、この際大目にみてもらうとしよう。
「あなたたちは王国を救うために呼ばれた勇者です。三つの難問に挑み、この国をどうかお救いください。無事成功した者には、偉大なる『機械神』があなたたちの未来を示すでしょう」
正直、僕には演技の才能はない。けれど、相手が誰であろうが、少しでも楽しんでもらえるように、最善を尽くすのが僕なりの礼儀であり流儀だ。深々と会釈してから、ちら、と見る。
「ね、ねえ、ダッチ? 三つの難関、だってさ? 大丈夫?」
「はン、子ども騙しだな。だがよ? 尻尾巻いて逃げ出したとか言われたら癪だ」
「おお、勇者様のおチカラをお貸しいただけるのですね! では、さっそくこちらに――」
僕と小山田と桃月は、入り組んだ迷路の入り口へと進んで行く。すると、目の前に風化してバラバラになってしまった機械の部品らしき物がいくつか四角い箱の中に置かれていた。これは、わら半紙を水に浸して何枚も貼り付けて作った紙粘土のような模型だ。
「さあ、それでは、最初の難関です。お二人で、これを正しい形に組み立ててください。これは、我らの信じる『機械神』、コンピューターを蘇らせるために必要な手順なのです」
小山田はその中のひとつを手に取って観察してみる。軽石のような、かさかさした手触りで妙に軽い。裏返してみると、そこには『FDD』とだけ書いてあった。にやり、と笑って言う。
「……てめぇのハナシはまるでわからねえが、このパズルを解いてみろ、ってわけか。ああ、やってやろうじゃねえか」
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